英国の週刊誌『エコノミスト』の調査部門EIUによる「クオリティの高い死を迎えられる国」ランキングで、日本が14位に入った。
評価の対象となったのは世界80カ国。医療体制、特に末期症状の苦痛緩和ケアの充実度を評価基準としている。世界各国の120人の緩和ケア専門家からの聞き取り調査をもとに、緩和ケアのための環境が整っているか、プロフェッショナルな人材がそろっているか、経済的に無理なく治療を受けられるか、質の高いケアを受けられるか、社会全体が高い参加意識を持っているか、といった5項目を点数制で評価している。
対象の80カ国は、人口規模やGDPの低い国を除き、世界のあらゆる地域から選ばれ、経済力の面でも富裕国、中間国、貧困国からまんべんなく選出されている。
2010年の調査では40カ国中23位と振るわなかった日本だが、今年は80カ国中14位へと大躍進を遂げた。アジア・パシフィック地域内では、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、シンガポールに次いで5位、アジアでは3位という結果だ。
近年の緩和ケアへの国民の関心の高まりを受け、2012年にがん対策推進計画を打ち出し、小児科医のための緩和ケア教育プログラムを作成するなど、国家予算をつぎ込んでの政府の様々な取り組みが功を奏した形だ。
こうした取り組みには、患者とその家族の痛みや悲しみに対する総合的なケアが含まれ、診断が下された時点から治療の全過程を通して実践される。
こうした政府の積極的な姿勢は、緩和ケアの推進に欠かせないもので、同じアジアの台湾(6位)やシンガポール(12位)、韓国(18位)も、国民健康保険制度の充実を図るなどの政策で上位にランクインしまた、社会全体の参加意識の高さの部門で、日本は台湾と同率の5位という高い順位にランクインしてい る。
地域のコミュニティやボランティア、患者家族などが緩和ケアに積極的に力を貸す体制が整っていることを示す結果だ。
中国は71位、ホスピスの概念が普及していない
総合71位という結果だったのが中国。この国の緩和ケア事情の遅れを物語る順位だ。ホスピスは上海や北京などの都市部に集中し、利用できる患者は全体のわずか1%に満たない。
高齢化や心臓疾患の増加などを背景に、政府は急増する緩和ケア需要への対応を急いでいるが、改善は遅々として進んでいないのが現状だ。
最大の要因は教育の不足にあり、患者側も医療者側も、病気そのものの治療のみに専念し、患者やその家族の苦痛や悲嘆に対するケアは置き去りにされたままだった。ホスピスの概念についてもあまり普及していない。中国の緩和ケアに最も必要なのは技術面よりも、社会全体の意識改善や医療関係者への啓蒙活動などメンタル面での改革と言えるだろう。
ランキング上位10ヵ国は以下の通りである。
1位 イギリス
2位 オーストラリア
3位 ニュージーランド
4位 アイルランド
5位 ベルギー
6位 台湾
7位 ドイツ
8位 オランダ
9位 アメリカ
10位 フランス
(ZUU online 編集部)
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