シニア
(写真=PIXTA)

近年、サービス付き高齢者向け住宅が注目を集めている。一般社団法人すまいづくりまちづくりセンター連合会の公表資料によれば、2015年9月末時点の登録状況は棟数が5734棟と前年同月比16%増となっており、増加の一途を辿っている。少子高齢化を背景に高齢者向け住宅の賃貸経営が注目を浴びていることが増加の理由に挙げられるだろう。では、投資家としては市場が拡大しつつある高齢者向け住宅のどのような点に着目すべきであろうか。その判断の指針を高齢者向け住宅賃貸経営のメリットとデメリットに見ていきたい。

サービス付き高齢者向け住宅とは

一口に高齢者住宅と言ってもさまざまなものがあるが、ここではサービス付き高齢者向け住宅に絞って話をしよう。サービス付き高齢者向け住宅とは、2011年4月の高齢者住まい法の改正により、高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者専用賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅などが廃止され一本化した高齢者向け住宅のことである。

メリット①郊外でも事業が可能

高齢者向け住宅の最大の特徴は、賃貸物件であるにもかかわらず、場所が悪くても賃貸事業が成立する点だ。家族が見舞いに来るためバス停が近くにあることは望ましいが、必ずしも駅に近いという立地までは求めない。市区町村によっては、通常建物が建てられない市街化調整区域においても建築が可能な場合もある。また戸建住宅しか建築できない第一種低層住居専用地域にも建築は可能。サービス付き高齢者向け住宅が賃貸事業として成立するエリアは、すそ野が非常に広いことが特徴だ。そのため郊外の土地を持っており、その資産活用に困っている不動産オーナーでも取り組める事業であることがメリットと言える。

メリット②建築費補助で初期コスト減

建築費の10%が補助金としてもらえることも事業への決断を後押ししている要因だろう。サービス付き高齢者向け住宅は、各居住部分の面積が原則25平方メートル以上で、居住部分に台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備え、バリアフリー構造であることが求められる。共用部分に共同利用の台所や収納設備、浴室を備えれるなど一定条件を満たす場合には、各居住部分の面積は18平方メートルとなる。共用部分に台所などを作るタイプであれば各戸への給排水設備を減らせるため、一般住宅よりも建築費を圧縮できる。さらに10%の補助金も出るので、賃貸マンションを建設するより初期コストを抑えられる。加えて国や地方公共団体から整備事業の補助を受けると固定資産税や不動産取得税の優遇措置も得られる。