「お金や財産をもらうと贈与税がかかる」という話を聞いたことがあるかもしれません。では、お正月に帰省した孫に祖父母がお年玉をあげた場合、贈与税はかかるのでしょうか。

この記事では「お年玉」を例に贈与とは何なのか、贈与税はどんなときにいくらくらいかかるのかを解説します。

■お年玉に税金がかかるって本当?
結論からいうと、お年玉には基本的に税金はかかりません。

誰かから財産を贈与されたときにかかる税金を「贈与税」といいますが、贈与税の課税には一定の判断基準があり、一般的にお年玉は課税される条件を満たしません。

ただ、あまりに金額が大きい場合は課税される可能性もあります。以下で詳しく見ていきましょう。

■贈与税とは
そもそも贈与とは、自分の財産を誰かに贈ることです。贈る側が「あげる」と意思表示して、受け取る側が合意すれば成立します。

贈与税は誰かから財産を贈与されたときにかかり、財産を「あげた側」ではなく「もらった側」が払う税金です。勘違いしやすいポイントなので、注意しましょう。

●贈与税がかからないケース
贈与税は、贈与を受けた財産すべてに対して課税されるのが原則です。ただし例外として、以下のように贈与税がかからないケースもいくつか認められています。

・個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの

(出典:国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」外部サイトへ移動します)

お年玉は「年末年始の贈答」に含まれると考えられるため、「社会通念上相当」、つまり一般的な常識の範囲内であれば贈与税はかからないとされています。

ただし、どこまでが「社会通念上相当」として認められるのか、明確な基準はありません。その家庭の経済状況などを含めて、個別に判断されることになります。少々あいまいなので、不安なときは税務署に問い合わせて確認しましょう。

その他、以下のようなケースも贈与税がかかりません。

・夫婦や親子、兄弟姉妹などから「生活費」や「教育費」に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
・父母や祖父母から「住宅取得資金」の贈与を受け、一定の条件を満たすとき(最大1,000万円まで)
・父母や祖父母から「教育資金」として一括贈与を受け、一定の条件を満たすとき(最大1,500万円まで)
・夫婦間で居住用の不動産を贈与し、一定の条件を満たすとき(最大2,000万円まで) (出典:国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」外部サイトへ移動します)

お年玉以外でも常識的な金額の「子どもへのお小遣い」であれば、課税される可能性は低いでしょう。

●贈与税がかかるケース
上述のとおり、通常のお年玉であれば贈与税はかからずに済むでしょう。では、贈与税がかかるのはどんなときでしょうか。

  • 年間110万円超は要注意
    贈与税は、1人の人が1年間(1月1日~12月31日)にもらった財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた残りの額に対して課税されます。

贈与を受けても年間110万円以下なら、基本的に贈与税はかかりません。注意が必要なのは「年間110万円を超えたとき」と覚えておきましょう。

なお、「祖父から100万円、祖母から100万円」を贈与された場合、贈与合計額は200万円になるため贈与税の対象になります。

また、「毎年100万円ずつ今後10年間渡し続ける」といった約束になっている場合などは「定期金に関する権利の贈与」とみなされ、課税の対象になってしまうことがあるので要注意です。

  • 年齢は関係ない
    贈与税は、年齢にかかわらず課税される可能性があります。贈与した相手(受け取った側)が生まれたばかりの赤ちゃんでも、支払い義務が発生することもあり得ます。

  • 車や時計なども対象
    贈与税は、お金の受け渡しだけに発生するものではありません。車や高級時計、不動産など価値の高い財産を贈与したときも、対象になる可能性があるので要注意です。

■贈与税はいくら?計算方法と申告方法
贈与税の計算方法には、1年間にもらった合計額をもとに計算する「暦年課税」と、あげた側が亡くなったときに相続税で精算する「相続時精算課税制度」の2種類があります。

例えば10歳の孫が祖父母からお年玉をもらった場合、暦年課税だと年間110万円を超えた分に贈与税がかかります。200万円をもらったときにかかる税金は、(200万円-110万円)×贈与税率10%=9万円です。

贈与税は所得税と同じように累進課税制であり、110万円を差し引いた後の金額が200万円以下なら10%で済みますが、金額次第で最大55%になることもあります。

贈与税が発生したときは、翌年の2月1日から3月15日までに申告して納税する必要があります。期限に遅れたり申告しないまま放置したりすると、ペナルティとして「延滞税」や「無申告加算税」の支払いを求められることになりかねないので注意しましょう。

■お年玉の贈与税が不安なら税務署に確認しよう
お年玉は基本的に贈与の対象外なので、贈与税はかかりません。お正月に一般的な金額を渡すだけなら、特に気にする必要はないでしょう。

ただし、渡す金額や渡し方によっては課税されることもあります。判断が難しい場合や不安な場合は、あらかじめ税務署や税理士に問い合わせて確認しておきましょう。