2020年6月に老後資金2,000万円問題が話題になりましたが、年金だけでなく資産運用の必要性も問われています。その場合、高齢期はリスクを避けて分散投資を行うことが求められます。そこで本記事では、投資信託と米国株・日本株に分散投資して分配金・配当金を毎月受け取れる「シニア向け資産運用法」について紹介します。

老後資金の不足を補う資産運用

(画像=jenny-sturm/stock.adobe.com)

老後資金2,000万円を用意しなければならない問題は、2020年に感染が広がった新型コロナウイルスの影響でますます遠のいてしまった人も多いのではないでしょうか。総務省が公表している2017年の「家計調査年報(家計収支編)」によると夫65歳、妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯のモデルケースで毎月約5万5,000円生活費が不足するといわれています。

節約してさらに生活費を切り詰めることもできますが、ほかの方法も考えなければなりません。老後資金の不足を補うために「年金支給開始年齢の65歳以上になっても仕事を続ける」という選択肢もあります。しかし働き続けると「在職老齢年金制度」により給与月額によっては年金の一部が支給停止になる場合があるため注意が必要です。年金カットおよび停止になる金額の目安は以下のようになっています。

年齢年金カットの基準支給が停止になる金額
65歳未満基本月額と総報酬月額相当額の合計28万円を超える場合28万円を超えた部分の2分の1
65歳以上基本月額と総報酬月額相当額の合計47万円を超える場合47万円を超えた部分の2分の1

年金を減らされないためには、上表のカット基準額以内の収入となるように働く必要があります。また年金収入が公的年金の控除額を超えた部分には5%の税金がかかるため、その点も注意しましょう。65歳未満は108万円以下、65歳以上なら158万円以下は非課税となります。それ以上の金額でも世帯によっては、配偶者控除、扶養控除、医療費控除などにより節税することも可能です。

では、リタイアして仕事を続けない場合はどのように対策したらよいでしょうか。生活費を節約することは限界があるため、考えておきたいのがこれまで蓄えた預貯金を利用した資産運用です。

第2の年金を作るという考え方

資産運用の方法を考える場合、若い年代であれば大きな利益を得るためにある程度のリスクをとることも可能です。しかし年金で生活していく年齢になると運用においては元金をできるだけ減らさないことがポイントになります。そのため短期間で大きな利益を狙うようなリスクの高い投資は控えることが基本です。

優良な投資信託や安定した業績の株式に投資し、分配金や配当金を定期的に得る地道な投資を心掛けましょう。いわば“第2の年金”を作るつもりで運用することが望ましいのです。具体的にいえば複数の投資信託と株式に分散投資し、毎月分配金や配当金が入るような仕組みを作ることです。そうすれば、年金に加えて新たな収入があることで、わずかでも生活の底上げにつながります。

例えば、年率3%の運用利回りを目標にする場合で考えてみましょう。預貯金500万円を投資した場合、500万円×3%=15万円となり1ヵ月あたり1万2,500円(税引前)の副収入を得られることが期待できます。もし投資できる金額が1,000万円となった場合は、1,000万円×3%=30万円となり1ヵ月の副収入は2万5,000円(税引前)です。

ただしNISA(少額投資非課税制度)の非課税範囲年間120万円を超える投資から得た収入には20.315%(復興所得税を含む)の税金が源泉徴収されます。もちろん単純に預貯金を取り崩して生活費の不足を補うことも方法の一つです。しかし元本が減っていく一方となるため、先行きに不安が残ります。分配金・配当収入を得て元本を取り崩さない方法が安心でしょう。

では、どのような商品に投資したらよいのでしょうか。以下で3つの例を紹介します。

投資信託の分配金を年金代わりにする

1つ目は投資信託に投資して、分配金を得る方法です。投資信託の分配金には大きく分けて以下の2つのタイプがあります。

・毎月決算して分配金を支払うタイプのファンド
運用成果を毎月こまめに受け取れることで年金代わりにすることができます。高齢の場合は、リスクをとって運用するには期間が短いため、将来のことよりも毎月の生活費を確保が期待できる毎月分配型から選択することを優先しましょう。

・分配金を支給せずに元本に組み入れて再投資するタイプのファンド
複利運用と呼ばれ利が利を生む仕組みのため、長い目でみると資産増加効果が高くなります。若い年代で老後までの期間が長い場合は複利運用がおすすめです。

米国株は年に4回配当金が出る

2つ目は、米国株への投資です。米国株は、多くの銘柄で年4回配当金が出る「四半期配当」を実施しています。米国企業は「株主に配当で報いる」という方針があり、日本企業が実施している株主優待という制度はほとんどありません。そのため業績が上がれば増配を実施する企業が多く、長期保有することで年々利回りが上昇していくメリットがあります。

米国株(S&P500指数構成銘柄)の中で25年以上連続増配している銘柄は「配当貴族」、50年以上連続で増配している銘柄は「配当王」と呼ばれています。米国株に投資する場合に心配なのが「事業内容を知らない企業が多い」ということでしょう。しかし配当王と呼ばれている銘柄には以下のような誰もが知っているような老舗の大企業が入っています。

  • プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
  • スリーエム
  • コカ・コーラ
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン
    など

また配当貴族と呼ばれる25年以上連続増配している銘柄には、以下のような企業が名を連ねています。

  • ペプシコ
  • ウォルマート
  • マクドナルド
    など

長年増配を続けている企業はビジネスモデルが確立されているため、業績が急落するリスクが小さく安定感があります。ただし米国企業の場合、アマゾン・ドット・コムのような高成長企業でも内部留保を優先して無配政策をとっているケースもあるため、有名企業であっても投資する前に配当の有無を確認することが必要です。

日本株にもある四半期配当銘柄

3つ目は、日本株への投資です。日本株の配当金は年1回か年2回の銘柄が多い傾向ですが、四半期配当を実施している銘柄はあります。2020年9月18日現在で四半期配当を実施している主な銘柄は下表の通りです。

証券コード銘柄年間配当
2170リンクアンドモチベーション7.2円
3593ホギメディカル68円
3844コムチュア31円
4748構造計画研究所100円
7267ホンダ技研工業6844円
7814日本創発グループ10円
8304あおぞら銀行122円
9435光通信42056円
9449GMOインターネット25~27円

※参考:会社四季報2020年9月発売号(配当金は発売時点の今期会社予想)

例えば、あおぞら銀行<8304>は年間122円の配当を予想しており、2020年12月3日の終値株価1,894円ベースで利回りを計算すると約6.44%となります。つまり100株保有で3ヵ月ごとに約3,050円(税引前)の配当金を受け取ることができるため、長期投資向きの銘柄といえるのではないでしょうか。もちろん確実に増配が見込める優良株であれば年2回配当でも問題ありません。

日本株にも連続増配銘柄は多数あるため、長期保有して年々利回りを上げていくのも有効な方法です。ちなみに日本株で長く増配を続けているのは花王<4452>で、31年連続増配を継続中となっています(2020年12月時点)。日用品が主力なため、ビジネスモデルも盤石で当面連続増配が止まるリスクは見当たりません。

紹介した投資信託、米国株、日本株に分散投資して配当金の時期をずらして入金されるように設計すれば、第2の年金といえるポートフォリオの構築が期待できます。老後資金が2,000万円不足する現実に変わりはありませんが、シニア向け資産運用法で毎月の生活を底上げできれば有意義な投資といえるのではないでしょうか。

※当記事で紹介している銘柄は一例であり、当該銘柄への投資を推奨するものではありません。(提供:Incomepress


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