亡くなった方が生前に資産運用を行っていて、株や投資信託を相続するケースがあります。相続をすると相続税が発生する可能性がありますが、この時、株や投資信託の評価額はどう考えればよいのでしょうか。株式や投資信託など資産相続について、相続財産の評価額の計算方法とあわせて解説します。

相続財産によって評価方法が違う

(画像= mapo/stock.adobe.com)

相続税では、財産の種類によって評価額を決める方法が異なります。たとえば預貯金は、相続発生時点の残高(時価)が相続財産としての評価額となります。

土地の場合は時価の約8割の「路線価」、自宅などの建物は時価の約7割の「固定資産税評価額」を基に評価額を計算します。このように、時価で評価する財産も時価よりも低い額で評価する財産もあり、それぞれの財産ごとに評価額を計算して相続財産の総額が決まります。

相続財産の総額が決まれば、借り入れや未払金などの負債を差し引きして遺産額を確定します。こちらから基礎控除額を引いて課税遺産総額を算出、これを相続人で分け、それぞれの相続額に合わせて、相続税の税額を確定していきます。相続税を決めるためにも、まずは相続する財産にあわせて、評価額を決める必要があるわけです。

株の相続税評価額の計算方法は?

では、相続財産としての株式の評価はどのように行うのでしょうか。今回は「上場株式」についてお伝えします。そのため、「自社株」などの評価方法は今回お伝えする内容とは異なります。

基本的には「時価」で評価することになりますが、株式の価格は常に変動するため、亡くなった日(課税時期)の終値(最終価格)を基に評価します。ただし、終値よりも以下3つの価格のいずれかが低くなる場合は、その最も低い価格で評価することができます。

  • 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
  • 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
  • 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

つまり亡くなった月、その1ヵ月前、その2ヵ月前のそれぞれ1ヵ月間の終値の平均が、亡くなった日の終値よりも低い場合は、その中で最も低い価格を基に評価することができるのです。この価格に保有株数を掛ければ、相続財産としての株式の評価額を算出できます。

ただし、亡くなった日が平日でなく終値がない場合や、その株式に権利落ちなどがある場合は、終値や月の平均額に一定の修正をして評価額を求めることになっています。

投資信託の相続税評価額の計算方法は?

それに対して投資信託は、より時価に近い方法で評価されます。評価額を求める計算式は、以下のとおりです。

課税時期の基準価額×口数-課税時期に解約等をした場合にかかる源泉徴収税額-解約手数料等

亡くなった日の評価額から、その日に売却した場合の税金と手数料などを引いた額が評価額になります。株式のように、いくつかの価格のうち有利な価格を評価額とすることはできないのです。

このように計算した評価額と他の財産と合わせた額が全体の相続財産 となり、相続税がかかるかどうかが決まります。

相続する時の手続きは?

この評価額は、株式や投資信託を相続する人が計算しなければならないのでしょうか?もちろんご自身で計算してもいいのですが、亡くなった方が口座を開設していた証券会社に依頼をすれば、株式の4つの価格や投資信託の基準価額を書面で受け取ることができます。相続税の申告を税理士に依頼する場合は、これらの書類を渡せば評価額を計算してもらえます。

なお、亡くなった方が保有していた株式や投資信託を相続するためには、相続する人が同じ証券会社に口座を持っている必要があるので、持っていない場合は口座を開設したうえで手続きを進めます。

手続きの際は、相続財産を「遺言の内容に沿って分割した」のか「遺産分割協議を行って分割した」のかなどによって、必要書類が変わります。遺言書や遺産分割協議書のほか、戸籍謄本や印鑑証明書を提出する必要がありますが、証券会社に問い合わせれば必要書類などの案内を受けることができます。

今回お伝えしたように、株式と投資信託では相続財産としての評価方法が異なります。特に株式の場合は、4つの価格のなかで最も有利な価格で評価することができるので、覚えておくといいでしょう。

文・澤田
所属・FP事務所FP EYE代表
1971年生まれ、東京都出身。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中

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