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(写真=PIXTA)

LINE(ライン)が7月15日、東証に上場する。今回LINEは日本企業初となる日米同時上場を行い、ニューヨーク証券取引所には現地時間で7月14日に上場する。日本におけるスマホ利用者数は2016年4月時点で5496万人(ニールセン調べ)、LINEの利用者数は約5800万人、月間アクティブ率は69%と、スマホ利用者の半数以上が利用しているLINE。しかしリリースされたのは2011年と歴史は浅い。

親会社である韓国の通信系企業NAVERとの関係や、堀江貴文氏が率いた旧ライブドアとの関わりがあることなど、少し複雑なLINEの歴史を探る。また上場後のLINEの行方を左右するであろう、LINEの経営陣や今後の事業展開についても触れる。

LINEの歴史 創業期、経営拡大期、誕生から

歴史を時系列で大きく3つに分けて見てみよう。

創業期(2000年―2010年ごろ)

韓国最大のインターネットサービス会社NAVERが100%出資し、オンラインゲームをメインに行う企業「ハンゲームジャパン株式会社」を2000年に設立した。2003年には、オンラインゲーム以外の多様なサービスを行う企業であることを示すためにも「ゲーム」の名を社名から外し、「NHN Japan株式会社」と商号を変更した。

経営拡大期(2010年―2012年ごろ)

2010年4月に、NHN Japanは株式会社ライブドアの株式を約63億円で取得して完全子会社化した。この買収の最大の狙いは、検索サービス「NAVER」の強化だった。ライブドアが運営するブログなどの既存サービスや「ライブドア」ブランドはそのままに、「NAVER」の強化とライブドアの成長を同時に追求していく、ポジティブな買収であった。当時ライブドアはホリエモンらが逮捕された「ライブドア事件」から4年が経ったところ。それまで再建フェーズであったライブドアが、本格的な成長フェーズに移行するきっかけとなった。

2012年には「NHN Japan」とNHN Japanの子会社である「ネイバージャパン」、そしてライブドアの経営統合を実現した。ライブドアのメディア事業とネイバージャパンを吸収合併した形だ。

LINE株式会社誕生後(2013年~)

2011年、東日本大震災をきっかけに「災害時にも簡単に連絡ができるアプリを作る」という目的の下で、コミュニケーションアプリ「LINE」はリリースされた。

サービスがスタートしたのは2011年6月だ。ユーザー数が5000万人に達したのはサービス開始からわずか1年後の2012年7月のことであった。これは、Twitterの約3年、Facebookの約3.6年をはるかに上回るスピードだ。

LINEアプリのヒットを受け、NHN Japan は2013年、ゲーム事業を行う部門とウェブサービス事業とを分割させ、ウェブサービス事業を行う部門を「LINE株式会社」として発足させた。つまり、現在のLINE株式会社は、ウェブサービス事業を専門に行う企業として2013年に設立されたばかりの新会社なのだ。

その後2014年には「ツムツム」がリリースされ大ヒットした。2015年にはLINE Payのリリースや原宿でのLINEストアのオープンを行い、コミュニケーションアプリに留まらない事業展開を行っている。

LINEの役員、経営陣

2016年6月時点で、LINEの役員11人中、親会社である韓国NAVER社出身は4人である。また執行役員は17人いるが、そのうち7人が韓国系であることからも、親会社の影響を強く受けている企業であることが分かる。

社員にはライブドア出身の者も多い。これはNHN Japanがライブドアを買収した際、ライブドアのブランドやサービスの継続と共に、従業員の雇用継続、ライブドア独自の運営ポリシーに沿った運営を認める方針であったことが理由として挙げられる。現CEOである出澤剛氏などライブドア出身の社員はLINEでも活躍しており、執行役員も、そのうち複数名がライブドア出身だ。

LINEの今後の事業展開

現在の主な事業は、コミュニケーションアプリ「LINE」を中心とした種々のサービスであるが、今後は「プラットフォーム化」と「海外進出」を軸として多角的な事業展開を進めているとしている。

この「プラットフォーム化」と「海外進出」という軸について見てみよう。

プラットフォーム化

LINEが目指すのは、単に知人との通話などのコミュニケーションに使えるアプリとしてだけでなく、各種サービスに移動するプラットフォームとして利用されることだ。例えばショッピングやバイト探しなどのサービスへ移動するような使われ方を目指している。Yahoo!アプリをイメージするとよいだろう。

海外展開 アジア圏は順調だが欧米では苦戦

日本やタイ、台湾、インドネシアなど、アジア圏では比較的高い普及率をほこるLINEであるが、非アジア圏、特に欧米諸国では競合サービスを相手に苦戦を強いられている。事業拡大を実現するにあたって、これらの国々への展開は避けては通れない。7月の日米同時上場では、ニューヨーク証券取引所に上場することによって欧米での知名度を向上させる狙いもある。

決済サービス事業の拡張

2016年3月24日に報道関係者等を招いてLINE株式会社の本社で開かれた事業戦略発表カンファレンス、「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」においてLINEが今後力を入れてくとした事業の一つが、この決算サービス事業の拡張だ。

チャージと送金、送金依頼、割り勘、決済の5つのサービスが利用できる「LINE Pay」。これを利用すれば、銀行口座やコンビニからの資金移動が簡単になるだけでなく、LINEユーザー間の送金やお金を返してほしいときの請求依頼、複数人で割り勘したときなど、少し言いづらいお金のことも、LINEキャラクターを活用して気軽に切りだせる。

また決済サービスでは、クレジットカードを事前登録しておくと、手数料不要でインターネットショッピングの支払いが行える。LINE Payを利用すれば、お金に関する様々な作業を簡単に済ませることが可能になる、

LINE Payは、2015年にサービスを開始した「LINEタクシー」事業とも提携している。スマホでLINEアプリを開くだけで好きな場所にタクシーを呼び、お財布を出すことなくLINE Payで支払いを完了させるということが可能だ。

MVNO事業 低価格、LINEの利用は無料

LINE Payでの決算サービス拡張と共に注目を浴びたのが、MVNO事業への参入だ。2016年夏から始動が予定されているMVNO事業「LINE MOBILE」では、最低通信料500円~とかなり低価格にサービスを展開する予定である。

最大の特徴は、LINEを利用する際の通信料が無料となることだ。メッセージだけでなく、無料通話、写真、動画など、LINEのコミュニケーションサービスを利用する際には通信料がかからない。仮に通信料が上限に達した際にも、LINEだけは継続して利用できるのだ。

ユーザーにとってメリットがあることは勿論、LINEにとってもより利用者を増やし、囲い込むことが可能となる。LINEだけでなく、FacebookやTwitterなど利用頻度が多いSNSに使用したデータ料金が無料になるプランも用意されている。始動後、他のMVNOにどのようなインパクトを与えるのかにも注目が集まる。

リリースされたのはわずか数年前だが、短期間のうちに日本で最も使われるコミュニケーションアプリにまで成長したLINE。上場を機に更に世界進出を進めて行く。今後の成長にも期待が寄せられる。

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