地震, 保険, マンション
(写真=PIXTA)

永らく「住居といえば“戸建て”」の思想がはびこっていた日本でも、近年ではマンションなどの共同住宅の割合が確実に大きくなっている。特に首都圏においては、来るべき2020年東京オリンピックに向けて、インフラ整備と共にマンションの開発も急ピッチで進められている。そうした現状もふまえ、これから住居を購入しようと考えている方にとって、マンションの選択肢が皆無だという方はほぼいないだろう。

いざマンションに住もうと考えたとき、併せて検討したいのが「地震保険」だ。近年では、マンションはますます高層化の傾向が顕著で、特にタワーマンションと呼ばれる形態が非常に増えている。もちろん、どこのマンションであっても耐震構造は十分と謳われているが、人情としても、実際に地震が起きたときのことを考えると高い建築物は揺れに対する不安が残るのは否めない。そこで今回は、マンションに住む際に知っておくべき地震保険の知識について解説する。


マンションの地震保険は必要か?

日本が世界有数の地震大国であることは周知の事実だが、直近においては東日本大震災や熊本地震なども起き、改めて地震に対する備えの必要性が叫ばれている。地震保険とは、震災により住居等が被害を受けたときに、その損失を補てんするためのものだ。

つまり、地震保険への加入は、来るべき震災に対して金銭的な側面の備えをしておくことに他ならない。近年の大震災を受け、各損害保険会社もこぞって地震保険の必要性をアピールしているし、実際に地震保険への意識は確実に高まっている。それにも関わらず、マンション住まいであれば地震保険が不要と考えている方が意外に多いのだ。

地震保険におけるマンション固有の特徴

地震保険は、震災により住居等が被害を受けたときに備えるものだ。戸建てでもマンションでもそこに違いはないが、マンションに固有の特徴がある。それは、マンションでいうところの”住居“が、「共用部分」と「専有部分」に分けられているということだ。

専有部分とは購入した住戸であり、共用部分とはそれ以外のすべてを指す。エレベーターや廊下といった設備はもちろん、給排水や電気などの設備も共用部分だ。戸建てであれば住居とは文字通り建物全体を指すため分かりやすいが、マンションはこの共用・専有の区分があるため、地震保険の入り方も戸建てよりやや複雑だ。

具体的には、共用部分についてはマンションの管理組合が保険をかけ、各戸の住民は、その専有部分のみに自ら保険をかけることとなる。ただし、古いマンションの場合は、共用部分に保険がかかっていないこともある。その場合は、各戸の住民自身によって共用部分に保険をかけなくてはならないので、注意が必要だ。

「マンション住まいに地震保険が不要と考えている人が意外に多い」と述べたが、これにかかる大きな理由がこの「共用部分」と「専有部分」の問題だ。というのも、マンションは戸建てとは違い、「共用部分」の問題があるため、建て替えを自分の意志のみでは決められない。

マンションでは、地震により自分の住戸“のみ”が被害を受けるということはまずありえない。多くは、その他の住戸はもちろん、共用設備も損壊状態となるだろう。そうした場合、地震保険で自らの住戸にかかる金銭的な補償は受けられても、そこで得た金銭で現状が回復=建て替えや修繕が行えるかは、管理組合やその他の住民の全体意思によらなければならない。
この点を不自由に感じることから、そもそもマンションに地震保険は不要、と考える人が多いのだ。

補償の対象は?

話題を転じて、マンションにおける地震保険の補償の対象について確認しよう。これは戸建てと基本的には相違ない。先に、地震保険の対象が「“震災”で被害を受けた住居“等”」としたが、厳密にいうと、地震による津波や火災、土石流などによる埋没、流出といった災害も地震保険の補償の範囲だ。

また、「住居等」とは、住居と、そこにある「家財」を指している。つまり、住居そのものに被害がなくとも、そこにあるテレビや寝具、タンスなどの家財が損壊した場合は、地震保険の対象となる。ただし、家財については注意が必要だ。自動車や貴金属、30万円以上する骨董品等は補償の範囲外だからである。

マンションにおける地震保険の保険料は?

地震保険の保険料は、建物の構造の違いと所在地の違いによって定められる。構造の違いとは、つまり「燃えにくさの違い」だ。当然ながら、鉄筋などの燃えにくい構造の方が木造よりも保険料は安い。

所在地の違いは、「地震の頻度の違い」だ。統計的に地震が起きやすい地域ほど保険料は高くなる。ただし、基本的にマンションは「耐火(非木造)構造」であることから、保険料はもっぱら建てられた場所=所在地に左右されることとなる。財務省によると、保険金額1000万円あたりにつき、東京や神奈川などの都心部では耐火構造で約2万円となっている。

一方、比較的安い島根県や岡山県などの中国地方では、耐火構造で6500円だ。約3倍もの違いがあり、通勤や通学の便はもちろんだが、こと保険料を考えるうえでも、住む場所は極めて重要といえる。

契約する際の注意点

マンション住まいに地震保険は不要と考える人が少なくないのは述べた通りだが、そうはいっても必要性が高いと考える方はもちろん存在する。

マンション住まいの方で真っ先に地震保険の契約を検討するべきなのは、ずばりローンの残債が多い方だ。地震保険はそもそも火災保険とセットでしか加入できず、しかも火災保険の保険金の最大50%までしか掛けられない。つまり、地震により住居が壊滅的打撃を受けても、ローンは残り、かつ地震保険では全額損失額を補てんできない可能性が十分ある。

それでも、住宅は数千万円の買い物だ。地震保険の有無で、自己負担額は雲泥の差が生じてしまう。例え全額補償が困難でも、購入直後でローンの残りが大きい方は、地震保険へ加入しておくことが賢明だろう。