伊藤忠商事 <8001> は輸入車販売のヤナセを子会社化すると5月25日に発表した。株式公開買付け(TOB)を行い、7月までに保有株比率を最大で65%まで高める方針である。ヤナセは足下の業績は好調であるが、海外展開が課題となっている。伊藤忠商事との関係を強化する事で海外進出に弾みを付ける狙いがある。

国内輸入車販売は絶好調

伊藤忠,ヤナセ,TOB,子会社化
(画像=ヤナセWebサイトより)

伊藤忠商事はヤナセの株式の39.4%を保有する筆頭株主である。TOBによって、保有比率を更に高め、子会社化を行う。TOBは7月10日までの期間で行われ、あいおいニッセイ同和損害保険や東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険等の損害保険各社が応募に同意している。買付に係る費用は最大で65億円程度となる。

1990年代から経営不振に陥り、債務超過状態となったヤナセに対し、伊藤忠商事は2003年に同社の救済に動いた。増資を引き受け、出資割合13%の筆頭株主となり、その後も株式の買い付けを継続し、関係性強化を図ってきた。直近では2013年に日本土地建物から約33億円で株式の買付を行っている。

このタイミングでヤナセの子会社に踏み切るのは、ヤナセの足下の業績が堅調に推移している事が理由であると見られる。同社の2016年9月期連結決算によると、売上高は前年同期比2%減の4091億円、純利益は同2%増の62億円となっている。5期ぶりの減収となっているものの、リーマンショックや東日本大震災での販売不振に苦しんでいた2011年9月期の2759億円から5年間で売上高は5割近い伸びを見せている。尚、今年からヤナセは決算月を3月へ変更している。2017年3月期の連結決算は6ヶ月決算ではあるが、売上高2152億円、純利益29億円となっている。

日本自動車輸入組合の調査によると、2016年の輸入車新規登録台数は33万台となっており、2012年以降5年連続で30万台を超えている。それ以前に30万台を超えていた年は1997年まで遡る事となり、2000年代の販売不振から脱却の兆しを見せている。こうした環境の改善が伊藤忠商事の背中を押したものと見られる。

輸入自動車の貿易業から世界を股にかける自動車ディーラーへ

輸入車に貼ってある黄色い「YANASE」ステッカーでお馴染みのヤナセは1915年に創業し、100年以上の歴史を持つ老舗企業である。米ゼネラルモーターズのビュイック、キャデラックの輸入から事業は始まった。その後、多くの海外ブランドの独占輸入権を得るビジネスモデルで成長を続けたが、1980年代後半から海外自動車メーカーの日本法人設立が相次ぎ、輸入権契約の打ち切りが相次いだ。同社を支えてきた輸入権が剥奪され、輸入車ディーラーとしてのビジネスに専念するようになったが、経営は苦しくなり、伊藤忠商事の支援を仰ぐに至ったのである。

現在は経営再建を経て、メルセデス・ベンツやBMW、フォルクスワーゲン、Audi等人気の高い海外ブランドの車種を取り揃える同社は国内の輸入車ディーラーとしては揺るぎない地位を確立している。

次なる成長戦略は海外進出である。国内輸入車市場は好調であるが、クルマ離れや人口減少が叫ばれる日本では今後の大きな成長は見込みにくく、中古車販売やアフターサービスを中心としたビジネスが占める割合が大きくなると見られる。伊藤忠商事はアメリカやヨーロッパ等で自動車販売事業も行っており、伊藤忠商事の持つ販路とヤナセのノウハウを組み合わせれば海外展開に弾みがつく可能性がある。世界の自動車生産台数は増加の一途を辿っており、海外市場を取り込む事で、ヤナセは成長を加速させるビジョンを描く。輸入自動車の貿易業から世界を股にかける自動車ディーラーへ、伊藤忠商事の後ろ盾を得て、ヤナセはビジネスモデルを大きく転換する。(ZUU online編集部)