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2014年5月22日に開催した経営方針説明会で、東芝は2017年3月期に売上高7.5兆円をめざす計画を明らかにしました。売上増にもっとも大きく貢献するのは電子デバイス事業で17年3月期に2.2兆円に拡大させる計画です。その他の事業について、電力・社会インフラ事業は2.3兆円に、コミュニティ・ソリューション事業は1.6兆円に、ライフスタイル事業は1.4兆円にそれぞれ引き上げる計画です。特に、事業の大半を占める半導体事業(電子デバイス事業)の今後が、東芝の株価の先行きを占うといっても過言ではありません。東芝の半導体事業の動向と今後についてご説明いたします。


世界的スマートフォン需要の拡大

東芝を取り巻く世界の半導体市場動向について概観してみましょう。米Gartnerによると、2013年における半導体の売上高は3150億米ドルと過去最高を記録しました。その主な要因はメモリーメーカーの業績回復です。これは最終製品としてのスマートフォンやタブレットなどモバイル端末の成長に依るところが大きくあります。逆にパソコンは、今後縮小傾向に歯止めがかからない状況が続く見通しです。今後もスマートフォン市場における出荷台数は増加が見込まれていますが、AppleのiPhoneやサムスン電子のGalaxyシリーズのようなプレミア価格帯のハイエンドスマホの成長率は鈍化傾向にあり、今後は中華スマホに代表される低価格帯のミドル・ローエンドのスマートフォン市場のウエートが高まる見通しです。こうした中、東芝のこれまでの取り組みと今後の展望ついて見ていきましょう。


東芝の経営戦略と半導体事業の位置づけ

東芝は2006年以降経営戦略として「選択と集中」を推し進めます。総合電機メーカーとして複数の事業を有する東芝は、2006年当時、原子力事業(社会インフラ事業)と半導体事業を2本柱とする戦略を打ち出し、両事業に経営資源を集中させる施策を取りました。同年2月には、アメリカの原子力プラントの大手企業「ウェスティングハウス」の買収を行いました。一方で、音楽事業の「東芝EMI」や保有していた「銀座東芝ビル」の売却、更には、第三世代の光ディスクHD DVD事業からの撤退を行いました。「選択と集中」は短期的には功を奏して、当時半導体事業は世界で第3位、更に原子力事業は世界で首位を獲得するに至り、東芝の主力事業としての存在感を示しました。

しかし、リーマン・ショック後の需要の急減により、半導体化価格は急落し半導体事業は巨額の赤字に転落してしまいます。2009年3月期には3435億円の最終赤字となりました。更に、原子力事業に関しても2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故により、事業推進が暗礁に乗り上げてしまいます。このように、東芝の「選択と集中」は当該事業特有のハイリスクな側面に苦しむ時期がありました。