女性の社会進出が進み、家事の負担は「仕事と家事の両立」を目指す共働き夫婦に大きくのしかかる課題となっている。そこで今、ロボット掃除機、全自動洗濯乾燥機、食器洗い機の、家事にかける時間を減らせる「新三種の神器」が人気を集めているという。

仕事を持つ主婦にはおお助かりの家電なのだが、費用がネックなのか購入をためらう人も。では、「新三種の神器」を投資目線で考えるとどれだけおトクなのだろうか。

三種の神器は高嶺の花?

食洗機,投資
(写真=PIXTA)

東京オリンピックのあった1960年代。「三種の神器」はカラーテレビ・クーラー・自動車だった。ちょうど、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の頃だ。ここで言う「三種の神器」は、豊かさや憧れの象徴で、国家公務員(上級甲)初任給が2万7906円(参照:人事院 国家公務員の初任給の変還 行政職俸給表(一))だった1969年に、カラーテレビは約16万円(参照:総務省統計局 主要品目の東京都区部小売価格 昭和25年)。「三種の神器」を所有することは、一種のステータスとみなされていた。

「新三種の神器」はどうだろうか。一般的な掃除機や洗濯機と比べると高額にはなるが、ロボット掃除機、全自動洗濯乾燥機、食器洗い機のどれをとっても1ヶ月のお給料で購入できる金額でもある。

1980年に614万世帯あった共働き世帯は、2014年には1077万世帯にほぼ倍増している(参照:財務省 経済社会の構造変化~女性・子育て~)。2016年4月に施行された「女性活躍推進法」の成立もあり、今後もさらに共働きの夫婦は増えると予想されている。

仕事を終えて帰ってきても家事が待っていると思うと憂鬱にもなる。それなりの費用がかかっても、「新三種の神器」は補って余りあるほど、家事負担の軽減にうってつけの道具だと言えよう。

食器洗い機は投資目線で考えると「15万円の効果」

それだけ便利な「新三種の神器」でも、食器洗い機の普及率は31%しかない(参照:総務省統計局 平成26年全国消費実態調査 主要耐久消費財に関する結果 表Ⅰ-9 主要耐久消費財の普及率の上昇幅)。食器洗い機を使えば水道光熱費が高くなるのではと気になるからなのだろうか。経済産業省の家庭の省エネ徹底ガイド春夏秋冬2017によると、季節的な要因などはあるが、手洗いで食器を洗った場合で年間のガスと水道の使用料金は約2万5510円。

一方、食器洗い機を使用した場合の年間の電気と水道の使用料金は約1万6640円と、おおよそ8870円の節約となっている。また、余熱で乾燥することで、省エネにもなる。筆者の場合は、食器洗い機を購入したことで手洗いする手間が省けたことが大きい。冬場に「あかぎれ」で皮膚科に通わなくて済み、病院に通う時間と費用が節約できた。

投資目線で判断するなら、目で見てわかる節約分だけでなく、時短で得られるメリットにも注目したい。例えば、朝夕の食器洗いに15分かかっていたとしよう。食器洗い機に食器を並べる時間として朝夕で3分かかるとすると、1日で12分の時間が短縮できる。

仮に、時給2000円で計算すると、1日400円の価値に相当する。1年間だと14万6000円にもなり、水道光熱費の節約分と合わせると約15万円の効果が見込まれる。大手金融機関の定期預金金利は1年物で0.01%。15万円の利益を出すには、15億円もの金額が必要だ。食器洗い機の価格は1年もあれば回収できる。上手に文明の利器を活用してはどうだろう。

効果的な使い方

電気料金は時間帯で変わるので、上手にプランを選んで電気代を節約することも検討したい。共働きで昼間は家にいないなら、深夜の時間帯に電気代が安くなるプランで契約するのも手だ。

夜寝る前に食器洗い機や全自動洗濯乾燥機をセットしておけば、朝起きる頃には出来上がっているのが嬉しい。我が家の場合は、夫が食後に食器洗い機をセットするようになったことが予想外の展開だった。共働き家庭では、家事を手伝ってくれない家族にイライラするなんてよくあること。誰がやっても差異なく早く家事が片付くことは、余計なストレスをためずに済むという利点にもなる。

ただし気を付けたいのは、食器洗い機と全自動洗濯乾燥機が出す音の大きさだ。少し高価でも、作動音が静かな機種がよく選ばれている。深夜に使うことで、近所迷惑にならないかを確認してから購入しよう。宝の持ち腐れにならないようにしておきたい。

仕事が忙しく家事がないがしろになることに、罪悪感を持つこともあるだろう。「新三種の神器」を投資目線で考えると、お金で「時間」を買うことで、結果的に「お金」と「ゆとり」を生み出すことにつながっていく。賢くお金を使うことで、おトクに生活を楽しむための時間を手に入れたい。

辻本ゆか CFP®
おふたりさまの暮らしとお金プランナー
企業の会計や大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。暮らしにまつわるお金について知識を得ることは、人生を豊かにすると知る。43歳で乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。結婚を機に奈良に転居し、現在は独立系のFP事務所を開業。セミナーを主としながら、子どものいないご夫婦(DINKS・事実婚)やシングルの方の相談業務、執筆も行っている。 FP Cafe 登録パートナー