認知症患者やその予備軍のドライバーに対し、警察がドライブレコーダーを無料で提供する動きがひろがっている。高齢者が起こす事故の増加に対して警察が考えた策で、今後は免許の自主返納を促す方針だ。

運送会社でもドラレコの活用がひろがっている。ドライバーの運転状況を常にモニタリングし、優秀な安全運転ドライバーに対する表彰制度や人事考課にもつなげる。運送会社にも経済的メリットが大きい。保険会社と特約を結べば、安全運転の取組結果次第で最大6%自動車保険料が割引されるのだ。

減らない高齢者の事故

ドライブレコーダー
(画像=PIXTA)

警察庁の発表によると、平成29年の交通事故による死者数は3694人と、統計を取り始めた昭和23年以来で最も低い数字を記録した。死傷者数も、平成18年110万人をピークに減り続け、平成27年には67万人と大きく減っている。ちなみにこの数字は自動車保有台数が1/7(1128万台/8125万台)だった昭和42年と同じ水準だ。

「交通戦争」と呼ばれ交通事故が社会問題化していた当時に比べ、道路・信号機・標識などのインフラ、自動車テクノロジー、ドライバーの意識など全ての面で大幅な改善が施され、死傷者数の減少につながった。事故件数も、平成18年の84万件から平成28年の47万件と4割以上減った。特に、1次当事者(最も過失の重い者)が若年層(16歳以上24歳以下)の事故件数が14万件から7万件と半減した。

高齢者ドライバー(65歳以上)が1次当事者の事故は、10万件弱のまま全く減っていない。事故件数では若年層を上回ってしまった。80代前半では1.4倍、85歳以上では2.1倍とむしろ大幅に増えている。

運転を記録して自主返納を促す

そこで高齢者ドライバー対策の一環として、福井県警では、日常の足として自家用車を運転する70歳以上の高齢ドライバーを対象に、無償でドライブレコーダーを貸し出している。

毎日新聞が2016年12月27日に掲載した『高齢者ドライバー注意喚起で「ドライブレコーダー」無料』によれば、県内11署に1台約3万円のレコーダーを計15台設置、総事業費は約400万円を投じたとのこと。運転者本人の希望による貸し出しが基本だが、たとえ本人が申し出なくても、家族からの申請があれば貸し出すこともある。安全指導までの流れは以下の通り。

ステップ1:1週間ドライブレコーダーを設置して運転
ステップ2:警察の交通安全担当者が記録を確認
ステップ3:担当者がドライバーに対し運転診断結果に基づき個別指導(家族同伴も可)

今までに500人近くがこのプログラムに参加した。指導では、中央線を跨いで走り続けている映像を突き付けられる。もちろん県警は、単に安全指導を目的に限られた予算を使っているわけではない。

トラック業界でも拡がるドライブレコーダー

ドライブレコーダー導入の動きは、トラック業界でも拡がっている。全日本トラック協会では、事故防止や安全運転管理の促進を目的として、「ドラレコ」導入企業へ1台当たり2万円の助成を実施、普及を促進している。

自動車保険料の削減にもつながる。損害保険会社は、フリート契約(10台以上の契約)を結んでいる法人事業者に対し、「ドラレコ」を活用した安全運転支援サービスを提供している。導入企業の管理担当者がリアルタイムでドライバーの運転状況をモニタリングでき、同時に保険会社から定期的にレポートを受領する。導入企業の取組状況によっては、最大6%もの割引を受けることができる。

ドライブレコーダーの出荷実績は、2017年10-12月には86万台に達しており、ここ2年足らずで2.5倍以上に増えた。同時に貸し切りバスには装着が義務付けられるなど、今後も普及の加速が見込まれる。(ZUU online 編集部)