お金持ちでもない、起業家でもない一般庶民が、莫大な遺産相続や宝くじに依存することなく「40代までに早期退職する」ことは可能なのだろうか。

若くして退職し経済的自由を手にするための3大ルールは「節約・貯蓄・増やす」だが、生半可な金額を貯めるだけでは成し得ない。しかし世の中には、普通に働きながらそれを成し得た人々もいる。

貯蓄率70%以上を 実現して28歳で200万ドル以上貯め、早々と退職生活を送る女性や30代で早期退職した夫婦など、成功者の体験談から、その方法を探ってみよう。

「支出を把握して、退職生活の予算を組む」は基本中の基本

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(画像=Lemau Studio/Shutterstock.com)

「自分が何にお金を使っているか把握する」は、貯蓄する上で基本中の基本である。入ってきたお金がどこに流れ出ているのか分からないようでは、将来のために貯蓄ができないだけではなく、退職後の予算を組むのも難しい。早期退職はおろか、何歳になっても働き続けることになるかも知れない。

100万ドル以上貯めて30代で退職したマッカリー夫妻は、「支出を把握することでお金の価値が分かるようになり、節約しようという意識が強まる=もっとお金が貯まる」という。退職前の夫婦の所得は合計14万ドルと、低くはないが早期退職できるほど高くもなかった。

そこで退職後の予算を組み、目標金額を設定して、節約・貯蓄・投資を上手く組み合わせた。予算の算出には「4%ルール(毎年の引き出し額を退職当時の資産総額の4%に設定)」 を利用した。家族5人分の年間予算は4万ドルだ(CNBC2017年4月11日付記事 )。

早期退職する人の貯蓄率は50%?「大きな買い物を小さくする」

毎月給与を使い切ってしまう生活を続けていては、定年退職の時期がどんどん遠のいて行く。日頃から上手く節約し、ボーナスや思いがけなく手にしたお金は、どんどん貯蓄に回す。「最初からなかったお金」と思えば、使いたいという衝動にも駆られない。

28歳で255万ドルを貯めて定年退職したリビングストン氏。どうすればそんなに貯蓄に回せるのだろう。「大きな買い物を小さくする」というのが彼女のアドバイスだ。

生活費の高い都市として知られるニューヨークに住むリビングストン氏は、住宅費が大きな支出だと考えた。そこで投資銀行勤務で高所得を得ていたにも関わらず、安全な地域に建てられているものの酷く劣化した小さなアパートを住居に選んだ。そのおかげで、同僚よりも年間1.5万ドル、5年で7.5万ドル多く貯蓄することが出来た。株式市場の恩恵で、実際の貯蓄額は9万ドルにもなったそうだ。

寝室が1つ多い家が欲しいとなれば、それだけで5万~10万ドル価格が上がる。それをカバーするために、数年余分に働くことになる。「それだけの価値があるか」とリビングストン氏は問いかける。

同じことが賃貸にも該当する。15万円のマンションを借りる代わりに10万円のマンションを探せば、年間60万円、5年で300万円の節約だ。

住居で大きく節約しても、小さな浪費を続けていては効果半減だ。余分なお金を使わないだけではなく、クレカやロイヤリティカード、割引券などをフル活用して、貯蓄率を最大限にまで拡大することも重要である。

利率の高い口座・投資・副業などでお金を増やす

お金を出来るだけ節約して貯める生活に慣れたら、次は増やす必要がある。「確定拠出年金を利用しているから安心」という考えでは、早期退職は不可能だ。「投資は苦手だしリスクは背負いたくない」という人でも、利率の高い貯蓄口座にお金を移し替えるだけで、数年後、数十年後には大きな差がつく。

またシェアリング・エコノミーとインターネットを利用して、所有物や空き時間からお金を生みだすという手段もある。民泊から自動車や駐車場のレンタル、アフェリエイト、動画配信、犬の散歩など、塵も積もれば山となる方式でお金を増やす。あるいは週末だけバイトをして、そのお金を貯蓄や投資に回すというのも良いだろう。

「低所得だから」と諦める前に、まずは増やす努力をしてみる。そこから新たな可能性が見えてくるのではないか。

心地良い生活を送っているようでは、早期退職は無理?

結論からいうと、一般庶民が早期退職するためには、人の何十倍、何百倍も節約してお金を増やすしかないということだ。当たり前だが、実践するとなると相当の意思の強さが必須となる。

35歳で夫人とともに早期退職したスティーブ・アドコック氏は、「心地良いと感じる生活をしているようでは、早期退職は出来ない」と語る。2016年12月にそれまで勤めていたIT企業を退職してアリゾナ州にあった家を売り、現在はトレーラー(移動住宅)で暮らしている。

個人の価値感はそれぞれ異なる上に、トレーラー生活は日本では難しいだろうが、夫妻は「所得に依存しない自由な生活」の素晴らしさを満喫しているそうだ(CNBC2017年10月19日付記事)。

節約と貯蓄ばかりの生活は、想像するだけでげんなりしそうだが、「この先の10~20年辛抱すれば、残りの30~40年を自由に暮らせる」という思考に切り替えることができれば、我慢がやり甲斐に変わるのかも知れない。アドコック氏いわく、「心地悪い状況を心地良く感じられるようになれることが秘訣」である(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)