前日については、ファンダメンタルズ要素としてFRBの追加利上げに対する慎重な姿勢がドル売りを誘発し、テクニカル的にはドル円が109円のレジスタンスを崩すことができず反落しました。FOMC議事要旨では、「多くのメンバーは追加利上げについて辛抱強くなれると判断」「数人のメンバーは金利据え置きを支持した」などと直近報道されているFRBの姿勢を改めて強調するに留まりました。

また、ボスティック・アトランタ連銀総裁は「12月の利上げで金利は中立水準に近づいた可能性」「FRBは利上げに忍耐を持つべき」、エバンズ・シカゴ連銀総裁は「市場の混乱や貿易摩擦により下振れリスクが高まった」、ローゼングレン・ボストン連銀総裁は「経済が弱まった場合、FRBが利上げする必要はない」などと総じてハト派寄りの発言を繰り返したことで、ドル円は一時108円を割り込み、107.975円まで下値を拡大しました。

FOMC議事要旨にて、複数のメンバーが利上げに反対姿勢をとっていることで、通常であれば株式市場にプラスの影響を及ぼすのですが、今回はそれ以上にリスク回避の動きがつよまっていることから、株価にもマイナスの影響が出ています。日経平均株価についても、300円超安の動きになっていることから、再び株安がドル安、円高をサポートしそうです。また、トランプ大統領が民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務との会談を「時間の無駄」として退席したとの報道により、政府機関閉鎖が長期化するとの見方もリスク回避の動きに繋がっています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

米中次官級通商協議の明確な声明がでてきていないものの、中国商務省は「米国との貿易協議は広範囲で深く、綿密」と指摘していることもあり、マーケットが期待していたポジティブなものにはなりませんでしたが、マイナス要因にもならない結果となりました。今月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でトランプ大統領と王岐山中国国家副主席の会談予定が発表されていることもあり、マーケットの目線が既に月末のイベントにシフトしていたことも、影響が限定的になった要因かもしれません。

本日は、パウエルFRB議長の講演が予定されています。直近では、大きくハト派寄りに傾斜していることから、引き続き慎重な姿勢を崩さない旨の発言を行うものと考えられます。ただ、既にマーケットも現状を織り込んでいることもあるので、次にドルが大きく売られるタイミングとしては、FRB高官から利下げ示唆があった時だと考えられます。裏を返せば、利下げに言及しない限りは下値も限定的になると考えられそうです。

こうなってくると、いよいよブレグジット交渉がマーケットの主役に躍り出てくるかもしれません。コービン・労働党党首は、来週予定される議会採決でメイ首相のEU離脱協定案が否決された場合、総選挙の実施を求める方針を固めたと報道されています。また、新たな修正法案が可決し、15日の投票でメイ首相案が否決された場合3日以内に代替案を議会に提出しなければならなくなりました。15日でのメイ英首相の敗北はほぼ確実視されており、議会で可決される代替案、またそれがEUと短期間で合意できるのか、という点には大きな疑問符が付くことから、現状ではポンド売りイベントとなる可能性が高そうです。

あれだけ固執した109円、もう一度くらいトライしそうだ

ユーロドル、1.1420-1.1490ドルのコアレンジを形成していましたが、1.1500ドルを上抜け、このレンジはいったん終了です。1.1420ドルのロングは1.1480ドル台にて利食い、1.1480ドル台での途転売りポジションは、1.1510ドルにて損切りです。ユーロドルのレンジが抜けてしまったので、次の通貨ペア探しですが、やはりドル円でしょうか。あれだけ固執した109円のライン、届かなくてももう一度くらいはトライする可能性がありそうなため、107.90円でのロング、108.90円での利食い、損切りは107.40円割れです。

海外時間からの流れ

FOMC議事要旨の内容については、市場の予想通りハト派寄りのものになりました。FRB高官からもハト派寄りの発言が相次いでいますが、これで一旦マイナスの材料は出揃ったと考えることもできます。ドル安に傾く決定的な材料は依然として出てきていないことから、大きくポジションを傾けるよりは、ポジション整理中心で一旦反発する展開を想定します。

今日の予定

本日は、米・新規失業保険申請件数などの経済指標が予定されています。また、要人発言としては、バーキン・リッチモンド連銀総裁、パウエル・FRB議長、ブラード・セントルイス連銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁の講演がが予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。