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中国の富裕層と日本

米国のコンサルティング会社であるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が6月に発表した「グローバルウェルス2014リポート」によると、中国の富裕層は2013年に237万8000世帯に達し、前年比で82%も増加したそうです。

これは日本の124万世帯の2倍近くにあたります。中国より多くの富裕層を抱えている国は、713万5000世帯(2013年)の米国のみです。BCGでは、中国の富裕層を世帯当たりの流動資産が100万ドル(約1億円)以上と定義しています。

また、同じく米国のコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが2009年に行った調査によると、現在中国では年率15%の勢いで、富裕層が増加しており、2015年までには400万世帯を超えるようです。

中国人富裕層の特長は、若年層が多いことで45歳以下が80%を占めています。中国において2008年に投資可能な資産が1000万元(約1億2000万円)以上ある富裕層は約30万人おり、投資可能な資産の総額は8兆8000億元に上ったそうです。そして、近年、こうした中国の富裕層の訪日が増加しています。彼らは一体どんな目的で日本に来るのでしょうか。


中国人富裕層の訪日の目的とは

国土交通省観光庁が2013年に発表した「平成25年7-9月期の中国訪日旅行市場分析」によると、訪日目的はビジネス客の回復が先行し観光客では女性20代が増加したとしています。「観光・レジャー」の割合が前年同期に比べ4ポイント減少し(56%→51%)、「業務」の割合が4ポイント増加した(29%→33%)としています。

観光としては、富裕層ならではの体験旅行、ショッピングツアー、海外療養メディカルチェック、アンチエイジングといった目的が主です。しかし、前年同期と比較するとビジネス客の割合が増加しています。

この背景には、彼らにとっては日本が不動産投資において魅力的だということがあります。まず、日本は中国のすぐ近くに位置します。すでに、中国での不動産投資が飽和状態になったため、次の投資先として近い日本が好まれるのです。

この不動産投資には、ビジネスとともにもう一つの目的があるようです。それは、中国の富裕層が海外への脱出先を探しているということです。2014年8月4日付けの日本経済新聞では、中国の環境汚染の惨状を報じています。

それによると、最近の中国の都市部は微小粒子状物質(PM2.5)による深刻な大気汚染に加え、ゴミのポイ捨てが当たり前という国民性で街にはゴミがあふれかえり、環境汚染が行き着くところまできてしまったようです。

また、世界保健機関(WHO)によると「肺、胃、肝臓、食道」の4つのがんの発生数、死者数は世界一だそうです。新規患者の国籍は、肝臓がんと食道がんの5割が中国人、胃がんは4割、肺がんも3割を超します。世界人口に占める中国の比率(19%)を大きく上回っています。大気汚染などの原因で平均寿命は5年半縮まったそうです。

このため、富裕層は都市部から脱出しはじめており、近いうちには海外への脱出も視野に入れているようです。そして、日本は位置的なことやビジネス、環境など様々な面で移住先として魅力的なのです。