中国における新型肺炎問題が解決の糸口を掴めずにいる。昨年(2019年)から豚コレラを始めとして様々な感染症が蔓延してきた。実は疫学上の実証研究から、かなりの感染症が中国発で生じてきたことが知られている。一つには広大な国土を有している上に世界最大規模の人口を誇っており、また活発な経済活動があるためにヒトの移動があるために、感染症が移動しやすいことがある。しかし、それ以上に注目しなければならないのが、様々なウィルスがそもそも中国で自然発生したものであることが多いということなのだ。

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(画像=ustas7777777/Shutterstock.com)

こうした報道を受けて弊研究所の中国人研究員がこんな話をしてくれた。同人のご母堂が婦人科の医者であるというのだが、SARSのときには中国の当局から招集がかかり、病院に詰めっきりで診療・治療にかかったのだという。現時点ではそういった事態には至っていないという。

新型コロナ・ウィルスがSARSと類似していることが“喧伝”され始めている中で、無視はできない。とはいえそれと相違する点も考えなければならない。SARSが中国国内で蔓延したのは、中間媒介主としてコウモリが関わっていたことにある。また経済規模が我が国を抜いたとはいえ、一般庶民の経済規模がそこまで大きくなったわけではなく、一般人が利用する市場(いちば)の衛生基準が高い訳ではない。

(図表1 路上で生きた鶏を取引する中国のローカル市場)

路上で生きた鶏を取引する中国のローカル市場
(出典:Newsweek)

したがって一般的な中国人がヒトを介して感染する機会を持つ以上に感染症と接触する機会を日常的に有していることを考慮しなければならない。

そしてそうである以上、来週からの春節に注意しなければならない。春節がもたらすのは特需のみではない可能性があるのである。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

大和田克 (おおわだ・すぐる)
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー。2014年早稲田大学基幹理工学研究科数学応用数理専攻修士課程修了。同年4月に2017年3月まで株式会社みずほフィナンシャルグループにて勤務。同期間中、みずほ第一フィナンシャルテクノロジーに出向。2017年より現職。