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(画像=おぼろタオル株式会社)
加藤 勘次(かとう かんじ)
おぼろタオル株式会社代表取締役
1954年生まれ、三重県出身。1982年におぼろタオルに入社。2005年に代表取締役に就任し現在に至る。
おぼろタオル株式会社
『おぼろタオル』の創業は明治41年、三重県津市で誕生しました。日本画家でもあった創業者の森田庄三郎がまだ当時は無地で味気ないタオルしかなかった時代に、ヨコ糸だけを染めて図柄を描く特許技術を発明。乾いている時はおぼろげで濡れるとくっきりと図柄が浮かび上がる「朧染めタオル」は、その美しさと使い勝手の良さから瞬く間に全国へ広まり社名の由来にもなりました。 そして、昭和2年には、日本で初めての細糸によるガーゼタオルの量産化に成功。その後もさまざまな実用新案や特許などを取得し、自社工場での一貫生産によって、常に人に寄り添いながら永く愛される商品作りを続けています。

創業から現在に至るまでの事業変遷について

―まず、これまでの事業変遷に関してお伺いできますでしょうか?

おぼろタオル株式会社・加藤 勘次氏(以下、社名・氏名略)::おぼろタオルは1908年に創業しました。その当時から業界では珍しく自社一貫生産をおこなってまいりました。危機を感じたことは何度かあり、バブル崩壊によって、売り上げが伸びない状況が続いたことや、取引先の倒産などによって一時はタオル事業を存続させるかどうかを考えたこともあります。

―そのような状況で、危機を乗り越えるためにどのような対応を行ったのでしょうか?

販売ルートの改善など既存の商品の改良というのはもちろんやってきましたが、オリジナルタオルの商品開発を始めたことが大きな転機でした。それにより、危機を乗り越えられたと思っております。

―厳しい市場環境から回復するためには、既存商品の改善とともに、新商品開発という新しい取り組みも必要だったのですね。

はい。ただそれは一言で言うほど簡単なことではありません。結果として、新しい商品開発と自社での販売が成功したと言えますが、その過程は長い試行錯誤の連続でした。それでも、この取り組みが本当に必要だと感じ始めたのは、実はこの十年ぐらいの間のことです。

また、一貫生産という創業当時から変わっていないやり方を維持することにも難しさはありました。資金的なこともありますし、専門の担い手がいるかどうかも重要です。さらに、技術を磨き上げることも必要で、三重県はほとんど産地として衰退しており、今では我々ともう一社しか残っていません。そういった状況でこの事業を続けていくことは非常に簡単なことではありません。

― 技術的に高い水準を保ってまで、一貫生産に固執するだけの価値があるのか、それが問われることもあるのでしょうね。

その通りです。技術を維持、発展させることは、今でも完全にはできているわけではないですし、非常に大変なことだと思います。

おぼろタオル独自の人材育成

―そのような危機を乗り越えていくための従業員の人材育成について、何か工夫されていることはありますか?

はい。人材育成は採用から始まります。例えば、30年前と現在では状況は全然違いますが、私たちは三重県の事業者が次々と廃業する中、新しく優秀な技術者を引き込むことで一貫生産体制を維持しました。それこそ、現在は若い人材が中心になっています。

―若い人材というと、20代の方々でしょうか?

そうですね。初めて業界に踏み込んだ方々を、仕事の基本的な部分から商品開発まで幅広く携わらせ、技術を磨いています。失敗してもいいから、新しいことにトライさせるという姿勢も大事にしています。この十年ぐらいの間では、多くの技術者たちに加え、若手人材も10名ほど採用していますね。

―なるほど。逆に若手社員が多いことによる課題などはあるのでしょうか?

はい。技術の習熟度を上げるというのは、時間がかかるものですので、若手社員や新入社員は全体として、タオルの技術や加工についての理解がまだ浅い部分があります。その他も設備投資など、経営全般にわたり、まだ解決すべき課題が残っています。

―それらの点についてはどのように対応しているのですか?

まずは前提として、彼らの将来に期待を持ちつつ、外部のコンサルタントを招いて勉強会の開催や、作業プロセスの見直しなどを進めています。それらの取り組みが社員の成長につながり、いずれ事業の中心人物になっていくことが、最も意義深いことだと思います。

既存事業の販路拡大戦略

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(画像=おぼろタオル株式会社 百年の極)

―素晴らしいですね。それでは、設備投資や設備を整えることについてはどうですか?例えば、海外に製品を売るということは行っていますか?

海外販売は少しだけ行っています。ここは越境ECではなく、BtoBという形で、台湾などで行っています。ただ、新型コロナウイルスで出鼻挫かれたこともあり、まずは、国内で足元を固めることが重要だと考えています。

―その視点は大切ですね。ありがとうございます。また、公式のオンラインストアも運営していらっしゃるとのことですが、そちらのご状況はいかがでしょうか?

現在のオンラインストアの売上は、全体の数%程度です。大手ECサイト上でやっているわけではなく、自社だけでやっているので、なかなか難しい部分があります。 それでも、ほんのちょっとずつでも、オンライン事業を伸ばしていければと思っています。

―販売経路を拡大していくというのも一つの戦略ということですね。

はい、その通りです。オンラインストアをはじめ、販売ルートも増やすことで、私たちの製品をより広範囲に届けたいと考えています。

―具体的には、どのような販売先をお考えですか?

現在は、従来の売り場だけではお客様へお届けできない範囲がありますので、引き続き取引先との連携も密接に行い、強固な関係を築いていくことに加え、タオルと親和性の高い分野や、幅広い地域へ手を広げていきたいと考えております。 これまでの繋がりと、新しい取り組みのそれぞれのバランスを保って挑戦していくことが重要だと考えています。 それこそ、タオルは多くの業界と親和性が高いので、まだまだ開拓できる場所が多いと考えています。おぼろタオルは国内のみのタオルのシェア率で見ても1%もないと思いますので。

―国内の市場だけでもまだまだ、可能性は大きいということですね。

そうです。ただここもバランスは大事にしていて、おぼろタオルのことを広く知っていただきおぼろタオルのヘビーユーザーを地道に育てていきたいと考えています。大きな広告を打つよりも、一人一人のユーザーと深くつながり、みなさまから信頼を得られる会社として、続いていけるようにしたいというのが私たちのイメージです。

思い描く未来構想とビジョン

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(画像=おぼろタオル株式会社 素肌が微笑む)

―なるほど、がっちりと足元を固め、着実に成長していくというお考えですね。それでは、おぼろタオルの5年先、10年先の成長戦略や事業戦略についてはどのように考えておりますでしょうか。

5年という中期的な視点から見ても、この事業をどのくらいの大きさにするとか、こういう状態にするとかの大きなビジョンは定めていないですね。 私たちは適切な手段で利益を追求することが大切だと考えています。そのために、最大限リスクを抑え、確実な利益を確保できるような状態をつくることが重要だと感じています。

―なるほど、適切な利益を追求すると。

はい、それがなければ企業は続けられません。若い従業員を多く採用したとしても、労働条件の向上が実現しなければ結局は離れていくでしょう。私は多少遠回りしても、可能性の高い選択を選ぶようにしています。

―堅実な考え方ということですね。

はい、それが現実です。もちろん、理想的な未来像もありますが、それを実現するためには、働いているスタッフの条件を向上させ、商品の品質を上げ、お客様に満足していただくことが前提です。そのために、日々の作業を通じて、目の前の課題を一つ一つ解決していくことを大切にしています。

―最後に、会社の将来像についてお聞かせください。

地域に根差し、地域の方々、取引先、お客様からの評価の高い会社になりたいと考えています。我々もまだまだ道半ばですので、収益基盤を固め、今後の成長の地盤を築いていくために、日々前進していきたいと思っています。

―今回のインタビューを通して、正しく現状を捉えて、堅実に事業成長していくという、攻めと守りのバランスを大事にされていることが勉強になりました。ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

プロフィール

氏名
加藤 勘次(かとう かんじ)
会社名
おぼろタオル株式会社
役職
代表取締役