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(画像=リングロー株式会社)
碇 敏之(いかり としゆき)
リングロー株式会社代表取締役
1973年、北海道生まれの元漁師。高校中退後、ミュージシャンを目指し上京。2001年に有限会社リペアシステムサービス(現:リングロー株式会社)を設立。現在は「リングロー株式会社」と「一般社団法人おかえり集学校(※)」の2社の代表を務める。プライベートでは男児6人の父親。休日は専ら海の上で釣りに励み、自然界の厳しさと向き合うことで己の注意力や精神力を日々培っている。「じゃないほう」の考え方を軸としており、誰もやりたがらないものにこそ魅力を感じる。
(※)集学校・・・廃坑の再利用で生まれたIT拠点の名称
リングロー株式会社
2001年に有限会社リペアシステムサービスとして設立。2021年に創立20周年を迎える。主力事業は中古パソコンの販売・修理・買取。無期限保証が付いた中古パソコン「R∞PC(アールピーシー)」をはじめ、廃校活用の「おかえり集学校プロジェクト」を立ち上げるなど、斬新な取り組みで業界をけん引している。2023年、「おかえり集学校プロジェクト」は一般社団法人としてリングローより分社化。全国展開する集学校を販売・サポート窓口とし、全ての人が平等にITを活用できる世の中の実現に力を入れている。

起業に至るまでの経緯

―それでは、これまでの事業の経緯についてお聞かせいただけますか?

リングロー株式会社・碇 敏之氏(以下、社名・氏名略)::私自身は、もともと起業の意志はありませんでした。しかし、アルバイト先の会社から正社員に昇進して業務管理のポジションで働くか、業務を委託される企業として独立するか、二つの選択肢を提示されました。その提案がきっかけで、起業を決心しました。

―最初に事業を立ち上げたのは、どのような経緯からでしたか?

実は、会社から提示された条件は、当時アルバイトで働いていた30名ほどの業務を、月額800,000円で引き受けるというもので、その条件では収支が合わないと感じました。正社員として働く選択肢もありましたが、その会社の企業文化に馴染めないと感じました。

―それでは、どのようにして現在のビジネスに至ったのですか?

収支が合わないと感じましたが、その会社の業務を引き受けることに決めました。業務はリユースの事業です。私が事業を始めた当時は、まだ楽天も存在せず、ヤフオク!(旧名称:Yahoo!オークション)が始まるかどうかという時期でした。そのような時代背景の中で、インターネットを活用したビジネスを立ち上げました。

―だいぶ早いタイミングで起業されたと言うことで起業した時のエピソードを教えていただけますか?

実は、副業として通販事業を展開する場所を無償で提供してもらうことを条件に、なんとか起業したんです。当時、私が経営していた会社の月商は80万円だったので、それだけでは生活を維持するのは難しかったです。その会社はBtoBの事業を行っていましたが、私はBtoCの領域でインターネットを利用して販売を行っていました。当時、中古のパソコンはまだメジャーではなく、私はその機会を見つけて活用しました。安くて安心して使える中古のパソコンをもっと多くの人に知ってもらう為に自身の会社を組織化する必要がありました。

―その会社の組織化にあたり、出資のお話もあったとのことですが、それはお断りされたんですね。

はい、その通りです。私は自前で事業を通じて成長させたいと考えていました。そのためには、両方の会社が伸びることが条件でした。

―その特殊なきっかけから事業が始まったわけですね。

はい、その通りです。他の会社にはあまりない例かもしれません。多くの経営者が何かの志で企業を立ち上げる中、私はそのような志が全くなかったです。

―それは出し崩し的に事業を始めたという感じですね。ホームページを見ると、売り上げは順調に拡大しているようですが、一時的に停滞した時期もあったのでしょうか?

はい、その通りです。初期の頃は、一緒に働いていたメンバーと共に何とか食いつないでいくために必死でやってきました。やれることは何でも飛びついて売り上げを伸ばしてきました。しかし、その中で5年後、10年後、さらにその先にこの会社が何のために存在するのかを考えるようになりました。その結果、私が起業を始めたきっかけ、つまり安くて良いものを全国の人に届けたいという原点に戻ることを決意しました。

現在に至るまでの組織と事業の変遷

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(画像=リングロー株式会社 外観)

―最初に有限会社から株式会社へと変わりましたね。その過程で創業メンバーを役員にするなど、組織の変更が行われたとのことですが、それにはどのくらいの時間がかかったのでしょうか?

実際には、有限会社から株式会社へと変わるのに約五年かかりました。しかしその先を見越して、私たちはより正式な組織へと拡大したいと考えていました。

―組織を変革しながらも、主要な事業自体はあまり変えずに進めてきたという理解でよろしいでしょうか?

その通りです。私たちが扱っている商品は、主にリユースのPCです。それをインターネット通販を通じて、さまざまなプラットフォームに展開してきました。

―その結果、売り上げはどのように変化したのでしょうか?

売り上げは順調に伸びていきました。しかし、その一方で、荷物の出所が同じところに集中していることに気づきました。

―配送料を見直す過程で同じ場所に何度も出てくることに気づいたと伺いましたが、詳しく教えていただけますか?

配送料を見直していたとき、同じ場所への配送が何度も行われていることに気付きました。それが気になり、その配送先に問い合わせてみると、地方の業者でインターネットに展開するための写真撮影などが手間がかかるとのことで、直接取引を提案されました。

―なるほど、その後どのような影響を及ぼしましたか?

当初、私たちはインターネットで商品を販売していました。しかし、この経験を通じて、まだインターネットで商品を購入することに慣れていない消費者が多いこと、特に中古のパソコンをインターネットで購入することが難しいと感じる人が多いことに気づきました。そこで私たちは、全国の販売店に商品を供給することにしました。これにより、低コストで商品を届けることができ、消費者にも商品が届くようになりました。結果として、小売から卸売へとビジネスモデルを変えることになりました。

―なるほど、それは企業向けの販売よりも、販売店向けの販売を行っているということでしょうか?

はい、その通りです。私たちの場合、BtoBビジネスといっても、卸売りなので、主に販売店を対象としています。

販売店への進出を考えていましたが、商圏の問題で難航しました。全国に、直接事業を展開する方法を模索し、廃校になった学校をプラットフォームに商品やサービスを提供することを始めました。これにより、我々の販売チャネルが増えるわけです。

―なるほど、それはどのように展開しているのですか?

我々の商品やサービスは、商圏の制約を受けず、むしろ学校がサポート拠点として機能します。そのため、地理的にも直営店として運営するのに適していると言えます。

―少し素人的な質問かもしれませんが、その事業の採算性はどうなのでしょうか?

学校を利用することで、我々が新たな地域に進出しやすくなります。学校は地域にとって重要な施設であり、その数は限られています。そのため、地域の人々が集まる場所として、学校が再生することで地域の方々との距離感が縮まります。その結果、同業他社がいない地域では、我々が一人勝ちになる可能性があります。時間がかかるかもしれませんが、人口が少ない都市でも5000人のお客さんを自社の顧客として獲得できる可能性があるのです。

―価格競争や広告に力を入れるよりも、より安定した方針を取っているとのことですが、その理由を教えていただけますか?

時間はかかるかもしれませんが、私たちは価格競争や広告を増やすよりも、安定した方針が良いと考えています。

―なるほど、その方が資金を借りるコストも抑えられるということですね?

はい、その通りです。私たちは基本的に無料でサービスを提供していますので、回収を考えるとそこにも費用がかかります。

自社事業の強み

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(画像=リングロー株式会社 作業風景)

―次に、自社事業の強みについて伺いたいと思います。

我々は対面のビジネスにこだわっていまして、弊社の強みは保証制度です。以前テレビでも取り上げていただいたのですが、我々の保証制度は、本体とステッカーさえあれば、お客様起因の故障であっても修理や交換機といったサポートの対象というものです。画面が割れても、コーヒーをこぼしても、保証金は一切不要です。

―なるほど、それは非常に魅力的ですね。他のメーカーの保証制度とは大きく異なるようです。

そうですね。一般的に製品についている保証書の内容は、実際には保証されない事項が書かれていることが多いです。我々はそのような保証制度を排除し、本当の意味での保証を提供することで、ユーザーに安心して使ってもらうことを目指しています。

―それは非常にユーザーフレンドリーな取り組みですね。確かに、保証書の内容は、企業の利益を担保するためのものが多いですよね。

その通りです。我々は保証書なしの製品を展開しており、それがユーザーにとっての付加価値となっています。また、製品のクオリティや購入後のサポートにも力を入れています。これらの取り組みが、他の企業と差別化を図る強みとなっています。

―パソコンはどんどん進化していくものですから、長く使い続けるユーザーは少ないと思います。その点を考慮すると、無期限の保証を提供しているというのは、永遠に修理の依頼が来るというわけではないと言う事ですね。

その通りです。無期限の保証を提供しているといっても、それが永遠に使い続けられるという意味ではありません。ユーザーのニーズを見越して、適切なタイミングで新しい製品に買い換えてもらうことを想定しています。

―ある特定の時期からリングロー株式会社の業績が向上していますね。何か特別な理由があるのでしょうか?

実は、私たちが取り扱う製品が、保証サービスを充実させることによりパソコンの販売を事業としていない企業でも販売の取り扱いをされるようになったという点が大きかったと思います。

―つまり、卸売りの部分でリングローの強みが発揮されているということですね。

はい、その通りです。パソコンの販売を事業としていない企業でも、私たちの製品を販売していただけるというのは、大きかったです。

思い描く未来構想とビジョン

―次に、現在考えている未来のビジョンや、既存事業の拡大計画についてお聞かせいただけますか?

現在、私たちのホームページではまだ発表できていないのですが、リングローのリユース事業と、地方で展開している事業は、実は別々に運営しています。リユース事業はBtoBがメインで、卸売りを中心に行っていて、インターネットでの販売は積極的には行っていません。

―御社では、ソフトウェアエンジニアを含む技術の導入について、何か特別な方針はありますか?

特別な方針というわけではありませんが、例えば、これまで自社では取り組んでいなかった新たな挑戦に対しては、適宜メタ情報を活用して進めていきたいと考えています。特に小売業界での差別化は重要で、どれだけユーザーに合わせた商品を提供できるか考えています。

―なるほど、その差別化については具体的にどのような取り組みを考えていますか?

廃校活用においては、個々の自治体を単独で見ると人口が少ないところが多いのですが、全国展開していく中で集学校の集合体として考えると、実は百万都市規模になってきます。その中でITを活用し、各自治体がそれぞれの商品を購入するのではなく、集学校全体としてシステムを導入したり、商品を共有する形で提供できれば、コストも下げられ、無駄も少なくなると考えています。そういった新しい取り組みを進めていきたいと思っています。

―確かに、そのような取り組みなら大きな効果が期待できそうですね。それでは次に、ホームページの売り上げについてですが、前期に比べて少し縮小したように見えます。何か特殊な事象があったのでしょうか?

売り上げは確かに少し縮小しました。それには、新型コロナウイルスの影響と、当社の分社化が大きな要因となっています。

―新型コロナウイルスの影響とは具体的にどのようなものでしょうか?

新型コロナウイルスの影響で、半導体の供給が停滞し、新品が入荷しなかったことが大きな要因です。新品が入荷しないと、中古品を使い続けるしかない状況が生じ、それが売り上げの遅延と低下につながりました。

―なるほど、それと同時に分社化も影響しているとのことですが、その影響はまだ残っているのでしょうか?

はい、その影響はまだ残っています。ただ、1年か2年で再び回復していくと見込んでいます。我々の業界は世の中の動きに大きく左右されるため、そのような変動にも対応していく必要があります。

中長期に向けた事業戦略

―なるほど。では、5年後、10年後に向けて新たに取り組みたい事業は何かありますか?

私たちの商材がITデバイスなのでスマートフォンやパソコンはもちろん、キーボードのないデバイスも視野に入れています。

―テクノロジーが液晶からコンタクトサイズへと進化していく現代、リングロー株式会社はどのような取り組みを行っていますか?

私たちは常に世の中の動きに目を光らせ、先手を打つことを心がけています。そのプロセスが非常に楽しいですね。

未来に向けた現在の取り組み

―なるほど。未来のビジョンや新しい事業に向けて、具体的に何に取り組んでいますか?または、何に取り組もうとしていますか?

現在、私たちはDXの推進に力を入れています。集学校の事例が多いですが、ユーザーニーズをうまく捉えることが重要だと考えています。リモートワークなど、様々な変化が起きている中で、どのような支援がどのタイミングで地域に提供されるべきか、そしてそれがユーザーにとって最も有益なのかを設計し、提案することが重要だと考えています。そのために、私たちは自治体や地域住民に積極的にアプローチし、そのコーディネーターの役割を果たしています。

―なるほど。数百万、数千万の人々から信頼を得ることがビジネスチャンスというわけですね。

はい、その通りです。信頼を得ることが非常に重要だと考えています。

プロフィール

氏名
碇 敏之(いかり としゆき)
会社名
リングロー株式会社
役職
代表取締役