3月企業倒産件数は6カ月ぶりに増加するも低水準を確保した。ただ、低水準といっても3月の結果を見る限り、本格的な景気拡大によるものとは言い難い。今後、消費が戻れば内需主導の好景気による倒産回避も可能になる。企業倒産件数の動向から現状を分析する。


企業倒産は過去の好況時も下回る低水準

東京商工リサーチ(TSR)が発表した3月の全国企業倒産状況によると、倒産件数は一時的に増加したものの、引き続き水準は低いことがわかる。

負債額1,000万円以上の倒産件数は859件で、5.5%増加し6カ月ぶりに前年を上回った。それでも3月としては過去20年で、2014年の814件に次ぐ2番目に少ないレベルを維持した。

1980~2014年における各年の倒産件数の月平均を算出し、比べてみよう。円高不況の1985年が1568件、金融危機の1998年が1582件、ITバブル崩壊の2001年が1597件、リーマンショックの2008年が1304件と、1,300~1,600件程度。こうした不況時に比べれば、今は5~6割にとどまる低さだ。

バブル期の1990年の539件よりは多いものの、いざなみ景気と言われた2005年の1,083件よりは下回っている。

このように、現状の倒産件数は過去の不況時より大幅に少ないだけでなく、好況時を下回る場合もあるほど。一時的に倒産が増えても、長期的に見れば問題ないといえよう。


倒産回避の原因に課題

ただ、低水準といっても3月の結果を見る限り、本格的な景気拡大によるものとは言い難い。産業別では10のうち5つの産業で倒産件数が前年同月比を上回った。金融緩和による円安の恩恵を受けて製造業は前年比6.1%減、景気対策の一環である公共事業の前倒しの影響で建設業は同2.5%減と減少したが、原材料値上げによる仕入価格上昇で卸売業が同比27.3%増と悪化したほか、小売業で同7.8%増、サービス業などで同4.3%と、特に流通分野で破綻が増えた。

地区別で見ると、9つのうち4か所で倒産件数が前年を超えている。シェアが高い都市部うち、近畿は26.1%増と増大したものの、関東は5.0%減、中部は8.5%減と改善した。

だが、四国の25.0%増、九州の20.7%増に加え、東北が43.3%増と、地方での悪化が目立つ。TSRによると、東日本大震災関連の倒産が28件で2年11カ月ぶりに押し上げられたことが背景にある。

これらのことから見えるのは「金融緩和によるマネー増加と円安、公共投資に支えられ、都市部を中心に経営は維持される一方、コスト増や増税による内需低迷の影響を受ける流通や地方は苦しい」という実情だ。

もちろん、政策で企業経営を支援すること自体は重要である。しかしながら、自立的な景気回復の流れに移行し、それが地方まで波及しているとは言い難い点で、現状には課題が残るといえよう。


景気の本格回復による経営改善なるか

今後、特に消費が戻れば、内需主導の好景気による倒産回避という好ましい状況が達成される。消費増税から1年以上経過し、この先は徐々に増税の影響も薄れていくだろう。

消費動向調査の消費態度指数、景気ウォッチャー調査の家計動向関連の先行き判断DIともに、昨年12月からプラス転換した。それを受け、企業動向関連の同DIも12月から上昇が続く(3月除く)。これをふまえて消費や投資が伸びて内需が盛り上がれば、企業の売上増につながる。消費動向調査でも、1年後物価が上がると答えた人が80%を超える状況が続く。インフレは減益にもなるが増収にも貢献する。これを反映し、日本政策金融公庫の中小企業景況調査の売上見通しDIも、過去10か月減少より増加が多い。

今後、原油価格が上がればその分コストはかかるが、それでも利益が出るとみる企業は多い。公庫調査の利益水準別企業割合(今後3カ月の見通し)は、黒字が赤字を上回る状態が継続している。

こうした増収増益予測に加え、資金繰りもつけば経営は一層楽になる。公庫調査の資金繰りDIは昨年9月以降余裕度が高いが、金融緩和と業績改善が続けばこの流れは維持されよう。

政策支援を内需復活をつなげ、企業を取り巻く環境が一層上向き、経営破綻を免れるようにしていかなければならない。(ZUU online 編集部)

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