マクロ環境に関係なく生き残る企業は生き残る

ただ肝心なことは、業界全体の資金供給量や商売機会が減るだけで、優良企業は生き残り続ける。何度もネットの潮流を経験しながら、マイクロソフトもアップルもイーベイもグーグルもアマゾンも生き残ってる。

日本でも、ソフトバンクは株価が何十分の一になろうが、過去最高益を更新し続けているわけだし、2005年頃には注目の的だったサイバーエージェントや楽天だって、当時と比べて数倍の規模のビジネスまで拡大し、世界展開も本格化している。

このように、バブルが崩壊したら、全ての企業が潰れるわけではない。優良企業は生き残る。しかも、上記したように6年前後で次のブームが訪れる。そこまでに、また新たな潮流に乗る企業群が出現してるし、当時生き残った企業はまたマクロ環境の恩恵を全面に受け急加速する。


バブル発生時に気をつけるべきこと

このような話をすると、ネット起業家、特にシリコンバレーの人達からすると、マクロなんて関係ないって、自分らがいいもの創るだけだなんて言われるかもしれない。やはり、ネット系の起業家の人達にはこの発想の人が多いと感じた。心から尊敬するし、自分はその考え方が大好きだし、その気持ちがイノベーションに繋がるのだと思う。

たしかに、マクロ経済が良好だから参入するみたいな発想は、タイムマシン経営と同等の発想、いいものはどんな環境でも売れるし、そもそも新たな市場を創出しようとするのがイノベーションなわけで。

しかし、資金の流れだけは、変えられないという現実もある。資金が枯渇すればビジネスが周らないという現実がある。よくビジネスはヒト・モノ・カネだという話がある。当然だが、ヒトもモノもカネという対価と交換で手に入れるものだ。

個人的には、スタートアップは資金調達するなら急いだ方がいいと思っている。(実際にFacebook上場の5月を境にスタートアップへの投資額は急減している。)また、既に投資を受けることに成功した企業も同じペースで投資を受けられると考えて前に進むのは気をつけた方がいいかと思う。キャッシュフローに気をつけながら、少し余裕を持って進むべきだろう。

誤解を恐れずに、バブル期の資金管理の三原則を名づけると、

  • 早めに資金調達をしておく

  • 多めにキャッシュを確保しておく (固定資産等を現金化などもこれに当る)

  • キャッシュフローを注視する

となるだろう。

※3のポイントは不足の事態にB/Sが耐えられるか?であり、これは、自分らがしっかりしていればという話ではない。バブルが崩壊すれば、仕事の受注も減る。もちろん、取引先(特に売掛先)の倒産(=焦付き)等もありえるからだ。

ソフトバンクは何度も潰れかけた会社として有名だ。特に2008年に潰れてもおかしくなかった。当時のソフトバンクのCDS(クレジットデフォルトスワップ:破綻した場合の保険のようなもの)が急騰し、ソフトバンク破綻説が市場で流れていたのも記憶に新しい。2006年にLBO(レバレッジドバイアウトのスキームでボダフォンを買収した時の1.2兆円の負債が圧迫した。孫社長のビジネスを利回りで考える「事業リターン-返済金利」という考え方が仇となった例だ。

楽天だって、もしTBSを買収できていたら、2008年は財務体質的に危なかったかと考えられる。

このように、素晴らしいアイディアがあるのに、カネが不足し前進を阻まれるのは、箱根駅伝で区間記録を期待されている選手が脱水症状で途中リタイアせざるえないようなものだ。見ている方からしても非常に歯がゆいし、そのようなことは最低限理解しておいて欲しいと思う。

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photo credit: Ahmad Nawawi via photopin cc