中古マンション投資
(写真=PIXTA)

不動産投資家にとって、節税対策はもっとも重要なことの一つです。節税するには不動産所得をいかに少なくするかが問題になりますが、そこで多くの方が悩むのが「どこまでが経費になるのか?」ということです。今回は事業的規模でないサラリーマン投資家の方のために、中古マンション投資における経費の範囲・種類について解説しましょう。


節税でキャッシュフローを改善

中古マンションやアパートを取得して、そこからの賃料で収益を得る中古マンション投資は、今非常に人気になっています。書店にいっても中古マンション投資に関連する多くの本が出ています。しかし不動産投資初心者の方は、物件を取得するときの手続きや住民のトラブルへの対応などへ意識が向き、いざ確定申告するときになって節税のことを慌てて考えだすという人が少なくありません。

不動産投資において少しでも支払う税金を少なくするためには「青色申告」の適用を受けることが、まず第一歩になります。青色申告は利用するための承認手続きが必要であったり、収支内訳書にかわりに青色申告決算書を作成する必要があったりと、白色申告よりも手間がかかると思っている人が多いと思います。しかしどちらも帳簿をつける必要があることは変わらず、青色の方が税制上のさまざまな優遇措置を受けることができるため、節税に非常に向いています。

さて不動産投資で得た所得には所得税がかかりますが、不動産所得は

「不動産投資での総収入―必要経費=不動産所得」

という計算式で算出します。総収入とは家賃収入や礼金などです。つまり必要経費が大きいほど、不動産所得は少なく算出されます。不動産所得にかかる所得税は

「不動産所得×所得税率=不動産所得にかかる所得税」

という計算式で算出されます。所得税率は一律ですので、必要経費をどこまで含めるかによって納税額も増減するのです。しかし自分で勝手に判断して多くの出費を経費に計上し、それが認められなかった場合、あとから追徴課税する必要が生じます。そうなると余分な税金を納めなければなりません。逆にどこまでが経費になるか分からないからと少なく計上しても、損してしまいます。


事業的規模でない場合は「直接経費」のみ

現代の日本で中古マンション投資をしている投資家の多くは、会社員のかたわらで不動産投資を行なっているサラリーマン投資家です。そして多くのサラリーマン投資家は、所有する物件が「5棟10室」よりも少ない、事業的規模でない投資を行なっています。このような事業的規模ではない不動産投資の場合、経費として認められるのは直接的に不動産と関連する出費である「直接経費」のみです。具体的な直接経費については後に詳しくご紹介しますが、例えば物件の管理費や修繕費、減価償却費などがこれにあたります。

直接経費とはつまり、不動産投資に直接的に関わる経費なのですが、以下のような出費は事業的規模でない不動産投資には認められません。


①家事関連費の按分

自宅を不動産投資の事務所としても利用している場合、事業的規模ならば家賃や光熱費などが「家事按分」として経費に計上することができます。この場合、家の中の事務所スペースの面積の割合やコンセントの数などから、経費を家事按分して計上することができます。しかし事業的規模ではない場合、これは認められません。


②物件価値を上げるようなリフォーム費用

どこまでを修繕費に含めるかは、投資家にとって悩みどころです。原則的には物件価値を上昇させるようなリフォーム費用は経費にすることができません。経費にできるのは原状回復に使った修繕費用です。例えば外壁の塗り替えなどは意外と費用がかさみますが、原状回復ならば経費に計上できます。

物件価値を上げるようなリフォーム費用は「資本的支出」と言いますが、代表的なものは「用途変更のためのリフォーム」「物理的な付け加えや改造・改装(階段の取り付け、エントランスの模様替えなど)」のようなものです。資本的支出は一度資産として計上し、それから減価償却費として毎年経費計上していくことになります。


③ローンの元本部分

不動産投資を行なう多くの方は、銀行から一部の投資資金を借り入れて投資します。この借入金の返済額のうち、元本部分は経費として費用計上することはできません。利息部分のみ経費にすることができます。


不動産投資でかかる経費

経費として費用計上できる項目のうち代表的なものは以下です。


①管理費

中古マンション投資を行なう投資家の方は、物件の管理において「建物管理会社」や「賃貸管理会社」を利用すると思います。物件の日常的な保守管理や清掃、点検などを行なうのが建物管理会社であり、入居者の募集や家賃の集金などを管理するのが賃貸管理会社です。これらにかかる費用は、管理費として経費にすることができます。会社を利用しない場合でも、自分で行なった管理の費用はもちろん経費にできます。


②修繕費

物件の原状回復の範囲内で行なわれる修繕にかかる費用は、修繕費として計上することができます。例えば外壁の塗り替え、ドアの補修、畳の入れ替え、床の補修、換気扇の修理などです。どこまでを修繕費としてどこまでを資本的支出と区別するのかは難しいのですが、原則的に1つの工事にかかった費用が20万円以下ならば、修繕費として経費に計上して良いことになっています。


③修繕積立金

大規模な物件の修繕のために積み立てられるのが修繕積立金です。中古マンション投資の場合、物件取得時は利回りを安く見せるために修繕積立金が低く設定されていることがありますが、後に値上げされるケースが多いです。そうなると予想外の出費になりますが、この修繕積立金は経費に計上することができます。


④租税公課

投資用物件にかかる税金は、基本的に経費として計上することができます。経費に計上できるのは
・不動産取得税
・固定資産税、都市計画税
・印紙税
です。事業的規模でなければ事業税はかかりません。また所得税や住民税は経費にすることはできません。


⑤保険料

中古マンション投資では保険をかける投資家の方が多いと思いますが、保険には「損害保険」と「ローン保険」があります。火災保険や地震保険などの損害保険の保険料も、ローンが払えなくなったときに保証会社に支払いを保証してもらうローン保険の保険料も、共に経費として計上することができます。


⑥減価償却費

中古マンションの減価償却費は「取得価額」と「耐用年数」によって計算されます。近年の減価償却費の計算は「定額法」に限定されており、資産の償却率は定められています。取得価額にこの償却率をかけたものが減価償却費です。減価償却費も経費として計上することができます。


⑦ローンの利息部分

借入金の元本部分は経費にならないと解説しましたが、利息部分は経費として費用計上することができます。


⑧不動産売買時の費用

日常的にかかる費用ではありませんが、不動産を取得・売却したときの仲介手数料や登記費用などは経費に計上することができます。


⑨税理士などへの手数料

確定申告書の作成は税理士に任せている投資家の方が多いと思いますが、税理士に支払う手数料も経費として計上することができます。確定申告の手続きを依頼すると5万円〜程度の費用がかかりますので、これを経費にすると意外と大きな節税になります。


⑩その他

これ以外にも物件の管理のための物件までの移動費、不動産投資の勉強のための書籍購入費なども経費にできます。しかしどこまでが不動産管理と直接関わるかが明確ではないため、全額ではなく一部だけを申請することをお勧めします

以上中古マンション投資に関わる費用のうち、経費に計上できるもの・できないものをご紹介しましたが、これらの経費は賃料収入の3割以内に納めるのが目安と言われています。不動産投資が事業的規模でない場合は、経費に費用計上できる範囲に制限はありますが、充分に制度を使いこなせばかなりの節税対策ができます。しかし経費を計上しすぎて不動産所得を小さくしすぎると、今度は新たにローンを組むときに審査が下りなかったりすることもります。常識の範囲内で合理的な節税対策を行ないましょう。(提供: Leeways online )

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