◆道路インフラ劣化の背景-不十分な財源

米国の交通インフラに関する支出は議会予算局(CBO)によれば、14年度は連邦政府と州・地方政府を合わせて2,790億ドルである。そのうち、道路にはおよそ6割に当たる1,650億ドルが配分されており、最大の割合となっている(図表9)。もっとも、交通インフラの支出合計額を物価の影響を除いた実質ベースでみると00年代に入って減少に転じているほか、道路関連の支出の減少が顕著になっている(図表10)。

米国道路インフラ 図9-10

さらに、経済規模(名目GDP)でみた支出額の50年代からの推移をみると、道路インフラに対する支出額の割合は60年代の1%台後半から低下しており、足元では1%を割れる水準と、経済規模との比較で半分程度に削減されている(図表11)。

米国道路インフラ 図11

このように道路関連の支出は、交通インフラの中で最も高い割合となっているものの、実質ベースや経済規模との比較で削減されてきたことが分かる。一方、道路関連支出(資本支出、維持・管理支出)を連邦政府、州・地方政府(連邦政府からの補助金を除く)に分けて推移をみると、州・地方政府の割合は、00年から緩やかに低下しているものの、7割を超えている(図表12)。

米国道路インフラ 図12

これは道路の総延長のうち、連邦政府の補助により建設される道路が全体の4分の1程度に留まっており、州・地方政府が独自に建設や維持管理を行っている道路が多いためである。

50州の道路交通局を代表している米国全州道路交通運輸行政官協会(AASHTO)によれば(*5)、渋滞解消のために実行しないといけないが、未実施となっている投資が3,920億ドル存在するほか、道路の質改善のために必要な未実施投資額が2,370億ドル存在するとしている。さらに、将来の交通量の増加に対応するためには道路の資本支出を毎年1,200~1,560億ドル行う必要があると試算しており、現在の資本支出額(920億ドル程度)では必要な投資を行う上で不足している。

では、これらの支出を賄うための財源がどうなっているか確認しよう。道路支出の財源は、まず、州政府については燃料税に加え、自動車重量税や通行料を合わせた利用者負担の比率が6割弱となっている(図表13)。さらに、税金面で優遇された州債の発行による資金調達も2割を超えている。一方、連邦政府では、燃料税等の収入が5割弱となっているほか、一般財源(General Fund)が5割を超えていることが分かる。

米国道路インフラ 図13