連邦政府による道路関連支出は、もともと、燃料税収入を財源とする道路信託基金(Highway Trust Fund、以下HFT)で賄われており、00年までHFTの収支は黒字となっていた。しかし、01年以降に単年度収支が赤字に転落する中で、08年からは一般財源からの補填が行われており、ここまで一般財源の比率が高くなっているのは異常な状況と言える。

HFTは、全米の大動脈と言える州際道路の建設費用を捻出するために、1956年に施行された全米州際国防道路法(「連邦補助道路法」)に基づき設置された特別会計である。その後、1982年からは公共交通機関の建設費用の補助まで範囲が拡大されており、現在は道路勘定と公共交通機関勘定で構成されている。

HFTの財源は、主にガソリンやディーゼル燃料に課される燃料税であり、現在の税率は、ガソリン1ガロン当たり18.4セント、ディーゼル燃料1ガロン当たり24.4セントである(*6)。このうち、道路勘定にはそれぞれ15.44セントと21.44セント分が充当されている。

一方、HFT道路勘定の収支は、01年以降歳出が歳入を上回る状況が継続しており、同勘定の期末残高は00年の225億ドルをピークに減少し、07年の81.1億ドルから08年にはマイナスに転じる恐れが高まった。このため、08年に一般財源から76億ドル程度財政移転を行い、マイナスを回避した(図表14)。

米国道路インフラ 図14

しかしながら、その後もマイナスに転じかねない状況が継続しているため、ほぼ毎年のように一般財源からの財政補填が行われている。CBOは15年10月にHFTに対して何も対応を行わない場合には、道路勘定は16年度に期末残高がマイナスに転じ、25年度までの今後10年間の累計赤字額が1,080億ドルに上るとしている(*7)。

HFTの収支悪化の要因としては、歳入不足が指摘されている。これは燃料税の税率が93年以来、18.4セントに据え置かれてきたため、物価を加味した実質ベースでは減収になっているためである。実際、消費者物価ベースで試算すると実質購買力を維持するには直近で31セント程度の税率が妥当とみられる。CBOも将来の赤字を回避するためには10~15セントの燃料税の引き上げが必要と訴えている。

このような状況を改善するためには、物価を反映した税率の柔軟な変更が行える仕組みにする必要があると思われる。もっとも、今後ガソリン・ディーゼルから他の代替燃料への移行することや、燃費の改善などを考慮すると燃料税率の調整だけでなく、燃料税以外にも財源の多様化をする必要がある。