国別の人口増減が変える地政学的パワーバランス

第2に注目すべきは国別にみた人口増減のアンバランス。人口の顕著な増加は途上国に集中し、特にアフリカ諸国の多くでは人口が2倍以上となる。

現時点(2015年)での人口最大国は中国(13.8億人)、第2位はインド(13.1億人)。これが2100年にはインド(16.6億人)と中国(10億人)の順位が入れ替わる。米国(4.5億人)を抜いて第3位に台頭するナイジェリア(7.5億人)を含め、アフリカの5カ国がトップ10入りを果たす。この間、先進国で確実な人口増加が予想されるのは米国のほか英国、カナダ。いずれも、移民の流入やその出生率の高さが無視できない背景となっている。減少はEUメンバー国の大多数と日本、ロシア等。日本の2100年人口は約8300万人と人口研の推計(約5000万人)よりはるかに楽観的だが、それでも世界順位は30位と大きく後退する(2015年は10位)。

国別に見た人口増減のアンバランスが経済力の変化にそのまま直結しないとしても、世界の地政学的パワーバランスは大きく変貌せざるをえない。米欧日が先進国として世界経済をリードする時代がいつまで続くのか、逆に米国のイニシアティブだけが突出する恐れはないのか。

一方、アフリカが世界の中にどんな位置を占めることになるのかも重要な論点だ。貧困と暴力の温床になる恐れもある反面、ITの活用による教育の普及や、インフラ整備の進展が奏功する国や地域では。日本や中国が経験した「人口ボーナス」を追い風に新たな成長センターになる可能性もないわけではない。

もう一つ「バランス」の問題として無視できないのは、イスラム人口の持続的増加だろう。信者数でみる限り世界の二大宗教はキリスト教とイスラム教。それぞれ2010年における世界人口の31%と23%を占めるが、2050年はどちらも30%前後でほぼ拮抗する形になるという(米調査機関ピュー・リサーチ・センター、2015年4月発表)。イスラム教徒の増加が、IS(イスラム国)のような過激派集団の跳梁(ちょうりょう)を加速するとは速断できないものの、欧米主導の地政学的力学に大きな修正力が働くことは確かだろう。


世界全域に広がる高齢化の動き

第3の注目点として、これまで途上国の「人口爆発」をもたらしてきたのは過大な出生率とみられてきたが、今後は途上国の多くでも目覚ましい出生率の低下が起きると見込まれていることである。

人口増加をけん引するのはむしろ、世界的な平均寿命の伸びであり、この結果、世界の大半の地域で高齢化が進む。アフリカなどの途上国ではまだまだ若年人口の割合が高いこと、今後経済的発展の余地が大きいことを考慮すると、すぐに先進国と同様の社会問題に直面するとは限らない。しかし逆に、増加する途上国の若者達が、十分な教育、就職環境、政治的発言力を与えられずに不満を募らせていくとき何が起こるか。1960年代末の先進国がそろって経験した「怒れる若者の時代」が再現され、世界の不安定化につながることはないのだろうか。(ZUU online 編集部)

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