金融教育の目標と準備について、国の物事の進め方から見直すべき
ー「金融教育は国家戦略」という金融庁の提言について率直な感想をお聞かせください。
西尾先生
率直な感想として、金融教育は進める必要があるものの、国家戦略という言い方をすると失敗するのではないか?という不安があります。そもそも、どのようなことを国家戦略として実現したいのかが見えてきません。「投資を通じて、国民が多少資産を得られるようになったらいい」というフワッとした目標になりそうな気がします。
金融教育は対象の状況を踏まえたうえできめ細かくやらなければならない問題であるにもかかわらず、目標と準備が整っていないまま走り出してしまう不安感があります。それは金融教育の問題というより、この国の物事の進め方の問題かもしれません。丁寧に進めていけば成功すると思うので、色々な人の声を聞いて準備してほしいと思っています。
ー国家戦略としての金融教育という言葉が広まってきた現代において、学生だけでなく、より上の世代の金融教育に対する意識も高まってきているでしょうか?
西尾先生
そうですね。やはり講演を聞きに来てくれる人たちは、すごく意識が高いように感じます。好き嫌いにかかわらず、反応してくれるようになりました。肯定的な質問をしてくれる人もいれば、講演を聞きに来タ上で金融教育に否定的なスタンスから質問をする人もいます。
ただ、昔のように意識されなかった状況を考えると、今は意識されるようになったな、という印象がありますね。
ー大阪公立大学の金融に対する姿勢はどのような状態でしょうか?
西尾先生
大学としての姿勢は、はっきり言うとありません。大学・学部ごとに異なる教育目標、カリキュラムを持っているため、金融教育だけを意識して組み込むことは基本的にありえません。それが大学の目的ではないからです。
ただし、金融教育が大学の教養部分に入ることはありえます。教養には多岐にわたる知識が必要であり、その中に金融も含まれるといった考えが浸透してきている様子です。
愛知教育大学で私が担当した授業でも、教養の授業を自分で作り自由にやっていました。教員には単位認定権があるため、授業として設定した目標を学生が身につけていれば、単位を認定できます。大学は組織として金融教育に対するアクションが起こしにくいのですが、個人でなら多少は自由に動ける環境があるといえます。
一方、小中高だと学習指導要領に書いていることが基準になります。書いてないことをやろうと考えると、相当な工夫が必要です。