金融リテラシーにあわせた教育をー高齢者の金融資産も研究を進めたいー

ー西尾先生は国際金融の研究もされていますが、具体的にどのようなことを研究されているのでしょうか?

西尾先生
専門は、アジア全体の国際金融や国際通貨システムに関する研究です。国際通貨として世界中で、米ドルが用いられています。それこそ途上国のお土産屋さんなどでも、米ドルで支払える場合があります。なぜ他の国際通貨もある中で、米ドルが好まれているのか?そうした研究を長年やってきました。

研究を通じてアジアの国々を見ていくうちに、「それぞれの国の金融事情を知る必要があるな」と思い始めました。そこで、中国、インド、東南アジアの研究をすることに。最近は、中国やインドの比率が高い状況です。

中国やインドを見ていくと、デジタル化された金融の話がよく出てきます。そうすると「フィンテックも研究しないとな」とまた考えるわけです。現在はフィンテックを中心に、アジア全体の金融システムを研究をすることが多くなっています。

そうした自分のメインの研究を踏まえた上で、日本の金融教育を観察しています。日本でも、デジタル化の進展や高齢化、格差拡大、子供の貧困などが課題と言われていますよね。そのような状況下において、学校現場での金融教育への期待は高いのですが、実際には課題も多いことがわかっています。

例えば、大学生へのアンケートを通じて、専門や知識量など、人の状況に応じた教え方を考える必要があることが判明しました。また、教える側も金融教育に関する教育論を理解しておく必要があります。

ほかにも、高齢者の金融リテラシーと老後資産の準備状況に関係があることも、研究で明らかとなってきました。金融能力が高い人は準備できているのに対し、低い人は全然準備ができていない傾向が見えてきました。また、中間ぐらいの金融リテラシーがある人は、必要な金額を把握していないことが多いものの、準備は頑張っている、とか。高齢者の金融資産については、今後も研究を進めていく意向です。

「体験できる授業」を展開ー遊びから金融投資に興味を持ってほしい

ー最後に、金融について学んでいる学生や、これから学ぼうとしている学生へメッセージをお願いします。

西尾先生
大学で授業をするとき、実際にやらせてみたのは体験型トレードです。リスクを怖がってもいいと思うのですが、やってから、知ってから怖がってほしいというのが私のスタンスです。投資をするかどうかは個人の判断によります。やりたい人はリスクを理解してから投資するのが望ましいと思いますし、やらない人もリスクを明確化してからやらない判断をして欲しいんです。

学生時代には、自分の責任が取れる範囲で試しに遊ぶくらいしてもいいと思います。遊びから金融投資に興味を持ってもらえるといいですね。とにかく失敗を恐れず、失敗から学んでいくのも大切だと思います。