投資を始めるには、まず何をどうすればいいのでしょうか。じつは「投資先を選ぶ」といった行動よりも先に、やっておきたいことがあります。これから投資を始めようと思っている初心者の方に向けて、投資の始め方や基礎的な考え方について解説します。

目次

  1. これから投資を始める人がまずやるべきこと
  2. リスクとリターンの組み合わせで、投資対象を選ぶ
  3. 初心者でも取り組みやすい投資は?
  4. 投資はどうやって始める?
  5. まとめ:投資を始めるなら、まずは自分の家計や価値観について把握しよう

これから投資を始める人がまずやるべきこと

(画像= joyfotoliakid/stock.adobe.com)

投資を始めようと思っている人がまずやるべきこと、それは「家計の整理」です。「家計の整理と投資に何の関係があるのか?」と意外に思うかもしれません。しかし、投資を本格的にスタートして利益を上げるには業界や企業の分析が必要です。しかし、投資先の情報を分析し始める前に、まず自分のことを分析して把握しておくことは実は非常に重要なことなのです。

手持ちのお金のいくらを投資に回し、元手資金とすることができるのか。いつまでにいくらお金を増やしたいのか。そういった点を明確にしておくことで、投資先を選ぶときの基準がブレにくくなり、希望に沿った銘柄を選びやすくなります。

投資先選びの前に、次のような工程を終えておくのが理想です。

  • 手順1:貯金を色分けして投資に回せる金額を明確に
  • 手順2:家計を見直して元手資金を用意する
  • 手順3:投資の目的や目標について考えを整理する
  • 手順4:投資について学び知識を付ける

手順1:貯金を色分けして投資に回せる金額を明確に

投資の基本は「余裕資金を使って取り組む」ことです。余裕資金とは、なくなっても生活に支障をきたさないお金のことです。

切羽詰まった状態で投資に取り組むと、マイナスが出ることを許容できずに損切りのタイミングを見失ってしまったり、大きな利益を出そうとしてハイリスクな投資に手を出した結果、無謀なチャレンジをして大失敗してしまったりする危険性が高まります。

特に初心者のうちは、なくなっても気にならない程度の金額から少しずつ練習して、慣れてきてから徐々に拡大していくのがおすすめです。それを実践するためにも、まずはその「なくなっても支障をきたさないお金(投資に回せるお金)」がいくらあるのか、自分の家計を把握しておきたいところです。

「貯金額=投資に回せるお金」ではありません。いくら投資にまわしても大丈夫なのか、次のように考えて計算してみましょう。

・投資資金 = 現在の貯金額 - 日々の生活費にあてるお金
- 直近5年程度以内に利用することが決まっているお金(結婚資金や進学資金など)
- 緊急時や臨時出費に対応するためのお金

貯金額が同じくらいの人でも、収入や家族構成、今後控えるライフイベントなどによって投資に回せる金額がいくらあるのかが変わってきます。

手順2:家計を見直して元手資金を用意する

貯金が少ない人は、投資の前にまずは家計の見直しをして投資に回せる資金を作ることが先決です。すでに充分に貯金がある人も、元手資金はなるべく多いほうが効率よくお金を増やしやすくなりますので、さらに余裕資金を生み出すことはできないか考えてみましょう。

近年、若い世代を中心に「FIRE(Financial Independence and Retire Early)」という概念がブームになっています。これは、普段は倹約に努めて質素に暮らし、収入をできるだけ多く投資に回して運用することで、会社を早期に退職しても投資の利益だけで食べて行くことができる状態を作ることを指します。

これを目指す方にとっては、投資で利益を上げることと同じように普段の生活費を下げることも重要です。生活にかかるコストを下げるということは、生活水準を下げることとは違います。ひたすら我慢を積み重ねるような節約は長続きしません。

出費を見直すなら、食費や交際費よりも先に、住居費・スマホ代・保険料など家計の中で毎月一定額がかかる「固定費」を見直すのがおすすめです。これらは一度見直しておくだけで、普段の生活の質を下げることなく、その後長きに渡って節約効果が続くことが見込めます。

この機会に家計を見直し、無駄な出費になってしまっている部分を投資に回せるお金に変えられないか検討してみましょう。

手順3:投資の目的や目標について考えを整理する

手順1や2と並行して、「なぜ投資をしたいのか」という根本的な問いについて自分のなかで明確にしておくのも有効です。

「株主優待で今より少しお得な生活ができたらいいな」と考えている人と、「老後の資金を着実に用意しておきたい」という人、「できるだけ早く投資の利益で暮らせるようになって会社を辞めたい」という人では、目指しているところが違います。

投入すべき金額も取るべきリスクも、当然、選ぶべき投資先もまったく違ったものになるでしょう。投資の目的を考えることは、どんな投資先を選ぶのかにも直結します。

手順1や2で元手となる資金の金額がわかり、いつまでにいくら増やしたいのかという目標値が定まれば、何パーセントの利回りで運用すれば達成できるのか逆算できます。逆算できれば、投資先を選ぶときにその利益が見込めるかどうかで絞り込みをかけることもできます。

たとえば、10年後に1,000万円を用意したいという人の場合は次のようになります。

▽10年後に1,000万円用意するためのシミュレーション

  • 運用しない場合は、月8万3,400円の貯金が必要
  • 年1%で運用するなら、月7万9,300円で達成
  • 年3%で運用するなら、月7万1,600円で達成
  • 年5%で運用するなら、月6万4,400円で達成
  • 年7%で運用するなら、月5万7,800円で達成

こうした計算は、シミュレーションサイトで数字を入力するだけで誰でも簡単にできます。

【参考】金融庁:資産運用シミュレーション

基本的に、高い利回りを望むほど想定されるリスクも高く(ハイリスク・ハイリターン)、リスクを抑えるほど期待できる利回りは低くなります(ローリスク・ローリターン)。自分はどの程度のリスクを取れるのか、どの程度のリターンを得たいのかも考えてみましょう。

手順4:投資について学ぶ

最後の手順でしておきたいのが、投資について最低限の知識を得ておくということです。最近では、投資に関して詳しく解説されている書籍や雑誌、セミナーなど多様な情報源が安価で簡単に入手できる状況が整っています。また、お金をかけなくても、証券会社のWEBサイトなどで知識を得ることは可能です。

最初から投資に関する知識を完璧に習得するということは難しいので、まずは初心者向けの本を数冊読んでみるだけでも充分です。最低限、これから始めようとしている投資にどんなリスクがあるのか、それをできる限り抑えるためにはどうすればいいのかについては把握しておくようにしましょう。

それさえわかっていれば、「最初に大失敗をして大金を失い、もう投資に取り組むことができない」という状態にならずに済みます。負けずに続けていれば、一時的に運用がうまくいかなかったとしても挽回するチャンスはあります。

投資を「一発当てて終わり」のようなギャンブルにするのではなく、長期的に取り組める着実な資産づくりにするためには、正しい知識を付けて不要なリスクを回避することが大切です。

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リスクとリターンの組み合わせで、投資対象を選ぶ

これらの工程を経て、次はいよいよ何に投資するのか選びます。

何にどんな投資をする?

前段で考えた投資可能額や投資目的と照らして、どんな投資をしていくか考えましょう。投資先にはたとえば次のような種類があります。

  • ローリスク・ローリターン……定期預金、債券、保険など
  • ミドルリスク・ミドルリターン……株式、投資信託、不動産など
  • ハイリスク・ハイリターン……FX、暗号資産(仮想通貨)など

投資先は1つに絞る必要はありません。むしろ、いくつかの投資を組み合わせるほうがおすすめです。どんな投資先にいくらずつ投資するか、自分にとって最適なバランスを考えてみましょう。

初心者でも取り組みやすい投資は?

投資にはさまざまな種類がありますが、短期間で激しい値動きをするような投資や多額の元手資金を必要とする投資は、難易度が高いうえに取り返しのつかない失敗に繋がる可能性もあるため、初心者向けとはいえません。リスクを抑えた投資を心がけたいところです。

リスクを抑えた投資の鉄板ともいえる方法が「長期・分散・積立投資」です。数年、数十年といった長い期間に渡って、さまざまな投資対象に一定の間隔で決まった金額ずつコツコツと積み立てていくような投資を指します。

初心者のうちは特にこの「長期・分散・積立投資」を実践でき、少ない元手資金でもチャレンジできるものがおすすめです。具体的には次のようなものです。

ミニ株(単元未満株)

通常、株式投資では100株を1単元として売買します。ある企業の株価が1,000円だとした場合、100株を購入するのに10万円が必要になります。

しかし、証券会社のなかには、ミニ株(単元未満株)というサービスを提供しているところもあります。それを利用すると1株単位で購入することができます。先ほどの例でいうと、10万円が必要なところ1,000円で購入可能になります。つまりミニ株であれば、株価が高く、個人投資家にはなかなか手が出せないような銘柄も購入できるのです。

そして、元手資金が多くなくても、1万円程度の複数の銘柄をミニ株で購入するなどすれば分散投資にもなります。本格的に株式投資に取り組む前の練習や「お試し」のような感覚で利用できるメリットがあります。

個人向け国債

できるだけリスクを取りたくない、大きく増えなくてもいいから減らないことを重視したいという方には個人向け国債という方法もあります。国債は国が資金調達のために発行している債券です。「国債を買う=国にお金を貸している」ということです。

3年、5年、10年と期間が定められていて、債券を保有している間は利息が受け取れ、満期を迎えると元本が全額返ってきます。元本割れ(投資前よりお金が減ること)はなく、0.05%という金利が最低保証されています。個人向け国債は1万円から投資できます。

投資信託(投信)

投資信託とは、多数の投資家が出し合ったお金を1ヵ所に集め、それを運用のプロが株式や債券などさまざまな投資対象に分散して投資する商品です。自分で個別の銘柄を分析したり金額の割合や分散具合を考えたりしなくても、投資方針の合いそうな投資信託を選んで購入しておけばプロにおまかせできます。

一度設定しておけば、毎月決まった金額ずつ自動的に積み立てていく投資も可能です。購入するタイミングを図らなくても済みますし、証券会社によっては月100円から設定できるので気軽に試すことができます。

NISAやiDeCoの活用もおすすめ

これから投資を始めるなら、NISA(ニーサ)、つみたてNISA、iDeCo(イデコ)といった投資に関する税制優遇制度を活用するのもおすすめです。これらの制度を使えば、通常は約20%かかる投資の利益に対する税金が「非課税」になります。

投資はどうやって始める?

では投資先を選んだところで、どうやってそれを始めればいいのか、その手順について見ておきましょう。

金融機関を選ぶ

何に投資するのかを決めたら、それを扱っている金融機関を選ぶ作業に移ります。たとえば株や投資信託であれば証券会社が選択肢になります。外貨預金や個人向け国債は銀行でも扱っています。

金融機関ごとに、金利、手数料、受けられるサービスなどに違いがありますので、複数の機関を比較して選ぶとよいでしょう。

投資を始めるために必要な手続き

証券会社で投資を始めるなら、まずは口座開設の手続きが必要です。いつでもどこでもインターネットで手続きできる会社がほとんどです。マイナンバーや本人確認書類を手元に用意しておくとスムーズに進められます。

口座が用意できたら、投資用の資金を預け入れて、投資先を選択して購入の手続きをします。保険や不動産なら契約手続きが必要です。

手続きが無事に完了すれば、いよいよ投資家デビューとなります。その後は、値動きを見守りながら投資額を増減させたり投資先を見直したりして、自分が目指したい投資を実現できるよう実践していきます。

まとめ:投資を始めるなら、まずは自分の家計や価値観について把握しよう

投資に興味はあるけど何から始めたらいいのかわからないという方は、まず自分が投資資金としていくら用意できるのか、何のためにいつまでにいくら増やしたいのかを考えるところからスタートしてみましょう。

それが明確だと、何にどのように投資するか決めやすくなります。自分に合った投資先を探して、少額ずつトライしてみてはいかがでしょうか。

文・馬場 愛梨
所属・ばばえりFP事務所 代表
関西学院大学商学部卒業後、銀行にてクレジットカードやカードローン、投資信託などの金融商品を扱う窓口営業に従事。 その後、不動産会社や保険代理店での勤務を経て、独立。 お金にまつわる解説記事を数多く執筆。保有資格:AFP、証券外務員一種、秘書検定1級

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