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世界中の株式市場が波乱の時期を迎えている中、株安の状況を好機として、株取引に新たに参入を検討している人も多いでしょう。効率よく株取引ができるよう、株式の売買を始める前に知っておきたい取引の方法と世界のマーケットの動きについてみていきましょう。
東京証券取引所とは?
日本には札幌証券取引所、東京証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所の4つの取引所があります。中でも国内最大の取引所が東京証券取引所です。株取引に馴染みのない人でも、「午前の日経平均株価の終値は……」「今日の日経平均株価の終値は……」といったフレーズはよく耳にするのではないでしょうか。日経平均株価とは東証一部上場企業225社の平均株価で、国内株式市場の代表的な指標として知られています。
株の取引きができる取引時間とは
東京証券取引所に上場している企業の株式は、午前と午後に分けて株式の売買が実施されます。取引時刻は、午前は9時から11時30分まで、昼休みを挟んで午後12時30分から15時までとなっています。
週末のほか、祝日、年末年始(12月31日から1月3日)までは取引所が休みとなるため、株式の売買は実施されません。つまり、月曜日の9時から一週間の労働が始まる大半のビジネスパーソンと同様、株式の売買もこの時間からスタートするというわけです。
証券所による売買停止、ストップ高・ストップ安
基本的には、証券取引所がオープンしている間は自由に株式の売買が可能です。しかし、投資家の判断に重大な影響を与える可能性がある場合、東京証券取引所では売買を停止することがあります。最近の例では、2020年5月に、オンキヨー、ソニーファイナンシャルホールディングス、アークといった銘柄の取引が一時制限されました。
この理由としては、経営統合や公開買い付けに関する発表が行われたためでした。証券取引所の営業時間内でも、取引を希望する会社の株の売買停止措置が一時的に適用された場合は、取引ができなくなるため注意が必要です。
また、株式市場の混乱を避けるため、株価には一日あたりの値幅制限もあります。前日の終値を目安として、上限まで上がることを「ストップ高」、下限まで下がることを「ストップ安」といいます。
株の注文方法は?いつ、どのように取引ができる?
東京証券取引所が営業している時間は、通常は多くの人はそれぞれの仕事に就いている時間帯です。就業時間中にある程度の裁量が認められている場合を除いては、株の売買を仕事の合間にすることは困難でしょう。
また、株式投資をスタートしたての頃は、投資した銘柄の動きが四六時中気になって、スマートフォンなどでこそっとチェックをしてしまうものです。株の売買をするために、席を外してトイレや談話室でスマートフォンを操作していたら、本業の仕事にも悪影響が及びかねせん。
しがたって、株の注文方法について学ぶ必要があります。現在では、株価を映し出すモニターの前に、取引時間中ずっと張り付いて値動きをチェックしながら売買の注文をしなくても、株の取引は可能です。
まずは成行注文と指値注文を知ろう
株の主な注文方法は大きく分けて「成行(なりゆき)」と「指値(さしね)」の2つです。成行はまさにその名のとおり、成り行きに任せることになります。
例えば、A社の株を100株購入あるいは売却希望という注文を出せば、そのときの相場の株価で注文が成立します。成行注文の場合、株価の値動きが激しいと、取引を希望していた株価から乖離してしまう可能性もあるため注意が必要です。
こうした乖離を防ぐために活用したい注文方法が指値です。これは、投資家が希望する株価で取引を注文します。この方法では、株価がいくらのときに売買したいと指定できるため、希望どおりの価格で取引が可能となります。
この指値は、希望する株価まで到達しないと取引が成立しないため、有望な株を買い損ねたり、利益が出ているうちに売り損ねたりという事態に陥ることもあります。
こうした機会損失を避けたいのであれば、成行注文で取引を成立させてしまうのも一手です。いずれの方法にしても、注文の期限を当日中あるいは日付を指定することができるので、証券取引所が営業している時間帯に合わせて、画面操作をして発注する必要はありません。したがって、株の取引が実施されている間は、本業の仕事に集中しながらでも株取引は可能なのです。
夜間取引(PTS)を利用すれば開場時間外でも取引できる
成行と指値の注文そのものは証券取引所が開いていない時間帯でも可能ですが、取引自体は証券取引所の営業時間内に成立するという運びになります。経済ニュースに少し詳しい人であればご存じかもしれませんが、多くの上場企業は決算発表を15時以降に実施します。発表された決算で売り上げや利益が伸びるなど業績が好調であれば、翌日の株価上昇の後押しとなります。
一方、業績が低迷すれば株価下落へと圧力がかかる傾向があります。投資家としては、翌日の株価がどのように動くかハラハラさせられますが、実は企業の決算情報が公表されてから、翌日まで待たずに株を取引きできる方法も存在します。
この方法は、PTS(Proprietary Trading System)取引または夜間取引とも呼ばれるものです。
証券取引所が営業していない時間帯にどのように株の売買が成立するか疑問を抱かれるかもしれません。このPTS取引では証券取引所を介さずに株式の売買をするため、証券取引所の営業時間に取引が縛られないというわけです。
PTSは、私設取引システムにおいて株の取引を実施する仕組みです。取引が可能な時間帯は、取り扱う証券会社によっても異なりますが、午前8時20分から午後4時、午後4時30分から午後11時59分までというのが一例です。
PTS取引はどんなケースで有効か
この取引方法を使用すれば、証券取引所が15時に閉まった後に企業が決算発表した場合、仕事を終えてから就寝時間までの間に決算内容を分析して株の取引をすることも可能です。例えば、証券取引所の営業時間外に、A社が感染症に対するワクチン開発に成功したといったニュースが流れれば、A社の株は翌日、大幅に上昇する可能性があります。
証券取引所が開く前にPTS取引で夜のうちにA社の株を買っておけば、その後の株価上昇で利益を得られることが期待できます。また、B社の業績に大幅な影響が及びそうな大事故が夕刻に発生した場合、翌日の株価にはマイナス要因となります。もしB社の株を保有しているならば、PTS取引で株価が下がる前に売り抜けて損失を最小限にとどめることも可能です。
このような具合に、私設取引システムで多くの投資家が取引を実施していない証券取引所の閉まっている時間帯に株取引を実施すれば、ほかの投資家よりもはやく、損益をいち早く確定させることもできるでしょう。また、勤務終了後や勤務開始前の時間を使用することで、本業に株取引が影響を及ぼす心配も少なくなります。
PTS取引は手数料が安い
そして何よりこのPTS取引が魅力的なのは、その手数料の安さです。例えば、ネット証券大手のSBI証券では、証券取引所で株を売買した際にかかる手数料と比較すると約5%割安となっています。
10万円で株の売買が成立した場合、証券取引所を介した売買では手数料が90円(税込み99円)かかることになりますが、PTS取引では午前8時20分から午後4時までの取引であれば86円(税込み94円)、そしてナイトタイムセッションと呼ばれる午後4時30分から23時59分までの取引であれば手数料は無料となります。手数料の面からもPTS取引は活用する価値があるといえるでしょう。
世界中の証券取引所における株取引の動き
ここまでは東京証券取引所の取引を前提として説明してきました。このほか、世界各地のさまざまな主要都市で証券取引所が設置され、株式が日々活発に売買されています。世界の主な証券所は中国(上海)、英国(ロンドン)、米国(ニューヨーク)などです。それぞれの国とは時差があるので、日本時間での各証券取引所の営業時間が異なってきます。それぞれの取引所における取引時間(日本時間)と、東京市場との関係性をみていきましょう。
上海、ロンドン、ニューヨーク市場の取引時間
時差が比較的少ない上海の証券取引所は日本時間の午前10時30分から午後12時30分、午後2時から午後4時まで取引を実施しています。欧米の市場は、ロンドンは日本時間の午後4時から翌日午前0時30分、ニューヨークは日本時間の午後10時30分から翌日午前5時までとなっています(いずれも夏時間)。つまり、欧米の市場は東京証券取引所が1日の取引を終えた後から、その日の取引をスタートすることになります。
東京市場との相関性
グローバル化によって世界経済がますます結びつきを強める中では、例えばニューヨークの株価が下落したら、その流れを受けて翌日に東京証券取引所での株価も連鎖反応を見せるというケースも頻発しています。また、その逆もしかりで、先に開いた東京証券取引所で株価が大きく変動した場合に、ロンドン、ニューヨークの市場にも飛び火することがあります。
前述したPTS取引を活用すれば、夜中にニューヨークの証券取引所での値動きをチェックして、翌日に東京証券取引で相場が荒れそうだなという気配を感じたら、先に取引しておくという具合に活用できます。
したがって、売買する株が東京証券取引所に上場する企業のものだけだとしても、そのほかの世界の市場を無視することはできないといっても過言ではないでしょう。特に上場する株式の時価総額が世界最大のニューヨーク証券取引所での動きというのは、ほかの市場に与える影響が大きいため、日々チェックしておいたほうが投資には有益な情報ともなり得ます。
マイクロソフト、アップル、アリババの株が1株から注文できる
また、現在は米国やそのほかの国の株式を売買することも容易で、手数料も年々割安になってきています。特に米国株の場合、証券取引所は日本時刻の午後10時30分に開くため、就寝までを投資タイムとして割り当てて、リアルタイムで取引を実施することもできます。
東京証券取引所で株の売買をする際は、100株から取引が可能となっています。以前までは1,000株、2,000株単位もありました。2018年10月にこの単位が100に統一されたため、それまでの水準と比較すると少額から投資できるようにはなりました。しかし、株価の水準が相対的に高い企業への投資には依然として、ある程度のまとまった資金が必要となるケースもあります。
一方、米国株の場合、1株から取引が可能で少額からスタートできるので、投資資金が相対的に少ない場合でも入り口のハードルはそれほど高くありません。さらに、マイクロソフト、アップル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アリババ・グループ・ホールディングなど世界の名だたる企業がニューヨーク市場に上場して投資家からの資金を得ようと集まっているので、すでに馴染みのある企業を投資対象とすることもでき、特に投資の初心者にはどんな会社かわからない企業よりも、サービスや製品がよく知られた企業のほうが安心して株式の売買ができるでしょう。
分散投資という観点に立てば、日本国内企業だけでなく、グローバルに投資することがリスクの軽減にもつながります。本業の仕事中は株取引で惑わされたくないという場合には、時差をうまく活用して、米国市場を投資の主戦場とすることも選択肢の1つに成り得るでしょう。
為替相場もチェックが必要
企業の株価は、必ずしも自社の業績といった内的要因だけで上下するものではありません。感染症の流行やリーマンショックのように、外的要因にも大きく左右されます。その外的な要因の1つとして投資家も注目するのが「為替相場」です。
外国株投資に影響を及ぼす為替
一般的に海外に製品を輸出する日本国内の企業であれば、円安が進行した場合には製品の競争力が高まり、売上アップにつながることが期待でき、結果として株価の押し上げに働くことがあります。反対に円高が進行すると輸出製品の海外における価格が高くなり競争力を失ってしまい、売上にマイナスの影響を及ぼします。
また、海外での稼ぎが円高によって目減りするために業績が悪化するという例もみられます。このように、為替相場は企業業績にも大きな影響を及ぼすため、その動向をウォッチすることは、株価をチェックするのと同等に投資においてはキーポイントとなります。
24時間取引が眠らない、各国為替市場の取引時間
外国為替市場も株式同様に世界中の市場で取引されており、週末を除いて24時間休むことなく取引が実施されます。
まずは日本時間の月曜日午前5時にニュージーランドのウェリントン市場で1週間の取引の幕が開けます。その2時間後にオーストラリアのシドニーでの取引開始が続きます。したがって、東京の外国為替市場で午前9時の取引が始まる4時間も前に、各国通貨の取引がオセアニア地域からスタートしているというわけです。
仮に週末に為替相場に影響を及ぼすような出来事が発生した場合、東京の外国為替市場が始まる前にニュージーランドやオーストラリアで大きな変動をみせることがあります。その場合、前日に就寝する前にチェックした為替相場の水準から大きく変化しているということも珍しくありません。このため、9時から会社勤めや仕事をスタートさせる前に、その日の為替市場の動きをチェックすることも習慣付けたいものです。
世界最大の為替相場ロンドンは午後4時に取引開始
株の世界では、時価総額が世界で最も高い証券取引所はニューヨークの証券取引所ですが、外国為替市場規模で最大なのはロンドンです。そのロンドンでの取引は日本時間の午後4時に開始されます。取引量が多ければ、当然ながら為替市場の振れ幅も大きくなるため、ロンドンにおける外国為替市場の動きは世界の市場関係者から注目されます。
さらにロンドンに次いで日本時間の午後9時にニューヨークの市場が開き、翌朝までその取引は続き、また翌日にはニュージーランドの市場へバトンタッチするように、24時間休むことなく平日は取引が実施されています。
為替相場の動きが日本企業の業績に影響を及ぼすため、この情報もフォローする必要がありますが、海外企業の株式にも投資を検討している場合は、当然ながら円高であれば、株を購入する際には、手持ちの円資金が少なく済みます。また、すでに外国株を有している場合で、利益確定などのために売却を検討しているケースにおいても為替相場をチェックすることは重要となります。
為替の変動で利益はどれだけ変わるか
例えば、米国企業の株式を売却し、米国ドルの投資資金を日本円まで両替する際には、為替相場の状況によって為替損益も発生します。
1ドル=100円の際にニューヨークの取引所に上場するA社の株を10株1,000ドルで購入したとしましょう。株価が20%アップしたため売却しようとする場合、1ドル=100円の同じ水準であれば、手元に12万円(税引き前)がかえってきます。しかし、1ドル=80円の水準にまで円高が進行すれば手元に戻ってくるお金は9万6,000円(税引き前)となり、株価の上昇によって株そのものでは利益が出たものの為替相場の影響で元本割れという事態に陥ってしまいます。
一方、1ドル=120円まで円安が進んだ場合、14万4,000円(税引き前)と、株価の上昇に加え為替利益も上乗せすることができる結果となります。したがって、株価と同様、為替相場も世界中の市場で取引されている動きをしっかりとフォローできるかどうかで運用パフォーマンスが大きく変わってくるということが理解いただけるでしょう。
株取引に時間的な制約はなし
投資の世界は、まさに眠ることなく世界中の市場で取引が実施されています。2020年春の株式市場の大きな変動による株価の下落をチャンスと捉え、株式投資を検討している。しかし、仕事がなかなか忙しくて実際に株式投資ができそうにない、と考えている人もいらっしゃるかもしれません。
仮に、東京証券取引所に上場している企業の株に投資する場合でも、通常の業務時間中に株価が映し出されるモニターに座り、注文発注の操作をしなくても株取引は実現可能です。また、夜間取引を使用すれば仕事前や勤務後の時間を有効に使いながら、リアルタイムでさらに割安な手数料で株取引を実施することもできるようになっています。
投資の勉強や経験を積む中で、海外の株式にも興味が出てきたら、門戸は広く開かれていることに気がつくでしょう。特に、米国株は1株からでも取引が可能なため、投資資金が相対的に少ない20~~30代の若手ビジネスパーソンでも少ない元手でスタートすることができます。
このように、株式投資を実践するための環境がいろいろと整備されていることからも、忙しくてなかなか投資ができないと言っている場合ではなさそうです。割安となった株式相場のチャンスを生かせるかどうかは、株取引の仕組みを理解して一歩踏み出せるかどうかにかかっています。
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