“バイセル”はこの10月から木村佳乃さんを起用したCMでおなじみの、注目サービスだ。着物・切手など高価格帯商材を中心にサービスを展開しており、特に「全国での無料出張査定」に力を入れている。
サービスを利用している顧客は、50代以上のシニア層が75%を占め、自宅整理・遺品整理・生前整理による、査定依頼が全体の6割にのぼる。店舗に持ち込む顧客の手間を省きながら、顧客自身が気づかない“隠れ資産”にもリーチできる「出張査定」は同社の大きな強みである。
群雄割拠のリユース業界の中で、2019年に東証マザーズへ上場。急成長を遂げている同社が、鬼速PDCA導入に至った背景を、代表取締役社長兼CEO 岩田匡平氏、取締役副社長兼COO 谷口 雅紀氏、執行役員 販売戦略本部長 和田 裕介氏の3名に伺った。
導入のきっかけ
組織が急拡大するにつれて、感じ始めたジレンマ。
「できない理由を探すのではなく、できる理由を探す」組織にするため、もう1段ドライブをかけたいと思っていた。
株式会社 BuySell Technologies
代表取締役社長兼CEO 岩田匡平氏
鬼速PDCAを導入する前に感じていた課題について教えてください。
岩田社長弊社は人材戦略を成長戦略と位置づけて積極的に採用をしてきました。事業を伸ばすためのエンジンは「人」。事業を成長させていくためには、人を増やすことは必要不可欠です。今では弊社は850名のメンバーがおり、事業の成長を支える根幹を一人ひとりが担っています。
一方で、組織が大きくなると、どうしても組織が硬直化してくるということも実感していました。当たり前ですが、急成長によって、新しいメンバーが急激に増えれば、マネジメントする側に負荷がかかります。今まで通りにはいかないということに、すこしモヤモヤしていたところはありましたね。
また、経営会議も少しコンサバティブになってきていると実感していました。組織が大きくなれば、当然ながら目指すビジョンが大きくなります。それに伴ってステークホルダーが増えるので、メンバーは現実的なラインで目標設定する傾向があります。
それが間違いかというと、そうではない。けれど僕自身は「夢はバカでかく持っておきたい」というのがあって。必達できそうな目標を掲げて手堅くやっていくよりも、夢のような数字に向かってできることを一つずつ見つけていくほうが、本来的な成長組織だと思っています。
鬼速PDCAを導入したきっかけを教えてください。
株式会社BuySell Technologies
取締役副社長兼COO 谷口 雅紀氏
岩田社長岩田社長 私は現在の倍くらいの成長を目指して、社内へ高い目標を伝えつづけたいし、それを目指す組織であり続けたい。だからこそ、何かのタイミングで組織をもう1段ドライブさせていきたいと思っていました。
そんなときに紹介してもらったのが、鬼速PDCAエンジニアリングサービスです。私自身は『鬼速PDCA』の本を読んだことがあり、考え方に共感していました。例えば「KPIではなくてKDIで管理する」、「課題ファースト組織」、「課題がわかるまで“因数分解”する」など。考え方はシンプルですが、PDCAを実行するための方法論までがきちんとまとめられていて、実行しやすいと感じていました。
そのため、まずは全事業を管掌している副社長の谷口にどう思うか聞いてみたんですね。「これ、導入してみたいか?」と。
谷口副社長その時期、ちょうど弊社では組織改編を予定していました。岩田の課題感の通り、縦割りになったことで横の連携がとりづらく、硬直化してしまっていた組織を変えるというのが私のミッションで。そのためには、改めて経営目標をKGIに設定し、幹部全員が担当する各事業部のKGI、KPIの立て方を見直す必要があると感じていました。
鬼速PDCAエンジニアリングサービスは、組織で鬼速PDCAを回すための基礎を学びながら、幹部メンバーが経営のKGIを“因数分解”し、ブレイクダウンしていきます。事業ごとのKPIを再設定していくプログラムなので、今の組織が抱えている課題感を解消するためには良い機会になると思いました。それが導入のきっかけです。
導入後の変化
営業利益20億を目指すために、経営メンバー全員で“因数分解”する。高い目標への道のりが見えてきた。
実際に鬼速PDCAを受講してみていかがでしたか? 担当のPDCAエンジニアについての感想も教えてください。
谷口副社長講義で知識を習得することもあったのですが、1on1形式でPDCAエンジニアの方にコーチングを受けながら、「実践」できるのが良いところだと思いましたね。目標の数字をテーマにしながら“因数分解”していくことでPDCAが身につきますし、それをすぐに組織運営に活かせます。
また、エンジニアの皆さんとコーチング形式で取り組むことで、自分たちに見えていなかった視点に気付くことができました。さらに、弊社の状況を鑑みて進め方をアレンジしてくださったことも。全員が横並びで事業数値と組織課題の“因数分解”を一覧でみれるようになったことで、非常に理解がスムーズだったと思います。
岩田社長私は、幹部が自分たちのKGIを“因数分解”して共有する場に同席していたのですが、当時の目標として伝えていたのは「営業利益20億円」でした。これは、当時の弊社の規模からすると、とんでもない数値に見えたかもしれません(笑)。でも、それくらい大きな目標を仮にでも設定してほしかったんです。
実際に各部署がその数字を分解していくと「不可能な数字じゃない」と気づいていくんです。そうやって、一つひとつのKPIを少しずつ改善していけば、到達できない数字じゃないと分かる。それが“因数分解”の一つの醍醐味だと思いましたね。
株式会社BuySell Technologies
執行役員 販売戦略本部長 和田 裕介氏
実際に導入されてから、他にも印象的な内容があれば教えていただけますか?
和田執行役員今回のプログラムの中で、「資本と改善」という話をしていただいたんです。“成果を2倍にしよう”と思うと、つい投下する資本を2倍にするとか、特定のKPIだけを倍にすればいいと考えがち。でも、きちんと“因数分解”して、一つひとつのKPIを少し改善するだけで成果を2倍にすることもできるんです。この内容が私には一番刺さりましたね。
当時、営業利益20億と言われたら「いや、無理でしょ」という感じでしたが、分解すれば達成できると思えるようになりました。現実的な目標として認識できるようになったんです。実際、すでに目標を達成している部門もあります。以前とは違って「私たちならいける」と思えるようになりましたね。
谷口副社長当社は機能別組織で、お客様からの「買取」を担当する部門と、買い取った品物を「売る」部門に分かれています。本来“利益”を考えれば、互いのKPIは連携しているのですが、組織が大きくなるにつれて見えなくなっていました。
今回のプログラムでは、幹部全員が同じ場で「経営目標」に向かって課題を“因数分解”することに取り組めたので、全員がその構造を理解することができました。各部門で何が課題なのか、どこに注力すべきなのか、という幹部の目線がきっちりと揃ったように感じています。さらに、各部門の連携も非常にスムーズになりました。
鬼速PDCAの効果
“因数分解”を通じて、部門で取り組むべきポイントが明らかに。新規チャネル経由での売上は、6倍以上に成長。
鬼速PDCAを導入したことで、どんな変化が生まれましたか?
和田執行役員私の担当部門でも、良い変化が生まれてきました。PDCAエンジニアの皆さんと一緒に、担当部門を“因数分解”したことがきっかけです。事業モデル、組織モデルという形で問いかけを受けながら、どんどん“因数分解”していくのですが、やはり自分でやるのとは全く違いましたね。
自分だけでマインドマップを使う場合、どうしても自分のクセのようなものがあるんですよね。無意識のうちに、得意なところばかり集中して掘り下げてしまうんです。けれど「この観点はどうですか?」と質問されながら進めていくと、フラットに見れるようになっていく。因子の数がどんどん増えていき、注力するべきポイントを発見しやすくなりましたね。
私が担当しているのは、お客様から買い取らせていただいたものを販売する部門なのですが、当時は既存チャネルの売り先を管理することに大半の時間を費やしていました。なので、この課題の深堀りは自分でもかなりできていたと思います。けれど全体目標を“因数分解”でみたときに、新しい販売チャネルを立ち上げる方が、優先順位が高いことに気付いたんです。今まで見えていませんでしたが、実はそれが目標への最短距離だったんです。
それをきっかけに、当時やり始めていたライブeコマース事業に、自分の力を集中投下していくことを決めました。そのことで、当時数百万円程度の売上がこの3か月で6倍以上になり、順調な立ち上がりをキープしています。
一方の既存チャネルの売上が下がったのかというと、そんなことは全くありません。きちんと部下に任せて最低限のマネジメントだけで十分に機能しました。全体感が見えてきたことで、自分が本当に注力するポイントが分かったんです。課題を俯瞰できることは、本当に価値があると思います。
今後の活用
企業の事業成長に向けて、もう1段アクセルを踏みたい経営者に、鬼速PDCAエンジニアリングを勧めたい。
鬼速PDCAは、どんな企業や経営者に効果的だと感じていますか?
岩田社長私たちのような企業フェーズの会社には、鬼速PDCAエンジニアリングサービスが必要だと思います。創業してすぐのスタートアップだと、ある程度の強い痛みがあったとしても、チャレンジすることができますよね。私たちもそうだったと思います。
でも、今は数多くの社員を抱えているし、上場もしている。ステークホルダーがどんどん増えているからこそ、痛みを伴ってはいけないんです。加えて、大きな組織になってきて、どんどん経営から権限移譲がされていきます。そうなると、経営がすべてをコントロールすることが難しくなり、組織はどんどん守りに入っていくんですよね。
しかし、さらに高い目標へ向かっていく、成長を止めない組織であるためには、自分たちの意識をぐんとストレッチさせることが必要です。鬼速PDCAを導入し、トレーニングをしたことで、高い目標のために「できることを探せる組織」に変わってきていると思っています。事実、変化の激しい環境下でも、設定した目標に向けて堅調に成長できています。これは、幹部メンバーの意識が変わったからに違いありません。より大きな成長を目指す会社にこそ、鬼速PDCAを勧めたいと思います。