静岡県に本社を構え、建築事業や土木工事の分野で地域No.1の圧倒的な実績を誇る「橋本組」。千葉県でもトップクラスの総合建設会社「市原組」と共に、ホールディングス経営を推進している。さらなる事業拡大と新たな経営者を育成するため鬼速PDCAを導入。プログラムを受講した感想や、導入後の社内変化について伺った。
導入前の課題
「事業拡大で必要な新社長を育成したい」
建設業界を熟知したエンジニアが伴走サポート。
鬼速PDCAを導入する前に感じていた課題はどのようなことでしょうか?
橋本社長現在進めているホールディングス経営において、新たなエリアへの進出も予定しており、その際には新たな経営者が必要になります。そういった場面で活躍できる人材を今まで十分に育てることができませんでした。企業のトップである自分と同じ指針を持って、その場その場で柔軟に状況判断してくれる人間を育てない限りは、安心して仕事を任せることができないと感じていました。
今後さらに会社が大きくなると目が届かないところが増えていき、最終的には破綻してしまうことが分かっていたので、早急になんとかしたい。私たちのホールディングス経営と新たなビジネスを進めていくために、新社長の育成は専務との間で重要な課題だと捉えていました。
鬼速PDCAを導入した経緯について教えていただけますか?
橋本社長弊社では元々、全社一丸となって推進していた仕事の進め方がありました。それが、“高速”PDCAだったのです。そのためPDCAの基本となる考え方は知っていましたが、鬼速PDCAについて調べてみると、これは提供しているシステムやサービス自体にも価値があることが分かりました。
私がそれまで知っていたコンサルティング会社では、アドバイスをするけど実際の運用や結果までコミットしない会社が多い印象でした。それに対して、鬼速PDCAは建設業界に知見のあるエンジニアが、PDCAの仕組み作りまで実行支援してくれるのが魅力だと感じました。
ただ、導入にあたっては弊社に鬼速PDCAが根付くのかどうか気になっていました。それを聞いたエンジニアの皆さんは、導入後にPDCAを継続するための「仕組み化」について分かりやすく説明してくれました。専門的なエンジニアが仕組みを作るところまで伴走してくれるので、システムとしてスムーズに活用できることが分かり、安心することができました。
また、担当エンジニアの方が我々の建設業界のことを非常によく理解していて「一を聞いて十を知る」というようなスピード感がありました。因数分解でどれくらいの数の因子(項目)が出てくるのかも事前に教えていただいたので、これなら安心して任せられると感じて導入を決めました。
鬼速ストラクチャリングのプログラムを開始したのは、建設業界の繁忙期である年度末だったので、一部のメンバーから「なぜこの時期に?」という話もありましたが、忙しい時ほど時間を効率化し、大きな効果を発揮できるというのが鬼速PDCAの考え方です。事業拡大でさらに忙しくなることも考えられるので、今後の成長のために「今しかない」と決断しました。平常時とは違って、ある種の緊張感をもってスタートできたのかもしれません。
導入後の変化
無駄な会議を劇的に変えた「課題解決型ミーティング」。
導入からわずか2か月で新規受注を生み出す。
株式会社橋本組
代表取締役 橋本 真典氏
鬼速PDCAの講義を受けてみての感想を教えていただけますか?
橋本社長
今まで受講したことのある研修では「あと15分もある」などと長く感じることが多かったのですが、鬼速ストラクチャリングの講義は毎回の1時間が本当にあっという間でした。私を含めて幹部6名が受講したのですが「もっと延長して欲しい」と他のメンバーも話していたほどです。
内容が凝縮されていると感じましたし、集中して学べるのは良いことだと思います。事業と同様に限られた時間の中で一定の成果を出さない限りは、意味のない時間になってしまうと。その部分でも集中して取り組めたのは、すごく良かったなと感じています。
エンジニア派遣では、社内の課題を因数分解させていただきました。
それについて印象に残っている内容を教えていただけますか?
橋本社長なんといっても課題ファーストという考え方ですね。弊社は失敗を恐れずに挑戦するマインドで常に成長してきたのですが、施策を十分に仮説検証せず進めることもありました。今思えば当たり前ですが「何が原因なのか?」と課題を深掘りすることなく、解決策ファーストで方法論に走ったとしても、絶対に正解へたどり着くわけがありません。
そうではなく、本当の課題は何なのか課題ファーストでしっかり把握して、それを一つひとつ順番に鬼速PDCAで潰していけば、残りの部分にきっと答えがあるはずだということを学びました。無駄な時間を使わない、非常に洗練されたやり方だと思います。
導入から2か月ですが、この課題ファーストの考え方を活かして、民間工事の営業では受注へ結びついたこともあります。結果に結びついたからといってそれで終わりではなく、残りの課題にも取り組みながら、全てを解決するまで鬼速PDCAを回していかないと意味がないと思っています。
社内会議については「課題解決型ミーティング」を設計させていただきました。
導入前と比べて、どんなところにメリットを感じていますか?
橋本社長導入前は普段の会議でとにかく無駄な時間が多くて…。社員の意識を高めるため、会議の目的や方法を書いた紙を貼ったりするなど、改善の努力をしていたのですが全く上手くいきませんでした。「課題を解決するために会議を行う」という意識が、ほとんどなかったのだと思います。テーマが明確ではなく、時間だけが過ぎていくこともありました。どんなに良いシステムを作っても、いつの間にか活用されなくなってしまうといった問題について、社内では「これは私たちの文化だよね」と諦めのような言い訳をしていたんです。
そんな現状を聞いたエンジニアの皆さんは、弊社の会議の問題点をはっきりと指摘してくれました。「それは会議のシステム運用ではなく、システムそのものに問題があります」と。そこから私たちと一緒に今までの会議を分解して、課題解決型ミーティング(以下、MTG)に切り替えていきました。
改善策として具体的には、それぞれのMTGのKGIを具体的に設定。事前にアジェンダ(議題)を決めて話し合う内容を明確にし、思考プロセスを説明しやすいMindMap(マインドマップ)を使うようになりました。さらに資料の共通フォーマットや、参加人数の制限(最大5名)など、MTGを運用する上でのルールを明確に決めています。MTGが変わったことで意思疎通のスピードが劇的に高まり、決定までの時間が大幅に短縮されました。
ホールディングス経営について話し合う場面も、課題解決型MTGに切り変わっています。始まった瞬間から課題について話しあえるので、方針を決めるまでの時間がかなり短縮できたと実感しています。お互いの考え方をMindMapで正確に共有できるので、後で確認する二度手間が発生しにくいことも大きな利点です。
鬼速PDCAの効果 ①
半数以上の社員がマインドマップを活用。
ホールディングス経営も可視化して最短距離を設計。
株式会社市原組
専務取締役 橋本 和記氏
市原組の代表も務めている(橋本組)橋本専務から見て、鬼速PDCAの効果はどんなところに感じていますか?
橋本専務私が最も価値を感じているのは、MindMapを使った課題の“見える化”ですね。今までは、社内のメンバーとの間で目指す方向に合意が取れていても、それを各論に落とし込んでいくと動きが止まってしまうことがありました。大きな方向性は賛成だけど、詳細な部分を詰めていくと少し考え方がずれているとか。そういう部分に課題を感じていたんです。
MindMapを活用するようになってから合意形成での誤解や勘違いが無くなり、正確性が何十倍にも高まっています。MTG用の資料作成でも、今まで2〜3日かかっていた作業が、当日や翌日にはできてしまう。そういった面での効果は非常に大きいと感じています。
現在グループ内の270名を超える社員の内、半数以上はMindMapを使うようになりました。社員の間で課題や業務内容を可視化できるので、ネクストアクションにもすぐ動き出せるようになりましたね。これをやってみて駄目だったら次はこれをやろう、などPDCAをどんどん回すことができます。
ホールディングスの経営会議でも、同じ研修を受けた社長と幹部6名がMindMapを活用しているので、非常に事業推進のスピードが早いですね。今までも橋本組と市原組の強みを持ち寄って伸びていこうという意識はありましたが、具体的な施策の段階になってみると方向性が違っていることも…。それを防ぐために因数分解で項目を“見える化”することが重要ですね。優先順位がきっちり決まって、PDCAをどういう風に回していけばいいのかも非常に明確になります。
社長がMindMapを広げて説明することもありますが、キーワードをどんどん表示できるので、トップの考えやイメージが以前よりもぐっと伝わりやすくなったように感じています。今までの資料では、キーワードがポツンとあって、その説明を全て口頭で行っていたので。それに比べて今は、説明の一語一語を打ち込みやすく、考えやアイデアの可視化が非常に進んだように感じますね。
鬼速PDCAの効果 ②
“リミッター外し”の思考法で事業責任者が成長。
5年で10億円の目標に向けてロードマップを描き出す。
鬼速PDCAの“リミッター外し”の思考法を、社内で活用されているとお聞きしたのですが。
橋本専務今までは現実路線で考える癖があり、思い切って振り切れないことが多くありました。しかし、“リミッター外し”を知ってからは、現実だけではなく少し先の未来でどんなことができるかなど、限界を振り切ることを意識しています。物事の結果についても、最大の成功と失敗の両極端を考えるようになりました。そうすると最適な落としどころが見えてくるんです。
社員と1on1で面談するような場面でも、自由な発想で意見を出してもらうように働きかけをしています。現実だけにとらわれず「この技術が進化したら、こんな風に事業展開できるよね」など。それで刺激を受けて、今までにないアイデアを出してくれるメンバーもいます。
例えば、今回の研修を受けたメンバーではないのですが、住宅事業部に就任した新たな責任者。彼のリミッターは完全に外れていますね。新規事業にもかかわらず「5年後に10億円」というKGIを設定しています。かなり大きな目標なのですが「絶対にやり遂げます」と。MindMapでロードマップも構築しており、なかなか気合が入っているなと感じますね。
橋本社長は、社長候補の育成についても効果を感じていらっしゃるそうですね。
橋本社長そうですね、新たな経営者を育成することについては「社長候補の選択基準」を深掘りできたことが、大きな収穫だったと感じています。
例えば、バランスシート(貸借対照表)やPL(損益計算書)を見て経営の判断ができることは、経営者の「必要条件」ではありますが「十分条件」ではないことに気付くことができました。やって欲しいことを可視化しておかないと、その社長候補に選ばれた人間は「私は何をすればいいの」と戸惑うのではないかと。
一昔前であれば「立場が人を作る」という考え方もありましたが、現状それでは間に合いません。最初からプロ社長として経営してもらわない限りは、仕事の質がどんどん薄まってしまって、最終的には組織の崩壊につながってしまいます。MindMapによる“見える化”は、事業や課題の可視化だけではなく、弊社にとって必要な社長像を明確にする上でも、大きな気付きを得られたと思っています。
今後の活用
2022年に総工費8億円の新社屋が完成。
さらなる成長で鬼速PDCAを日本全国へ広めていきたい。
現在、鬼速PDCAは社内へどのように根付いているのでしょうか?
橋本社長普段会話をしている時に「ここは“鬼速”でやらなきゃいけないよね」といった感じで、自然に”鬼速”という言葉を口にするようになりました。社員同士の意思疎通を促し、弊社の文化として鬼速PDCAが定着してくれたので、導入して非常に良かったと感じています。
また、“リミッター外し”の考え方で、若手がどんどん成長していることも嬉しいですね。この思考プロセスを多くのメンバーが実践することで会社の風土として根付き、新たな社長候補の育成にもつながっていくのではないでしょうか。
そして、弊社の成長だけではなく、この鬼速PDCAという考え方が日本全体に広まってほしいと思います。例えば、日本には大事な決定を先送りにする文化があるように感じています。本当に重要なことを決めなきゃいけない会議なのに、出席だけで終わってしまったり…。それを解消する一つのツールとして、この鬼速PDCAはさらに活用されるべきだと考えています。
私も鬼速PDCAの良さを周囲に伝えていこうと思っています。ただ、実績がないと人間は信用しないので、説得力を持たせるためにも弊社のビジネスの飛躍的な成長を目指していきます。2022年の新社屋完成と合わせて、1年以内のさらなる成長をご期待ください。