高品質なケール青汁で国内の健康食品市場を開拓してきたキューサイ 社。「青汁の会社」というイメージから脱却するため、創業55年目の2019年に企業ロゴとコーポレートスローガンを刷新。顧客のしなやかな生き方を支え続ける会社を目指して、新規事業をスタートさせている。
その主力となっているのは、生命力あふれるケールのパワーを生かした新スキンケアブランド「Skinkalede(スキンケールド)」。多くのリピーターを持つエイジングケアブランド「コラリッチ」に続く第2のスキンケアブランドとして、新たな顧客層の獲得を目指している。
キューサイ社のリブランディングを推進してきた代表取締役社長 神戸 聡氏と、上席執行役員 岡田 豊二氏に、鬼速PDCAを導入した経緯や実際の効果について伺った。
導入前の課題
保守的な現状維持バイアスを捨て去り、最適なKPIを設定できるようになりたい。
鬼速PDCAの導入前に感じていた課題はどのようなことでしょうか?
キューサイ株式会社
代表取締役社長 神戸 聡氏
神戸社長弊社は創業から55年を超えていることもあり、どうしても現状を維持しようとする「保守的」な思考になりがちです。「保守的」は決して悪い言葉ではないですし、コツコツと確実に改善を続けていくことはとても重要です。
事実、弊社の社員はとても真面目なので、“足し算思考”ともいうべき地道な努力で改善活動を続けてきました。その取り組み方を否定するのではなく、何かスパイスを加えて“かけ算思考”ができるようになってほしい。あるいは“かけ算思考”に挑戦することを恐れない会社にしていきたいと考えていました。
しかし、私が「かけ算思考を取り入れよう」と社員に言ったら、自発的な取り組みではないので現状維持バイアスが掛かってしまいます。そうではなく、みんなが積極的に「必要だからやってみよう」と取り組んでくれたら、もっと大きく組織が成長できるのではないかと思っていました。
事業目標に対して各自が創意工夫をし、確実に成果を積み上げる。その達成感や幸福感を味わえれば、個々のメンバーがもっと伸び伸びと働くことができ、組織が好循環で回っていくのではないかと考えていました。
上席執行役員の岡田さんは、どのような課題を感じていましたか??
キューサイ株式会社
上席執行役員 岡田 豊二氏
岡田氏私が営業マーケティングを統括するようになったのは2020年1月からなのですが、詳細なデータを見てみるとKPIがさほど悪くないのにKGIが落ちてしまうということが、何度か続いていたんです。そのため、目標設定の部分に誤りがあるのではないかと思うようになりました。
もちろん社内のメンバーとKPIについて色々話しましたが、明確な打開策が見つかりません。KPI自体を見直すことも検討していたのですが、答えが出ないまま時間だけが過ぎていきました。今までのKPIが全て悪いとは思いませんが、KGIにつながらず工数だけかかっているのであれば、別のKPIを設定した方がいいということも議論していましたね。
導入の決め手
部門を横断した事業推進で全社を“かけ算”思考へ。
鬼速PDCAの「改善の仕組み」なら実現できると確信。
鬼速PDCAを知ったきっかけについて、お聞かせください。
神戸社長
最初に知ったきっかけは、Facebook広告だったと思います。その時期は翌年の事業計画を作っていこうとするタイミングだったので、鬼速PDCAの戦略設計に興味を持って勉強会に参加させていただきました。
そこで印象に残っているのは、KPIについての内容です。今は弊社を含め多くの会社でKPIを設定し、PDCAを回していると思います。しかし、KPIがあるとはいえ、事業計画を達成できていなかったら設定したKPIに問題があるのではないかという話ですよね。
そもそも、事業計画の目標は「達成するのが当たり前」という感覚があるんですよ。立てた目標を達成できないとすれば、PDCAの回し方やKPIの設定の仕方に改善ポイントというか伸びしろがあるのではないかと感じていて。鬼速PDCAは、まさにその部分を深掘りして解決案を出してくれるんじゃないかと思いましたね。
岡田氏弊社の課題として、長年追いかけてきたKPIが本当にKGIにつながってないんじゃないだろうかとか、業績向上のためにはこれだけのKPIで本当にいいのかとか、そういうことに課題を感じていたということですね。そのタイミングで出会ったのが鬼速サービスです。
私もKGIに大きく影響を及ぼす弊社のKPIが、現在どういう状況なのかを知りたいと思っていました。それに加えてKGIとKPIの関係や、KPIを具体的な実務(KDI)に落としこむ方法についても興味がありました。
導入の決め手になったのは、どのようなことでしょうか?
神戸社長
鬼速PDCAは、課題の因数分解で「重要課題」を発見していきますが、それまで私がやっていたPDCAは表面的な部分(上記図の「よく起こりがちなPDCAサイクル」)だけだったことに気付かされたんです。つまり、PDCAを回しているといっても、本当の意味で改善活動を進められていないことが分かりました。
“鬼速”のプログラムでは、PDCAを最適な仕組みで回しながら、KPIと連動させるところまで行うことができます。しかも、それを構築して終わりではなく、改善のための「持続可能な仕組み」を作ることも。弊社の現状に当てはめて導入後を想像した時に、各部門をつなぐイメージや全体像が見えたという感じですね。
例えば、オートメーションツールを導入することは、作業効率を高めることにつながりますが、当然ながら各部門をつなぐことには貢献できません。全社のマネジメントを担当する私にとっては、部分最適化ではなく全社を効率化することが重要な役割です。
それぞれの部門のミッションが、どのようにつながって最終的な数字につながっていくのか。それを設計するためにも、営業部門やEC販売部など複数部署に幹部育成のプログラム(ストラクチャリング)を導入しました。部門横断で事業を推進することによって、今までとは違う “かけ算思考”に発展できると確信できたことが導入の決め手です。
鬼速PDCAの効果
メンバーが自発的に課題発見できる組織へ成長。アクティブな顧客数を把握できる新たなKPIを見つけ出す。
鬼速PDCAのプログラムで印象に残っているのはどんなことでしょうか?
岡田氏特に印象深いのは、時間管理や担当者の役割分担など業務の標準化についての内容です。PDCAを突き詰めていくと、目標達成だけではなく業務の効率化にもつながるというのが驚きでした。組織でそれぞれのPDCAを回すことによって、効果が最大化されると感じましたね。
神戸社長私が印象的だったのは、MindMap(マインドマップ)で課題や目標をどんどん“因数分解”していったときのことです。今までKPIとして置いていなかった重要な指標を見つけられたことが印象に残っています。他にも、弊社のビジネスモデルの中で何に注力できていないのか把握できたことが良かったですね。
例えば、研究開発の部署では、ヒット商品を生み出すためにどれだけの商品リリースが必要なのかなど、”因数分解”を通じてさまざまな課題を掘り下げることができました。それに対する解決策についても、標準化して現在取り組んでいます。
また、それらのプログラムを通して、社員の態度に変化が生まれたことも非常にうれしいことです。「これはやらなくちゃいけない」と積極的に取り組むメンバーや、「本当に追わなくてはいけない目標が分かった」というメンバーの声を聞くことも。受け身ではなく、彼らが自発的に部署の課題を発見することが多かったのではないかと思います。
導入後の効果については、どのように感じていらっしゃいますか?
岡田氏一言でいうと、KPIを変えられたことですね。このKPIを達成すればKGIが上がるという非常に明確なKPIを全社統一で設定することができました。それまでは部門別にKPIを設定し、各部門でそれぞれ数字を追っていたんです。
鬼速PDCAによって、一つの事業のKPIを全社で追うようになるなど部門横断のつながりが出てきました。単価についても、購入単価や購入回数に分けて考えたりしながら、最適なKPIを設計できるようになりました。
私が特に良いと思ったのは、年間予算ではなく直近一年間の移動合計で見ることです。予算と実績で判断するので年度で区切るよりも実態が見えやすく、期中でも改善策を講じやすいと感じました。その考え方をさらに社内でブラッシュアップして、最終的には当月のアクティブ顧客数を追える最適なKPIを設定できています。
「ようやくその答えにたどり着いた」というような、ある種の達成感があったので、KPIについてすごく値打ちがあったと思います。プログラム中に弊社の体制が変わりましたが、新たなガバナンスで自社の事業や業績の成り立ちを説明する際にも、そのKPIを活用させていただきました。
神戸社長新体制での導入効果は私も感じています。鬼速PDCAのプログラムで、組織を変えるための素地が養われたのではないでしょうか。やはり、自ら疑問を提起して組織を変えようとしないと、最適な組織には生まれ変われないのではないかと思います。
鬼速サービスを導入していなかったら、おそらく従来の現状維持バイアスがはたらいていたと思いますね。組織改編の中でもきちんと伴走していただき、足りない部分については追加プログラムを組んでもらうなど柔軟な対応で助かりました。
集客についても鬼速PDCAの導入で変化などありましたか?
岡田氏集客で一番変わったのは今まで基準にしていた広告コストの計算式を変えられたことです。最も注目するべきなのはやはり集客数であり、CPO(Cost Per Order)はあくまでも効率化するため、結果を表すための指標でしかないことを改めて認識できました。
顧客獲得の単価を下げることに苦心するのではなく「新規の顧客をどうやって獲得するか」、さらには「業績拡大のために何が必要か」にフォーカスするようになりました。メンバーの意識が大きく変わるきっかけにもなったので、非常に大きな効果だと思います。
今後の展望
「ウェルエイジング支援カンパニー」への事業転換。
鬼速PDCAのメソッドで、モレなく全体を把握していく。
今後の展望についてもお伺いできますか。
神戸社長今後は健康食品と化粧品の販売だけではなく、ウェルエイジングを支援することで社会的な役割を果たしていきたいと考えています。年齢を重ねることを前向きに捉える方が増えれば、世の中がもっとポジティブになっていくのではないかと思います。
年齢を重ねることで激しい運動が難しくなるなど肉体的な衰えはありますが、今まで知らなかった楽しさに気付くこともあります。例えば、私はダイビングが趣味なのですが、若い時には見過ごしていたサンゴ礁の魅力に最近惹かれるようになりました。肉体が衰えなかったら、大きな魚ばかりに目を奪われてサンゴ礁の美しさに一生気付かなかったかもしれません。年齢をできない言い訳にするのではなく、新たな楽しみ方を探した方が豊かに生きられるのではないかと思います。
最後に、鬼速PDCAの価値をどんなところに感じていますか。
神戸社長私は毎日の会議や事業運営で「MECE」(モレなく、タブリなく)になっているかどうか常に気を配っているのですが、鬼速PDCAの価値はまさに「MECE」を実現できるサービスではないかと感じています。今まで重視していたKPIとは別に、新しく重要なKPIが生まれるというのは、今まで何かの要素が足りなかったんです。
プログラムの中でも事業におけるモレやダブりを無くすように各メンバーが取り組めたので、「MECE」を実践するエクササイズにもなったのではないかと思います。
それに、今回の鬼速PDCAの導入で各メンバーが自分の業務の重要性について、改めて気付くことができたと感じています。例えば、弊社においてTVでの集客担当は業務として目立つ部門ですが、そこだけフォーカスしていてもビジネス全体が良くなるわけではありません。
それよりも、周辺の業務やKPIを全体できちんと設計することが重要です。メンバー全員の業務にスポットを当て、自分の仕事の価値を改めて考え直すという意味でも、鬼速PDCAは価値があったのではないかと思います。
事業成長のために必要なことを「MECE」で網羅しながらKPIを設計できたことは、これから新規事業に取り組む上でとても安心感がありますね。