後悔していることはないのか?

◆「働きながら学ぶため家族へのケアが大事」

A氏は仕事をやめざるを得なかったので、数年間家族に不安定な生活を強いてしまったことを気にかけている。事前によく話し合って蓄えも確認していたというが、実際に会社を辞めたことで「会社の保護下で守られて生活できていたことを痛感した」という。

だが「MBAを取得したのが40代後半だったが、もっと早く経営の勉強をすべきだった。経営の専門性は今後一層必要性を増すと思うので、ある程度社会経験を積んだら経営の勉強は不可欠」と訴える。

B氏はMBAを取ったことについては何も後悔はしていないが、「敢えていうなら家族へのケアがもっとできたかも」と振り返る。土日中心の授業だったとはいえ、チームでプロジェクト研究を行うことがあり、平日夜や日曜に集まることもあったそうだ。


同級生など自分以外の人のエピソードは?

◆「MBA取得が目的の人は辛酸をなめている」

A氏は「経営を学ぶことが真の目的であって、MBAはその一成果としての称号。MBA取得を目的化した人は大体辛酸をなめている」と指摘する。さらに多くの企業では「MBAは持っているけれども働かない」という人で苦労しているので、MBAを振りかざすのは反ってマイナスのこともある」と付け加える。

B氏は、同窓生50人がいるというが、MBA取得後に希望していた海外勤務を勝ち取った人が6人おり、経営企画部への異動を果たした人が3人、転職した人が2人いるといい、「それぞれがMBAの中で学んできたことを活かせるポジションに異動できていた」と教えてくれた。

C氏は「MBA以降のキャリアに苦しむかどうかは、キャリアチェンジの度合いにかかっています」と説明。

「キャリアチェンジは一般的に『業種・職種・地域』の3つの軸があると言われるが、2つ以上の軸を同時に変えるのは困難だと思う。3つの軸を同時に変えようとする人は、仕事を見つけるのに時間がかかったり、希望の給与水準に届かなかったりと、厳しいキャリア選択を迫られている」と話す。

そのうえで、基本的にはMBAの肩書きが通用するのは書類選考までと指摘。「どの会社でもMBAで学んだことは評価の対象外で、仕事の中で何を達成してきたかに採用の可否が影響される」という。

外国で学び、職を得たC氏。日本の環境については、「MBA採用を重視するコンサルティングファームや一部の外資系企業に卒業生が流れています。そのような業種を希望する人には、キャリアアップの機会になるかもしれませんが、皆が休日出勤続きでワークバランスが保てない生活を送っているのを聞くと、キャリアアップが個人の幸せにつながるかどうかは難しいところではないか」と疑問を示した。