現代を金融市場を生き抜くために学習機会の増加が必要
ー大学において、個人の資産を個人で管理する時代に生き抜くための学生を育てるためには、どのような取り組みが有効でしょうか?
近藤教授:
大学において、個人の資産管理や将来への備えをサポートするような教育を行うことが考えられますが、実際に実施する際には課題もあります。
特に金融教育カリキュラムの提供についてです。一般に、社会科学系の学部では、金融に関する講義が設けられていますが、他の学部では、金融に触れる機会が限られています。学習機会を増やすために、他学部聴講などの学部間の連携をより強化するといった方策が考えられます。
また、実践的な学びや経験を促進する取り組みも有効でしょう。学内での模擬投資、金融機関や企業との連携によるインターンシップ、実務家をゲスト講師として招く寄付講座など、実際の金融や金融業界の現場に触れる機会を通じて、学生たちは、実践的なスキルや知識を身につけることができるでしょう。
ー学生の意識も大切な要素ですね。大学において、学生が金融教育に積極的に取り組むよう促すためには、どのような取り組みが有効だとお考えですか?
近藤教授:
そうです、学生の意識も非常に重要です。
前述したように、経済学部のような社会科学系学部では、金融を学ぶための体系的なカリキュラムが用意されているのにも関わらず、それを積極的に活用しない学生も見受けられます。高校の段階から金融教育を受け、より早期から金融に関心を向けることを通じて、学生の意識や取り組みが変わることを期待しています。
ー大学のホームページを拝見しました。先生のメッセージには、「大学で金融を学ぶ際には、地域や日本の経済を活性化させるためのお金の流れや、広い視野を持つことが必要になります。金融は刻々と動いていますので、現実と関連付けながら学ぶことを心がけてください」とありました。このメッセージについて、お聞かせいただければと思います。
近藤教授:
このメッセージは、金融を学ぶ際に大切だと思うポイントを示しています。
金融は、理論や数字だけではありません。個人の資産形成や投資が経済全体に与える影響は大きいです。分かりやすく言い換えれば、個人の資産形成は、経済活動を支える役割を果たしているのです。例えば、株式への投資は、株式会社へ資金を提供することにつながりますし、銀行への預金は、中小企業への融資に活用されます。
そのため、金融を学ぶ際には、個人の資産形成のみに目を向けるのでなく、それが経済活動を支えるためのお金の流れにつながっていること(企業や政府の経済活動を支援することにつながっていること)を把握することも重要です。
また、最近メディアを通じてよく報じられていますが、金融政策の動向も資産形成に多大な影響を及ぼします。金利の調節等の金融政策の方針が市場や相場にどのような影響を及ぼすかを理解し、それを自身の資産形成に活かす必要があります。
金融政策というと、自分とは無関係な遠いところで行われていることだと考える人がいるかもしれません。しかし、金融政策の動向を把握することで、自身の資産形成を効果的に行うことができるようになるのです。
お金は、しばしば経済を循環する血液に例えられますが、それが日本や地域の経済活動、ひいては経済水準にどのような影響を及ぼし得るのか、それがマーケットにどのような影響を及ぼし得るのかといった、広い視野を持つことが求められます。
大学におけるこうした広い視野を持った学びが個人の資産形成のパフォーマンスにもつながってくるものと信じています。
ーありがとうございます。とても素敵なメッセージだと思います。本日は貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございました。