特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

2001年(平成13年)、東京都葛飾区で有限会社として創業し、不動産仲介業を開始したセイズ株式会社。2年目からは分譲住宅の販売を開始し、創業から10年目にはそれまでの商品とはコンセプトを変えた「zero-e」を発売した。「本物を追求する」を企業理念とし、顧客に健康で長く住んでもらえる本物の家を提供し続ける同社は、ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジーで5年連続優秀賞を受賞するなど技術力の評価が高く、リーマンショックやコロナ禍などの危機を乗り越えて成長し続けている。そんなセイズをけん引する及川達也さんは顧客や社員、パートナー会社の幸せを実現し、地元・葛飾のために貢献していくことを誓う。

(取材・執筆・構成=長田小猛)

(画像=セイズ株式会社)
及川 達也(おいかわ・たつや)
セイズ株式会社代表取締役社長
1971年東京都生まれ。
1990年に高校を卒業し、地元、葛飾区で住宅販売に従事。当時はバブル崩壊の影響で住宅が売れなかったが、それを景気の影響ばかりとは考えず原因を追及。独自に家に関する知識や設計を学び、2001年、30歳のときに有限会社セイズインターナショナルを設立した。社員3名から不動産仲介業をスタートさせ、2年目からは分譲住宅の販売を開始。2010年にセイズ株式会社と社名変更し、年商40億の企業に成長させた。

常に本物を追求し続ける

――貴社の企業理念にある「本物の家づくり」についてお聞かせください。

私たちは2010年に「本物を追求する」という企業理念を掲げました。私たちは本物の家づくりで、自然災害や温度変化からお客様のご家族の命と財産を守り、一生涯お客様の住まいを維持管理し続けるという決意を表しました。当社は本物を追求する家づくりをとおして、お客様、社員およびパートナー会社の幸せを実現し地域社会に貢献していきたいと考えています。

――自然災害や温度変化からお客様のご家族の命と財産を守る、とは?

2001年に会社を設立し、やがて住宅の分譲を開始したのですが、売上は思うように伸びませんでした。当時は自分で設計した家を、自らのプレゼン力で売っていた感がありますが(笑)、やっと年商20億を突破したときにリーマンショックに遭いました。会社はかなりのダメージを受けましたが、それまでの経営や家のつくり方を見直す良い機会にもなったと思っています。そして私は、ここである情報に出会います。家の中の温度変化で人が死ぬ、日本は住宅の後進国だという情報です。

75歳以上の高齢者が家の中で溺死した死亡率のデータを見たんです。10万人あたりの死亡者は、ドイツの男性1.6人に対して日本は34.6人、女性はドイツの1.0人に対して日本は26.1人です。ドイツと日本でお湯の温度にさほど差はないでしょうから、この差はヒートショックによってバスルームで亡くなってしまう死亡率の差です。簡単に言えば、日本の家は寒すぎるのです。

セイズの『zero-e』の施工例(画像=セイズ株式会社)

創業から10年で社名と商品を一新

――それが契機となって貴社の「zero-e」が生まれたのでしょうか?

私はこの情報に触れてすぐにドイツに飛びました。そこで「パッシブハウス研修」というものを受け、帰国してすぐに設計部署を立ちあげました。そして創業から10年、社名をセイズ株式会社に変えると同時に商品を一新したのです。

zero-eは、お客様に「健康に長く住んで貰える本物の家」をコンセプトに作りました。高気密・高断熱住宅で、リクシルの断熱材を用いた「スーパーウォール工法」を採用し、設計でもパッシブハウス設計を採用しています。いわゆる昭和の家とzero-eをサーモグラフィーで比べた画像をよくプレゼンで使うのですが、家の中の温度は圧倒的に違います。その差は年間の光熱費にも現れていて、差は約2倍。つまりzero-eなら、今までの光熱費が半分になる可能性があるのです。また気密性は高いですが、スーパーウォールは100年間、壁内結露しません。壁の中にカビが発生しないということは、お客様の健康にも大きく影響します。

――新商品の販売開始で、リーマンショックから業績は回復されましたか?

最初は全く売れませんでした。コストが高かったということもありましたが、私たちがお客様に価値をうまく伝えられなかったのではと思っています。販売方針を巡って社内が分裂する危機もありましたが、モデルハウスを作りお客様にzero-eの暖かさを実感してもらうことで販売が伸び始めました。ですから当社の販売は、冬が好調なんです(笑)。他社との差がよくわかるのでしょうね。結果として当社は、ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジーで5年連続優秀賞を受賞し、優秀企業賞も3年連続で受賞しています。

――コロナ禍は事業にどのような影響を及ぼしましたか?

2020年の3月から4月は、お客様との接触がパタッとなくなりました。当社も一ヶ月間は、私を除く全員がテレワークの状態。ゴールデンウィーク明けに営業を再開しましたが、すぐに商談はオンラインに切り替えました。ほかにも、毎週土曜日にはWebで「チャンネルセイズ」という生放送のセミナーを開催し、オンラインの内覧会などもやって、幸い業績はすぐに回復させることができました。

特にオンラインの内覧会では社員ががんばってくれました。本当に見やすい動画を全員で協力しながら作ってくれました。ビックリしたのは、アメリカ・ロサンゼルスのお客様が一回も家を見ていないのに、オンラインの内覧会で購入を決めてくださったことです。優秀な人材の大切さを、改めて実感した出来事でしたね。

――今後はどのように事業を発展させていきたいとお考えですか?

数値目標は、2030年に現在40億の売上を100億に持っていくことです。東東京(ひがしとうきょう)で家を作るならセイズだと言われたいですが、当社だけの利益を考えるのではなく、業界全体に良くなってほしいと思います。

若い社員も、積極的に採用していきたいと思っています。オンラインの件でも感心しましたが、若い人のパワーには本当に驚きます。26歳の若い営業マンがいるのですが、平均5,000万円の家を、毎月契約してくるんです。お客様にウソをつかなくて良い商品が当社にあるからだと彼は謙遜しますが、このような期待にも会社として応えていかなければなりません。

現在は東東京を地盤として営業していますが、将来的には販路を広げていくことも検討しています。そのときには、ぜひ若い人たちに全国に出て行ってほしい。私は地元をしっかり守ります。これは大きな夢ですね。

当社はおかげさまで、今年20周年を迎えました。セイズの家は、デザインや豪華な設備など、うわべだけが整った家ではありません。一棟一棟、太陽光や風の流れなど、その土地にあった住宅を基礎から綿密に考え、ご家族が安心して快適に長く暮らせる、デザインと機能性を両立させた家です。そしてもう一つ大事なのが、お客様の住まいを守り続けるアフターメンテナンス。親から子へ、子から孫へ継がれる「本物の価値ある家づくり」を、これからも追求していきたいです。