資産運用において、時間を味方につけることは重要なポイントです。1年ごとの利回りは数%程度なので短期間で資産が増えていることをそれほど実感できなくても、5年、10年と時間を積み重ねていくうちに効果が大きくなり、資産が増えていることを実感できるものです。

そんな長期的な資産運用において、多くの方が1つの節目として意識するタイミングがあります。それは、資産規模が倍になるときです。「資産が倍増するまでに何年かかるのだろう?」という疑問を解決しておくことで、長期的な計画が立てやすくなります。しかし、資産運用には「複利」の概念があるので、簡単に手計算をするには難しいものがあります。

そこで知っていただきたいのが、「72の法則」です。これは資産が倍増するまでの年数を知ることができる魔法の法則とも呼ばれているもので、計算方法もいたってシンプルです。さらに、「72の法則」は資産運用だけでなく借金をしている場合に負債が倍になってしまうまでの期間を手計算するのにも役立つので、マネーリテラシー向上の観点からぜひ知っておくといいでしょう。

「72の法則」をご存じですか?

(画像=Looker_Studio/stock.adobe.com)

「72の法則」の計算式は、以下のとおりです。

72 ÷ 利回り(%) = 資産が倍になるまでの年数

たったこれだけの計算式です。これは複利といって、運用によって増えた分をさらに再投資することで加速度的に資産が増えていく仕組みを考慮しているため、「72の法則」を用いると複雑な複利計算をすることなく瞬時に資産倍増までの期間がわかります。

ただし、「72の法則」で求められるのはあくまでも近似値であり、正確な年数ではないことを念頭に置いておいてください。

「72の法則」で主な資産運用を比較してみる

それではこの「72の法則」を使って、実際にある投資商品で運用したら資産倍増までに何年かかるのかを計算してみましょう。

最初に計算するのは、とかく「金利が低い」と言われ続けている銀行の定期預金です。大手メガバンクの預金金利を0.002%として計算式を組み立てると、以下のようになります。

72 ÷ 0.002 = 3万6,000年

定期預金だとお金は増えないと言われて久しいですが、「72の法則」に当てはめてみると資金倍増までに3万6,000年もかかることがわかりました。まさに天文学的な数値で、やはり定期預金では資産が増えないと言われても仕方ないと言わざるを得ません。

次に、数%の利回りが期待できる投資商品としてJ-REIT(上場不動産投資信託)を例に計算してみましょう。J-REITのある銘柄で4%の利回りが出ているとして、計算式を組み立ててみました。

72 ÷ 4 = 18年

いかがでしょうか?先ほどの万単位の年数と比べるとかなり現実味のある年数になりました。さらにもう少し利回りを高くしてみて、投資成績の優秀なアクティブファンドや高配当株で7%の利回りが出ているとすると、倍増までの年数はさらに短くなります。

72 ÷ 7 = 約14.2年

このように「72の法則」を用いて計算をしてみると、資産運用の利回りがいかに重要であるかが改めておわかりいただけると思います。

「72の法則」は借金が倍になる年数も計算できる

この「72の法則」は複利を考慮した計算式なので、資産運用だけでなく借金においても同様の計算ができます。たとえば、大手消費者金融から借り入れをして金利が18%だと想定すると、計算式は以下のとおりです。

72 ÷ 18 = 4年

なんと、4年で借金は倍になってしまいます。金利の高い借金をすると雪だるま式に増えてしまうと言われますが、「72の法則」で計算をしても改めてその金利コストの高さを実感できます。

消費者金融ではなく、多くの方が利用しているクレジットカードのリボ払いについても計算してみましょう。金利が15%と仮定して計算をすると、以下のとおりです。

72 ÷ 15 = 4.8年

消費者金融を利用することに抵抗がある方であっても、クレジットカードのリボ払いを気軽に利用している方は多いのではないでしょうか。しかし、実はクレジットカードのリボ払いも消費者金融とそれほど金利は変わらないので、負債が倍増するまでの理論値はたったの4.8年です。

借金によって行き詰ってしまう人、債務整理を余儀なくされる人が増えていますが、「72の法則」で計算をしてみるとそのカラクリが見えてきます。

単利計算には「100の法則」を用いる

ここまでは複利を考慮した計算の解説をしてきましたが、それを考慮しない計算式として「100の法則」もあります。資産運用において運用益を再投資せず単純に同じ利回りを出し続けた場合は、「100 ÷ 利回り」で計算をすると単利による資産倍増までの年数がわかります。

実は、単利計算で資産運用のシミュレーションをすることにあまり意味はありません。ここで重要になるのは、「72の法則」で知ることができる複利運用での倍増年数と、「100の法則」で知ることができる単利運用との差です。それでは実際に利回り5%で資産が倍になるまでの年数をそれぞれの法則で計算してみましょう。

最初に、「72の法則」(複利)です。

72 ÷ 5 = 14.4年

次に、「100の法則」(単利)です。

100 ÷ 5 = 20年

この両者には、6年程度の差があります。同じ資産を運用していても複利を味方につけるだけで倍増までの年数が6年近くも早まるのですから、いかに複利の力が大きいかお分かりいただけると思います。中長期的な資産運用では複利を味方につけることがとても重要で、そのためには運用益を再投資しながら運用規模を拡大していくのがセオリーであるということです。

「72の法則」から見えてくること

今回は魔法の法則と呼ばれる「72の法則」について解説しました。資産運用において資産を倍にするまでの年数が1つの節目になること、そしてその年数をいかに早めるかが重要であること、そのためには複利を味方につけることがセオリーであることなどがおわかりいただけたと思います。

しかし、いくら利回りが高いといっても数%程度が標準的な数値です。これを大きく上回る20%や30%といった利回りは現実的ではなく、仮にそういった運用方法があったとしてもごく短期間のものであり、さらに言うと詐欺に近いようなものである可能性すらあります。やはり標準的な利回りとして3%から7%程度を想定するのが現実的な線であり、この水準の利回りを「72の法則」で計算すると、やはり資産倍増には10年以上の年月がかかります。

現実味のある利回りで資産倍増を目指すのであれば、いかに早く資産運用に取り組むかが重要になります。「老後2,000万円不足問題」は大々的に報道されたため多くの方が「2,000万円」という金額を意識するようになりましたが、仮に1,000万円から老後を迎えるまでに倍増させるためには、何歳から資産運用に取り組み、そのための投資元本を何歳までに構築しておく必要があるか、といったように逆算から資金計画を立てることができます。

逆算して早めに資産運用を

もちろん、最初から1,000万円というまとまった金額がなくても資産運用は可能です。まずはできることから始める、そしてもう1つ重要なのが早くから始めておくことです。少額からであっても毎月少しずつ資金を積み増しながら資産運用を始めておくことが、不動産など別の方法による投資に参入するチャンスにもつながります。

「72の法則」で計算できるのは資産倍増までの年数ですが、そこから逆算をすることによって人生設計ができることも、「72の法則」が魔法の法則と呼ばれる所以なのです。(提供:Incomepress


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