高収入のサラリーマンは、法人を設立したほうが税金は安くなるという話はよく耳にします。今回は会社員と法人の税制の違いを解説し、高所得サラリーマンが法人を設立することでどのように節税できるのかをご紹介します。

所得税と法人税の税率の違い

(画像=fizkes/stock.adobe.com)

まず、知っておきたいのが、サラリーマンにかかる所得税と法人にかかる法人税では税率が違うということです(表1、表2)。

表1.所得税の税率

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超1,800万円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

表2.法人税の税率(中小法人)

課税される所得金額 法人税の税率
年800万円以下の部分 15%
年800万円超の部分 23.20%

上の表を見てわかるように、所得税は所得金額が大きくなるにつれ税率も高くなります。一方、法人税は800万円を超えた部分はどんなに所得が増えても一律23.20%です。つまり、所得額が上がれば上がるほど法人税のほうが税率は軽くなっていきます。

経費に計上できる支出

法人を設立することで、経費の範囲が広がり、節税につながります。

所得の分散で節税する

会社を設立してビジネスを行う人は、役員報酬を受け取ることになるでしょう。法人では役員報酬を経費にできるので、総所得を法人所得(法人税対象)と役員報酬(所得税対象)に分割できます。結果としてどちらも税率が低い区分の所得になるため、税金を抑えることができます。

法人の経費の範囲は広い

ほかにも、法人の場合はサラリーマンに比べて経費の範囲が広くなります。例えば会社の場合、生命保険料や借上社宅、慶弔費などは経費として計上できます。

サラリーマンが法人を設立する際の注意点

サラリーマンは会社に雇用されて給料を受け取りますが、法人を作ると会社から業務委託という形で仕事とお金を受け取ることになります。そもそも会社側が法人に業務を委託するというシステムを整えていなければ、サラリーマンのときと同じ収入を受け取れないかもしれないことには注意が必要です。

法人設立はさまざまな支出を考え慎重に検討しよう

高収入のサラリーマンが法人を設立することによって、理論上は節税メリットがあるものの、法人設立は費用も手間もかかり、帳簿や確定申告などの事務作業も発生します。こうしたデメリットを知ったうえで、どちらがいいのか慎重に検討しましょう。

文・松岡 紀史
所属・ライツワードFP事務所代表
筑波大学大学院経営・政策科学研究科(現システム情報工学研究科)でファイナンスを学ぶ。元システムエンジニア。節約や貯金など地道な作業の大切さと、「投資だけ」「保険だけ」に偏ることのないバランスの取れた資産運用を広めるため、執筆・セミナー・個別相談などを行っている。ライツワードFP事務所代表

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