世の中には新車や中古車の他に「新古車」と呼ばれているクルマが存在します。この新古車を購入した場合、「中小企業投資促進税制」の特別償却の対象資産となるのでしょうか。今回は新古車が特別償却できるのか、中小企業投資促進税制の概要と合わせてお伝えします。
新古車は特別償却の対象となるのか?
結論から言うと、クルマのうち、いわゆる「新古車」は特別償却の対象とはなりません。 新古車は、中小企業投資促進税制における特別償却の要件を満たしていないからです。
では、どのような要件を満たせば、特別償却の対象となるのでしょうか。
まず、特別償却とは、中小企業等が設備投資を促進するために設けられた税制優遇措置です。通常の減価償却に加えて、取得した初年度に一定の割合を損金として計上することができます。
制度内容
- 適用対象企業:資本金や出資金が1億円以下、かつ大企業の子会社ではない中小企業(常時使用する従業員の数が1,000人以下)
- 適用対象物:中小企業者等が取得又は製作した機械装置等
- 償却率:取得価額の10%、30%、50%のいずれかを選択
- 償却方法:通常の減価償却方法とは別に特別償却費を計上
- 初年度の損金が大幅に増加し、節税につながる
- 設備投資初期の資金繰りを改善できる
- 短期間で多くの設備を導入したい場合に有効
- 特別償却枠を使い切ると、翌年度以降は通常の減価償却となる
- 税額控除との選択適用となる制度がある
- すべての設備が特別償却の対象となるわけではない
なおクルマについては、以下の3つの要件を満たしている場合に、全額償却または税額控除が認められています。
- 普通自動車
- 車両総重量が3.5トン以上
- その車が貨物の運送用に供される
そのため「小型自動車」「軽自動車」に区分される車両はこの制度の対象とはならないことになります。
新古車とは、正式には「登録(届出)済未使用車」と呼ばれているクルマで、初度登録(届出)はされているけれど使用または運行はされていない車両を指します。たとえば、自動車ディーラーや中古車販売店が所有者として登録されている展示車などが該当します。走行距離がほとんどなく、「ほぼ新車」の状態の車両が該当します。
本制度では、「新品の機械や装置など」が対象となります。つまりほぼ新車の状態であっても、新古車の扱いは中古車となり、この制度の対象とはなりません。
中小企業投資促進税制の指定事業に該当するかどうかも確認を
新古車は新車よりも価格が値引きされている場合もあり、その分コストを掛けずに購入することができますが、特別償却の優遇措置を受けることはできないので、新車と新古車の価格差や特別償却による税効果などを考慮して、どちらが有利となるかを検討する必要があります。
なおこの制度の適用対象となるのは、製造業、建設業、卸売業、運送業などに限られているので、「指定事業」に該当するのかも合わせて確認が必要です。
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文・澤田
所属・FP事務所FP EYE代表
1971年生まれ、東京都出身。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中
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