投資がボーダーレスになった昨今、外貨預金を資産運用先の一つとして活用する人が増えました。ここで気になるのが税金です。今回は、外貨預金をした場合の税金と確定申告について解説します。

投資先として人気の高い「外貨預金」、でも税金もかかる

(画像=naka/stock.adobe.com)

「一つのカゴに複数の卵は入れるな」というのは投資の格言です。この格言に従い、株式や不動産だけでなく、外貨預金にも投資を行う人は少なくありません。

ただし、国内の日本円による預貯金と違いドルやユーロがベースとなる外貨預金は、税金の取り扱いについても注意しなくてはならないのです。

国内での預金と比較!外貨預金で気にすべき「利益」と「税金」

国内の預金と外貨預金の違いを「利益」と「税金」の両方からみていきましょう。

外貨預金の利益は2種類

国内の預貯金の利益が預金利息だけであるのに対し、外貨預金には次の2つの利益があります。利益の種類ごとに、所得税法上の所得区分も以下のように異なります。

・預金利息(利子所得)
・為替差益(雑所得)

利益はこの2つだけなのですが、それぞれ預け先の金融機関の所在地や満期時の予約レートの有無によって、課税方式が異なります。なお、所得計算は所得の種類によって異なるのですが、イメージとしては「収入金額-必要経費=所得(利益)」といったものになります。

外貨預金の利益に対する課税方式

まず、預金利息への課税ですが、預金先が国内か国外かで課税方式や確定申告の要否が変わります。

・国内金融機関での外貨預金:源泉徴収(所得税15.315%、住民税5%)、確定申告不要
・国外金融機関での外貨預金:総合課税(所得税5~45%+復興特別所得税、住民税5%)、確定申告必要

次に、為替差益への課税ですが、こちらは満期時に予約レートが設定されているかどうかで課税方式や確定申告の要否が変わります。

・予約レートの設定有:源泉徴収(所得税15.315%、住民税5%)、確定申告不要
・予約レートの設定無:総合課税(所得税5~45%+復興特別所得税、住民税5%)、確定申告必要

なお、為替差損が発生した場合、所得が0円なので確定申告は必要ありません。ただし、複数の外貨預金を運用していて為替差益がある場合や他に副収入など雑所得となるべきものがある場合には、雑所得の枠内での損益通算に用いることができます。損益通算をしてなお雑所得が黒字ならば確定申告が必要です。

外貨預金をした場合の確定申告

では、ここから外貨預金をしている人の所得税の確定申告について解説します。

確定申告が不要な人、必要な人

外貨預金で利益が出たからといって全員が所得税の確定申告をしなければならないわけではありません。次のようなケースは、確定申告が不要です。

【不要なケース】
・正社員やバイト・パートによる給与収入がある人で、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が年間20万円以下の場合
・そもそも源泉徴収で完結していて確定申告できない場合

例えば、サラリーマンが本業以外にも投資や副業を行っており、外貨預金による所得だけでなく副業などによる所得や不動産所得があるならば、それらの合計額が年間20万円以下なら確定申告はしなくてよいというわけです(ただし、住民税の確定申告は必要です)。

逆に、外貨預金をしている人で、確定申告が必要な人はおおよそ次のような人です。

【必要なケース】
・給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人
・事業所得や不動産所得などを個人事業主として行っている人
・単独でデイトレーディングなど投資業を行い、生計を立てている人

所得計算

利子所得にしても雑所得にしても、その年の1月1日から12月31日までに発生した所得額を合計して計算します。なお、外貨預金については、利子所得も雑所得も必要経費に該当するものがありません。したがって、収入金額=所得額と考えて差し支えありません。

また、国外の金融機関で外貨預金を行っている場合、利子所得について金融機関の所在地国でも課税されているならば、外国税額控除を用いることができます。

申告・納付期限・納付方法

所得税における確定申告の申告書の提出と所得税の納付はその年の翌年3月15日までに行います。納税は税務署や金融機関で納付書を用いて現金で納付する他、口座振替やダイレクト納付、クレジットカード納付やコンビニ納付も活用できます。

外貨預金の税金の扱いには注意が必要

日本円の預貯金と同じ感覚で外貨預金に投資する方は少なくありませんが、海外の要素が絡む分だけ税金の取り扱いも若干複雑になります。ここで紹介した注意点を踏まえたうえで上手に資産運用していきましょう。

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