「不動産投資で利回り5%」などと書かれている広告をみると、投資対象として魅力を感じるかもしれません。しかし実際に不動産投資を行う場合、さまざまな経費が差し引かれることになります。そのため、5%程度の利回りだと経費を自己資金から持ち出すことになるかもしれません。ここでは、初心者が陥りやすい「不動産投資のリスク」を紹介します。

「不動産投資で利回り○%」というウリ文句に潜むリスク

(画像= lovelyday12/stock.adobe.com)

ポスティングされたチラシ、街中の商業用看板、SNSのバナー広告などで、「高利回りの不動産投資、利回り○%!頭金ゼロでもOK」といった広告を目にされたことはないでしょうか。この記事をクリックした人であれば、実際に不動産投資の経験があるか、あるいは実際に投資をしてみようという気持ちがあるのかもしれません。

現在、大手都市銀行の普通預金の金利は、0.001%(6月19日現在、以下同じ)。利息が高いとされるネット銀行でも、おおよそ0.01~0.02%程度です。よく使われるたとえ話ですが、100万円の預金をした場合、1年間で受け取る利息は金利が0.001%なら10円、0.02%でも200円にしかなりません。ほかに、1年ものの定期預金では0.01~0.2%程度、日本国債の10年物の利回りが0.1%程度です。仮に、利回りが1年で5%なら、単純計算で投資元本が20年で回収できることになります。それを考えると、「不動産投資で利回り5%」というウリ文句に惹かれるのは当然かもしれません。

しかし、ここに投資初心者が陥りがちな“リスク”が潜んでいます。この「5%」という数字は、実は管理費や修繕費、固定資産税といったさまざまなコストが差し引かれる前の表面的な利回り、「表面利回り」なのです。表面利回りの計算は至ってシンプルで、「年間の家賃収入÷投資資金×100」。2,000万円の資金で家賃が月8万円の物件を購入した場合、表面利回りは「96万円÷2,000万円=4.8%」になります。

不動産購入にかかるさまざまなコスト

ところが、前述したようにこの4.8%からさまざまなコストが差し引かれます。たとえば管理費や修繕積立金。これが合わせて月1万円程度としましょう。さらに、固定資産税が年間5万円、集金手数料が月3,000円とすると、合計で年間20.6万円のコストが発生。利回りは3.8%程度まで下がります。

さらに忘れてはいけないのが、融資に対する返済です。もちろん、満額を現金で支払った場合は、家賃収入から所得税が差し引かれた金額がそのまま手元に入ります。しかし、現実的には投資資金2,000万円のうち半分の1,000万円、もしくは1,500万円程度を銀行などからの融資によって賄うケースが多いでしょう。毎月の融資に対する返済額を差し引くと、手元に残る資金はわずかです。また、物件が空室となり家賃収入がなくなった月に関しては、持ち出し(赤字額を自分で負担すること)になる可能性が高まります。

前述した諸経費に加えて、不動産投資には購入時にかかる不動産取得税、さらには減価償却費や物件を宣伝するための広告費などもかかってきます。それを考えると、5%という「表面利回り」では十分とはいえないかもしれません。

実質利回りと毎月のローン額をきちんと計算することが大切

もちろん、ローンの金利や空室率を低く抑えることができれば、表面利回りから差し引かれる部分が小さくなるので、より表面利回りに近づけることは可能です。また、ローンを払い終われば実質的な利回りは跳ね上がります。その点で、いかに持ち出しをせずにローンを支払い終えられるかが、不動産投資の1つの大きなポイントといえるでしょう。

実際に不動産に投資する場合は、「表面利回り」に踊らされずきちんと諸経費を計算して、「実質利回り」を割り出し、毎月のローンを、余裕を持って支払えるかを考えることが大切です。表面利回りが低くても諸経費を抑えれば実質利回りは上がりますし、反対に表面利回りが高くても、多額の諸経費が発生すれば実質利回りは低くなります。

もしそうした手間を省きたい場合は、上場株式と同じように売買できるREIT(不動産投資信託)に投資するのも一手です。価格変動のリスクはありますが、複雑なコスト計算は不要で、利回りが5%を超える銘柄も少なくありません。

【関連記事】
月100万円の不労所得を実現する“最短・最安全”コースは?【地方在住会社員が経済的自由を手に入れた道 第2回】
30代「貯金と投資」の割合は?資産運用を成功させるポイントと注意点を解説
サラリーマンが選ぶべき投資の種類4選!節税できる投資法も2つ紹介
株式投資を考える公務員必見!公務員におすすめの投資手法や投資制度は?
「投資を10万円ではじめたい!」何から始める?どんな投資先がある?