上場時の初値が公開価格を上回ることが多いため、多くの投資家から注目されるIPO株。IPOを扱う証券会社は数多いですが、割当数や取扱銘柄、抽選の仕組みや手数料体系もそれぞれに異なるため、どこを選べばベストなのかと頭を悩ませる人も多いことでしょう。この記事では、ネット証券会社でも知名度が高い楽天証券のIPO取引について、サービスの中身を紹介します。

目次

  1. 楽天証券でIPO投資をするメリット
  2. 楽天グループが提供する多様なサービス
  3. 口座開設までの流れ
  4. 楽天証券でIPO投資をするデメリット
  5. そもそも、IPOとは?
  6. まとめ:初心者向きでもある楽天証券は開設しておきたい有力口座の1つ

楽天証券でIPO投資をするメリット

(画像=SB/stock.adobe.com)

楽天証券はIPO株の取り扱い銘柄数が年々増えており、2019年実績では26社のIPOを手掛けています。ネットだけで事業を行う強みがあり、個人投資家にとっては利用しやすい証券会社の1つといえるでしょう。楽天証券でIPO投資をするメリットをいくつか解説します。

楽天証券でIPO投資をするメリット1:100%ネット配分で、コンピューターによる完全抽選方式

対面営業を中心とする大手証券会社の場合、割り当てられたIPOの9割前後は営業部門や支店に回され、営業担当が優良顧客に配分します。いわゆる「裁量配分」です。

顧客にどう配分するかは営業担当の裁量に委ねられ、基準がはっきり決まっているわけではありません。一説によれば年間で支払う手数料が100万円以上、つまり最低でも預り資産残高が5,000万円以上で、かつ先物取引やオプション取引など高レバレッジの投資を行う「アクティブ口座」を開設している顧客が対象になるともいわれています。

大手証券は、裁量配分に回したあとの残り10%前後をネット抽選に配分します。そのため、大手証券のネット窓口からIPOに申し込んでも、抽選確率に過度の期待はできません。

その点、ネット専門の楽天証券では裁量配分がなく、割当株式のすべてがコンピューターによる完全平等抽選の対象となるため、申込者全員に公平にチャンスがあります。

楽天証券でIPO投資をするメリット2:手数料無料のリアルタイム入金

IPO購入申し込みには、事前に行われる「ブックビルディング(仮条件による需要予測)」への参加が必須です。その際、証券口座に入れてある預り金が「買付可能額」となりますが、予測される購入金額に買付可能額が満たないと、ブックビルディングに参加できません。

そのような場合は急いで振込をすることになりますが、通常は振込手数料がかかります。また、振込額が買付可能額に反映されるまでには一定の時間がかかるので、ブックビルディングに間に合わないケースもありえます。

楽天証券のリアルタイム入金は、振込手数料が無料のうえに、入金額が即時に証券口座の預り金に反映されます。ATM等に出向かなくても、スマホやパソコンで入金が可能で、夜間や休日でも利用できます(メンテナンス時間を除く)。リアルタイム入金が利用できる提携金融機関は、メガバンクなど14の銀行です。

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楽天証券でIPO投資をするメリット3:抽選倍率が表示されるのでセカンダリー投資に活かせる

一般的な証券会社では抽選倍率は公表していませんが、楽天証券は申し込んだ投資家に抽選倍率を公開しています(ただし申し込み株数と当選株数は非公開です)。当選確率が分かれば申し込み回数のめどが立ち、投資計画も立てやすくなるでしょう。

また、IPO投資には上場時の抽選購入だけではなく、上場し初値が付いたあとに買う「セカンダリー投資」もあります。一般にセカンダリー投資では初値ほどの上昇率は望めないものの、誰でも購入できるので、値上がりが予想される場合は有効な方法となります。

セカンダリー投資ではその企業の成長性や、PER(株価収益倍率)などの指標も重要な判断材料になりますが、株そのものの需要も大きく影響します。極端に初値が高騰した銘柄は直後に大きく下落するケースもありますが、抽選倍率が高かった銘柄は市場での需要が大きいと考えられ、セカンダリー投資の成功率は高まる傾向があります。

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楽天グループが提供する多様なサービス

近年におけるITの急速な進化が、IT企業の金融(Finance)業への参入や、金融業界のデジタル化を推し進め、フィンテックと呼ばれる新しい業態が生まれました。楽天証券や同グループの楽天銀行も、まさしくフィンテックを代表する企業の1つです。

しかし楽天にとってフィンテックは、多様な事業のほんの一部に過ぎません。楽天グループは旅行・保険・電力・スポーツ・EC取引、さらには携帯電話事業とまさに巨大な「経済圏」を構築しています。楽天グループで複数のサービスに登録しているクロスユーザーは年々増加し、クロスユース率は7割に達しています。

楽天証券と同時に、楽天グループが提供するさまざまなサービスを活用することにも、さまざまなメリットがあります。

楽天スーパーポイントの倍率アップ

楽天グループならではといえるクロスユースの最大のメリットは、付与率が最大16倍になるSPU(スーパーポイントアッププログラム)にあります。キャンペーンは時期によって変わりますが、たとえば2020年9月1日~30日のキャンペーンでは、楽天証券に口座を開設し、Rakutenウェブ検索で1日5回以上の検索を5日間続ければ1,000ポイントが付与されます。

その他にも、「信用取引デビュー」「貸株サービス新規利用」「FX口座開設」「純金プラチナ積立デビュー」など、多様なクロスユースにポイント特典や現金特典が付与されています。

株取引で付与されたポイントを楽天市場や楽天トラベルで使うことも、逆にショッピングや旅行で貯めたポイントで投資することもできます。楽天証券に口座を開くだけで、楽天市場で付与されるポイントが+1倍になる特典もあります。

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口座開設までの流れ

楽天証券の口座開設は非常に簡単です。申込みページでメールアドレスを登録すると本人確認メールが送られてくるので、リンク先で必要な情報を入力するだけです。楽天会員であればさらに簡単ですが、会員でない人でも所要時間はおよそ5分とされています。

たった5分で、株式や投信などの取引に必要な8つの申し込み(電子交付や特定口座開設など)、13種の法的申請(源泉徴収や先物取引の差金決済など)、9つの告知(株式の譲渡対価など)が終わってしまいます。

ただしこの手続きでは運転免許証かマイナンバーカードでの本人確認が必須で、どちらもない場合は書類郵送での本人確認手続きが必要です。審査は申し込みから1日前後で完了し、ログインIDがメールで通知されます。ただし、初期パスワードは郵送で届けられるので、セキュリティも確保されています。

IDと初期PWが届いたら、勤務先などの必要な情報を入力し、パスワードを設定して準備完了です。スマートフォン用アプリiSPEEDを利用すれば、ブラウザ等で楽天証券のページに入らなくても取引できるので、場所と時間を選ばず取引や情報収集ができます。

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楽天証券でIPO投資をするデメリット

一方、投資家から人気の楽天証券にも、IPO投資の視点でいえばデメリットとなる部分もあります。他のネット証券との比較しながら考えてみます。

楽天証券でIPO投資をするデメリット1:当選確率が低くなる可能性がある

楽天証券に加入する個人投資家は年々増えており、証券口座の開設数は376万と主要ネット証券5社(他は松井証券・マネックス証券・auカブコム証券・SBI証券)のトップを誇ります。とくに20~30代の若年層に人気があるのが特徴ですが、口座数が多ければ当選確率は低下します。

ただ、楽天証券では取扱いIPO銘柄も増加していますので、抽選のチャンスの多さが高倍率をカバーしている面もあります。

楽天証券でIPO投資をするデメリット2:NISA口座でのIPO申し込みができない

株式を売却した利益や配当には、通常20%の所得税が課されます。しかし少額投資に対する非課税優遇制度である「NISA」を利用すると、年間120万円以内、最長期間5年間で計600万円までの投資であれば非課税となります。

しかし楽天証券では、NISA口座でのIPO申し込みはできません。そもそも長期投資による資産形成促進を目的としたNISAと、短期売買の初値売りが主であるIPO取引は、決して相性の良い組み合わせではありません。短期売買を繰り返すIPO取引は、NISAの非課税枠あっという間に使い切ってしまう可能性も高く、課税口座でなければ本格的な運用は難しいといえるでしょう。

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そもそも、IPOとは?

IPOは「Initial Public Offering」を略したもので、新規公開株や新規上場株式とも呼ばれます。

株式は、取引所で売買できる上場株式と、非上場株式とに大別されます。株式を上場すれば、取引所を通じて不特定多数の投資家から資金を調達できるようになります。ただし上場するには、取引所が定める厳しい審査基準をクリアしなければいけません。

日本には500万社近い株式会社がありますが、その大部分は非上場企業であり、取引所(東証1部2部・JASDAQ・東証マザーズや地方取引所)に上場している企業は1%未満とされています。

IPOとは、ごく少数の株主が所有していた非上場の株式を、取引所に上場することを指します。多くのスタートアップ企業にとって夢であり、目標でもあるのです。

IPOの2つの狙い:成長投資資金と創業者利益の獲得

IPOの目的は、大きく2つあります。1つは将来にむけた投資に充てる資金の調達で、公開により得た資金はビジネス環境の整備や人材育成、マーケティングや研究開発の強化などに使われます。このようなケースでは、新規に公募株式を発行します。

もう1つの狙いは「売出」による売却益です。すでに発行し創業者や出資者が保有する株式を市場で売却することで、創業者利益が生まれます。2018年にメルカリのIPOを行った際は、創業者が1,170億円の利益を得ただけでなく、ベンチャーキャピタルの1つも出資額(3億円)の150倍を手にしたといわれています。

IPO投資の魅力

IPOの最大の魅力は、初値売りによるリターンの大きさです。IPO投資での「勝ち」とは、上場時の初値が公開価格を上回ることにあるともいえます。

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2020年9月17日、雪国まいたけのIPOで初値が公開価格を5%下回りましたが、それまでは17社のIPOが連続で公開価格を上回っていました。6月以降での初値の上昇率も、インターファクトリーの5.3倍、ニューラルポケットの5.6倍、アイキューブドシステムズの3.0倍など、倍以上となった銘柄が大半でした。最近は上場までのプロセスを支援する幹事証券会社も、IPOを厳選する傾向にあり、新規発行された場合は、株価が大きく上昇するケースが多くなっています。

また、短期間で結果が出る点も、IPOの大きな魅力です。IPOの抽選申し込みから上場まではわずか2週間前後で、初値で売ればあっという間に利益が発生します。もちろん、上場後もその銘柄を保有し、企業のさらなる成長を待つ投資スタイルも有効ですが、初値が高騰しがちなだけに、その後に大きく値を下げる銘柄も少なくありません。ことIPOに関しては、短期決戦が有力な戦略といえそうです。

少なくとも現時点では、IPO投資は勝率が高く、その利益も大きい上に、短期間で成果が出るという3拍子揃った投資商品となっています。

高い倍率をクリアするために

当然のことながら、IPOの抽選倍率もどんどん高まっています。通常、IPOの公募倍率は公表されていませんが、メルカリのIPOにおける個人投資家の抽選倍率は50倍に達したともいわれています。倍率が高いため、個人投資家の多くは複数の証券会社に口座を開設したり、子どもや配偶者の名義で口座を作ったりと、あの手この手で当選確率を上げようと苦心しています。

証券会社によっては、預り資産額や取引実績によって、当選確率が上がるステージ制度を設けています。ステージが上がれば当選確率も上がるので、資産や取引を増やしてステージを上げたうえで、IPO投資に臨む個人投資家も少なくないようです。

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まとめ:初心者向きでもある楽天証券は開設しておきたい有力口座の1つ

口座数もIPO取り扱い数も年々増加している楽天証券は、今後もネット証券を代表する企業として、新しい事業展開を図っていくものと思われます。その分、抽選倍率の高騰などのデメリットもありますが、取扱銘柄の増加と商品の多様化でチャンスも増えるので、複数口座の保有も含めて、個人投資家にとっては有力な選択肢の1つといえるでしょう。

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