株式投資家はもちろん、そうではない方であっても「日経平均株価」と「TOPIX」は日常的に見聞きされていると思います。これらは日本の株式市場の趨勢を知るために用いられている株価指数なので、日経平均株価やTOPIXを知ることにより、今の日本株がどんな状況にあるのかを何となくつかむことができます。
そこで当記事では、日経平均株価とTOPIXの基礎知識や両者の違い、さらにこれらの株価指数に投資をする方法について、投資ビギナーでもわかりやすいように解説していきます。
目次
日経平均株価とは?構成銘柄は?
最初に、最も知名度が高い日経平均株価についてその基本的な情報を解説します。
指数の解説
日経平均株価はまたの名を「日経225」、そして英語では「Nikkei225」と表記されます。東証一部に上場している銘柄のなかから代表的な225銘柄を選び、その225銘柄の株価を平均化したものが日経平均株価です。
日経平均株価と名付けられているとおり、銘柄を選出しているのは日本経済新聞社です。
構成銘柄、銘柄の特徴
東証一部には2020年12月現在で2,187銘柄が上場しています(東証全体では3,752銘柄)。これだけの銘柄から225銘柄だけを選んでいることから、日経平均株価は日本株のなかでも選ばれた銘柄で構成されていると考えることができます。
日経平均株価を構成している銘柄には、以下のようなものがあります。225銘柄のなかで寄与度が高い上位の銘柄だけを紹介します(2020年12月1日現在の値上がり上位ランキング。ロイター調べ)。この寄与度については、次項で解説します。
- ファーストリテイリング
- 東京エレクトロン
- ファナック
- ダイキン
- 信越化学工業
- 京セラ
- アドバンテスト
- キッコーマン
- 日産化学
- ヤマハ
ここでは上位10銘柄のみをご紹介しましたが、ほとんどの銘柄が有名企業です。
算出方法
日経平均株価は単純平均がベースになっているので、基本は「225銘柄の株価合計÷225」で求められます。しかしこれだけでは対象銘柄の株式分割や、額面の違いなどが考慮されておらず、正確な平均値を算出できません。
そこで日経平均株価を算出する際には、株式分割を考慮した「除数の修正」と、額面が異なる銘柄が混在していることを調整するための「みなし額面による調整」が行われます。この2つの修正と調整についての詳細は割愛しますが、これらを加味した結果、日経平均株価は「225銘柄の株価合計÷27.769」(2020年12月1日時点)で算出されています。
値がさ株に左右されやすい
値がさ株(値嵩株)とは、株価の高い銘柄のことです。日本を代表するような企業が選ばれる日経平均株価では必然的に株価の高い銘柄が多くなりやすく、そのなかには値がさ株と呼ばれるほど突出した株価の銘柄も含まれています。
しかも日経平均株価は算出対象の225銘柄の株価を単純平均した数値をベースにした指数なので、値がさ株の株価による影響を受けやすくなります。先ほど少し触れた寄与度とは、日経平均株価の騰落に影響を与える度合いのことなので、値がさ株ほど寄与度が高くなります。
寄与度の高い銘柄の株価が大きく上昇したり下落したりすると、寄与度が大きいほど日経平均株価に与える影響が大きくなります。そのため日経平均株価の騰落はそのまま日本株の「全体」を正確に示しているとはいえない部分があります。
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TOPIXとは?構成銘柄は?
次に、もう1つの重要指数であるTOPIXについての基本と構成銘柄、計算方法などについて解説していきましょう。
指数の解説
TOPIXは東証株価指数とも呼ばれる指数で、東証一部に上場している全銘柄を対象としているところが特徴です。先ほど解説した日経平均株価は225銘柄でしたが、TOPIXは東証一部全銘柄が対象です。
TOPIXの公表が始まったのは1968年で、この年の1月4日時点での東証一部の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したものがTOPIXです。
ちなみにTOPIXの最高値は1989年の12月につけた2,884.80ポイントです。当時はバブル景気真っ盛りで、TOPIXも3,000ポイント突破を窺うような状況にありました。
構成銘柄
TOPIXの構成銘柄は東証一部上場の全銘柄です。とてもシンプルな構成で、新たに一部上場を果たした銘柄は構成銘柄になり、逆に降格や上場廃止などによって東証一部から姿を消した銘柄はTOPIXの構成銘柄からも除外されます。
算出方法
TOPIXは構成銘柄の時価総額を総合計したうえで、比較対象である1968年1月4日の時価総額で割ることにより求めることができます。
まず、当日の東証一部全銘柄の時価総額を求めます。時価総額は「株価×発行株数」で計算できます。これによって求めた当日の東証一部時価総額を基準日の時価総額で割り、それに100を掛けるとTOPIXが算出されます。なお、1968年1月4日の基準日における時価総額は「8兆6,020億5,695万1,154円」です。
日経平均株価とTOPIXの主な違い
計算方法や構成銘柄などにおいて日経平均株価とTOPIXの違いを知っていただいたうえで、それを投資に役立てるヒントに話を進めたいと思います。
日経平均株価とTOPIXの違い1:組入銘柄の上位を比較
2020年12月15日現在、日経平均株価の組入銘柄で寄与度の上位10銘柄は以下のとおりです。
▽日経平均株価組み入れ銘柄の寄与度上位10銘柄
1位 | エムスリー |
2位 | ファナック |
3位 | 第一三共製薬 |
4位 | TDK |
5位 | 京セラ |
6位 | 信越化学工業 |
7位 | コナミ |
8位 | ファーストリテイリング |
9位 | 富士フイルム |
10位 | KDDI |
続いて、同日のTOPIX組入銘柄のうち時価総額の上位10銘柄です。TOPIXの場合は東証一部全銘柄が対象なので、東証一部の時価総額ランキングがそのままTOPIXの時価総額ランキングになります。
▽TOPIX組み入れ銘柄の時価総額上位10銘柄
1位 | トヨタ |
2位 | ソフトバンクグループ |
3位 | キーエンス |
4位 | ソニー |
5位 | NTT |
6位 | ファーストリテイリング |
7位 | 中外製薬 |
8位 | 任天堂 |
9位 | 日本電産 |
10位 | 第一三共製薬 |
日経平均は一部にハイテク株や輸出関連の値がさ株が上位にランクインしているのに対して、TOPIXはやはり日本を代表するような大型株や内需関連株がずらりと並んでいる印象です。
日経平均株価とTOPIXの違い2:NT倍率について
先ほどご覧いただいた日経平均株価とTOPIXの違いを踏まえて、両者の特徴と強弱を数値化することができます。その数値とは、NT倍率です。NT倍率のNは日経平均株価、TはTOPIXです。つまりNT倍率はこの両指数の力関係を知るためのものです。
計算式はとてもシンプルで、「日経平均株価÷TOPIX」で求めることができます。おおむねNT倍率は10倍から12倍程度で推移するのが一般的とされており、NT倍率によって現在の日本株の状況を知ることができます。
すでに解説したとおり、日経平均株価はハイテクや輸出関連を中心とする値がさ株の影響を受けやすく、一方のTOPIXは内需関連の大型株の影響が強い指数です。そのためNT倍率が高いときはハイテクや輸出関連など注目度の高い銘柄の株価が上昇していて、逆にNT倍率が低いときは内需関連や金融などの銘柄が高くなっていることが窺えます。
また、近年の日経平均株価は日経平均先物の影響を強く受けている点にも注目です。日経平均株価に影響を与えやすい値がさ株は先物の動向による影響を受けやすいため、全銘柄を対象としているTOPIXよりも日経平均株価のほうが敏感に反応します。つまりNT倍率が高いということは先物の影響によって敏感な銘柄が先行して上昇していることがわかるため、その後TOPIXにそれが波及して日本株全体が上昇するとの見通しを立てることができます。
日経平均株価とTOPIX、2000年から投資していたらどっちが儲かる?
日経平均株価やTOPIXといった株価指数は市場全体の趨勢を知るために用いるだけでなく、この指数そのものを投資対象とすることができます。そこで、日経平均株価とTOPIXそれぞれに対して2000年から2020年までの20年間に投資をしたと想定して、「どちらが儲かっていたのか」を比較してみたいと思います。
一括投資した場合のパフォーマンスを比較する
2000年1月の安値から2020年の12月15日終値までのパフォーマンス比較で、最初に日経平均株価から見てみましょう。
2000年1月の安値は1万8,075円で、2020年12月15日の終値は2万6,687円です。その差は8,612円です。
次に、同時期のTOPIXも見てみましょう。
構成銘柄や計算方法は異なりますが、同じ市場を示す指数なのでよく似た形状をしています。2020年1月のTOPIX安値は1,584ポイントで、2020年12月15日の終値は1,782ポイントです。その差は、198です。
指数の桁数が異なるので単純比較はできませんが、同じように100万円を一括投資していたとしたら、日経平均株価では約47万6,459円の利益となりました。そしてTOPIXの場合は12万5,000円の利益でした。このバックテストだけを見ると、この20年間は日経平均株価に投資していたほうが利益が大きかったという結果になりました。
実際に日経平均株価やTOPIXに投資する方法は?
株価指数そのものに投資する方法として、ここでは2つの方法をご紹介します。1つは投資信託で、もう1つはETF(上場投資信託)です。
投資信託やETFによるインデックス投資
日経平均株価やTOPIXといった株価指数は、金融市場にあるたくさんの指数に属するものです。こうした指数のことを英語でインデックスというため、こうした指数への投資はインデックス投資と呼ばれています。そしてインデックス投資のための金融商品として、これらの指数と連動するように運用されている投資信託のことをインデックスファンドといいます。
インデックスファンドを購入することは株価指数を購入することを意味するため、それぞれの構成銘柄全部に対して分散投資をしているのと同じ効果が得られます。個別株への投資であればその銘柄の株価によって収支が左右されますが、インデックス投資であれば株式市場全体への投資ができるため、リスクの分散をはかりながら「株式市場全体の成長」を資産増につなげることができます。
なお、投資信託のなかでも証券取引所に上場している銘柄のことをETFといいます。ETFは金融市場にある指数と連動するように運用されているものが大半で、もちろん日経平均株価やTOPIXと連動するETFも数多く上場しています。
投資する際のおすすめ投資手法
インデックス投資に取り組んでいる投資家の多くは、一度に資金を投じるのではなく積立によって少しずつ投資をするスタンスを取っています。その理由は、リスクの分散です。先ほどインデックスファンドはリスク分散効果に優れていると述べましたが、それをさらに積立で少しずつ購入していくことにより、指数そのものの変動リスクを平均化することができます。
こうした時間軸によるリスク分散手法は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、インデックス投資の基本形とされています。
日経平均株価やTOPIXと連動する代表的なインデックスファンド
日経平均株価やTOPIXへの投資を実現できるインデックスファンドをいくつかご紹介しましょう。以下、投資信託のカテゴリーで紹介しているのは、上場していない一般的な投資信託のことです。
▽投資信託
<日経平均株価>
- ニッセイ日経平均インデックスファンド
- インデックスファンド225(日本株式)
- iFree 日経225インデックス
<TOPIX>
- eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
- ニッセイTOPIXインデックスファンド
- iFree TOPIXインデックス
▽ETF
<日経平均株価>
- ダイワ上場投信-日経225
- NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信
- iシェアーズ・コア 日経225 ETF
<TOPIX>
- ダイワ上場投信−トピックス
- NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信
- iシェアーズ・コア TOPIX ETF
おすすめはETF、そしてネット証券
ここではインデックス投資の具体的な手段として投資信託とETFをご紹介していますが、コストや売買の手軽さなどの面から、同じインデックス投資をするのであればETFがおすすめです。ETFは上場している投資信託なので、株式と全く同じ感覚で売買ができます。つまり、売買手数料も株式売買手数料に準じています。
ETFの購入においておすすめなのは、やはり手数料の安いネット証券です。主要なネット証券の売買手数料を比較した一覧表をもとに、投資の規模に応じて証券会社を選ぶのがよいでしょう。
▽主なネット証券のETF売買手数料
証券会社名 | 売買手数料(税込) |
SBI証券 | 5万円まで:55円 10万円まで:99円 20万円まで:115円 50万円まで:275円 または100万円まで無料 |
楽天証券 | 5万円まで:55円 10万円まで:99円 20万円まで:115円 50万円まで:275円 または100万円まで無料 |
マネックス証券 | 10万円まで:110円 20万円まで:198円 30万円まで:275円 40万円まで:385円 50万円まで:495円 または100万円まで550円 |
松井証券 | 50万円まで:無料 |
auカブコム証券 | 10万円まで:99円 20万円まで:198円 50万円まで:275円 |
ETFを積立投資することを前提に50万円までの手数料を比較しました。多くのネット証券で、一日あたり50万円または100万円までの取引の手数料が無料となっており、このような1日あたりの定額取引における手数料設定のない会社も、手数料は低く抑えられております。
まとめ:日経平均株価とTOPIXのインデックス投資を始めよう
当記事では日本の株式市場を代表する重要な2つの指数について解説してきました。日経平均株価とTOPIX、それぞれに特徴があります。パフォーマンスの比較では日経平均株価に軍配が上がったので、利益重視であれば日経平均株価、より高いリスク分散効果を重視するならTOPIXといったように目的に応じて使い分けるといいでしょう。メリットの多いインデックス投資を、手数料の安いネット証券で始めてみてはいかがでしょうか。
文・田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中
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