(本記事は、横山利香の著書『リスクが嫌いな人のお金の教科書』WAVE出版の中から一部を抜粋・編集しています)

個人向け国債は半年ごとに利子を受け取ることができるのが魅力です

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(画像=Singkham / Shutterstock.com)

ネット銀行の定期預金を利用してお金を預けると、普通の銀行よりはおトクですが、満期まで利子収入を受け取ることはできません。1年物の定期預金だったら1年後まで受け取れないわけです。できればその間に、少しでもいいので収入を受け取れたらうれしいですよね。定期的に不労収入を得るための手堅い金融商品としては、「個人向け国債」が考えられるでしょう。

個人向け国債は、国が発行する債券になります。

国が利子の支払いと、 私たちが投資する時に支払う元本の支払い(償還といいます)を行いますので、国に万一のことがないと考えるなら、安全、安心の投資先だと言えるでしょう。

個人向け国債の利子は半年に1回支払われ、元本は満期時に額面金額で償還されます。

たとえば、50万円で個人向け国債を購入する場合を考えてみましょう。満期になるまでの間は、利子が半年に1回支払われます。そして、満期になったら、最初に投資をした額面50万円が支払われて戻ってきます。

定期預金などの場合には、満期の時に利子と元本である投資金額を合わせて受け取りますが、個人向け国債の場合には、満期までの間は半年ごとに利子を受け取り、満期の時には元本を受け取ります。

定期預金などに預けた場合には、満期まで利子を受け取ることができません。

満期までお金を運用してはいますが、満期までの間に利子などの収入源がないことになりますから、投資資金に余裕がない限り、長い期間投資することは避けたいところです。

これに対して、個人向け国債は、満期までの間、半年ごとに利子を受け取ることができ、定期的な収入源を確保できます。定期的に受け取れる利子が不労収入にあたります。

個人向け国債と定期預金の利子の違いの図
(画像=リスクが嫌いな人のお金の教科書)

個人向け国債の金利は最低限でも銀行定期の5倍

個人向け国債には、満期までの期間が10年の「変動10年」に加え、満期までの期間が5年の「固定5年」と満期までの期間が3年の「固定3年」の3種類があります。どれも1万円から購入することができ、投資金額に応じて、利子が半年ごとに受け取れる仕組みになっています。

個人向け国債の名前が変動と固定に分かれているのは、金利の仕組みなどが異なっているからです。

「変動10年」は満期までの間、金利が変動する変動金利タイプになりますが、「固定5年」と「固定3年」は発行時に設定された利率が満期まで変わらず、満期までずっと続く固定金利タイプです。

変動金利タイプは、経済情勢などに応じて実勢金利が変動するような場合には適用金利も変動しますので、半年ごとに適用される金利も変動します。 そのため、「変動10年」の個人向け国債に投資した場合には、満期を迎えてみなければ投資成果としての不労収入をどの程度受け取れるのかはわかりません。

一方、固定金利タイプはあらかじめ金利が決められた条件で発行されますので、投資した時点で、投資成果としての不労収入をどの程度受け取れるのか把握することができます。

ただ、金利がまったく何もわからないようでは投資するかを決められませんから、変動と固定にかかわらず、最低限となる金利は税引き前0.05%(年率)と決められています。

「変動10年」と「固定5年」、「固定3年」は満期までの期間が異なっていますから、基準となる金利を決める際に参考にする指標も異なっています。

ただし、〝超低金利〞の状況が国の金融政策として続いていますから、現在はどの個人向け国債も金利は下限の0.05%が適用されています。

どれに投資したらいいのかと言えば、変動タイプも固定タイプも金利に差がない状況ですからどれでもいいでしょう。

定期預金の1年物の金利が税引き前0.01%でしたから、最低限の金利水準でも5倍の金利です。50万円を定期預金に預ければ税引き前で50円の利息のところ、個人向け国債は税引き前で250円の利息となります。

しつこいですが、個人向け国債に投資した場合、現在の金利水準が続くと仮定した場合には、お金を2倍に増やすためには0.05×年数=72ですから、1440年かかることになります。定期預金よりも好金利だからと注目を集めている個人向け国債に投資しても、ネット定期よりも金利が低いのが現実ですし、生きているうちにお金を2倍に増やすことがとうていできない現実を認識すべきでしょう。

「固定5年」と「変動10年」なら変動を選んだほうがいい!?

ちょっと話が逸れてしまいましたが、個人向け国債を満期まで保有していれば、少ないながらも半年ごとに不労収入は得られます。

ただ、途中で事情が発生して、中途解約をしなければいけなくなったとしましょう。満期まで保有せずに個人向け国債を中途解約する場合は原則1年が経過した後はいつでも中途解約ができますが、「直前2回分の税引き前の利子相当額×0.89685」が差し引かれる仕組みになっています。

超低金利時代にはできるだけコストとしてかかる手数料を発生させないことが大切ですから、まずは満期までの期間の長さで個人向け国債を選べばいいのではないでしょうか。

中途解約する場合、直前2回分の利子相当額が手数料として差し引かれるということは1年分の利子収入がなくなるわけですから、1年間をムダに預けてしまったということになりかねないからです。

また、現在の〝超低金利〞が終了して金利が上昇していくと考えるのであれば、金利が固定されずに変動する「変動10年」を選択したらよいでしょう。金利が上昇する動きをキャッチアップできる仕組みになっているからです。

ただ、ここ数年は国の金融政策として超低金利に誘導することで、戦後2番目の景気回復が続いている状況です。そうした背景を考えると、金利が上昇する局面がいつになるのかというところではあります。

リスクが嫌いな人のお金の教科書
横山利香(よこやま・りか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー。
金融系出版社を経て独立。株式や不動産など、投資に関する執筆やセミナー、投資塾などを開催している。著書に『お金を増やす勇気 貯金から投資へマインドチェンジする! 知識ゼロでもわかる!投資の始め方』(日本文芸社)、『図解10万円から始める!誰でもラクラク株投資生活』(辰巳出版)などがある。

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