(本記事は、横山利香の著書『リスクが嫌いな人のお金の教科書』WAVE出版の中から一部を抜粋・編集しています)
株式投資の儲けには「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」があります
REITの分配金は、株式投資の配当金のようなものと解説しました。
株式で配当金を出している企業は数多くあります。配当金を出している企業の株式を購入して株主になることで、配当金を受け取ることができるようになります。
銀行の定期預金の金利などは、史上類を見ないほどの低金利に設定されていて、お金を増やすことが難しい状況にあることは、すでに何度も説明してきました。
こうした状況もあり、安定的に収入を得られる配当金(後述しますが、インカムゲインに該当)に注目が集まってきているのです。
ところで、株式投資ではどのような仕組みで儲けられるのか、考えてみましょう。株式投資で儲ける方法は基本的には2つあり、「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」に分けられます。
まずはキャピタルゲインから見ていきましょう。
株価の安い時に株式を購入して、株価が高くなったら売ります。この買った価格と売った価格の差額が儲けになります。株価が変動することによって得られる利益で、株価が値上がりすれば儲かりますが、値下がりすれば損失を被ることになります。この儲けがキャピタルゲインになります。
REITのところでも解説しましたが、株式は証券取引所に上場している金融商品ですから、自分で売買タイミングを判断して、自分で株式の取引を行わなければなりません。
ただ、株価は時々刻々と変動していますから、値下がりして損失が発生することもあり、いつも儲かるわけではありません。値上がり益を得られるように、売買タイミングには細心の注意を払わなければなりません。
キャピタルゲインは大きく儲けられるイメージがありますが、いつ買っても儲かるわけではありません。時には、経営が破綻して、上場廃止になる場合もあります。
たとえば、私たちが旅行に行く時の移動手段として利用しているひとつに飛行機があります。飛行機と言えば、ANAホールディングス(9202)が運航しているANA(全日空)か日本航空(9201)が運航しているJALを思い浮かべる人が多いのではないかと思います。現在は両社ともに証券取引所に上場しています。
しかし、2010年には日本航空が経営破綻により上場廃止となり、2012年に再上場を果たしたという過去があります。日本を代表する企業であっても、上場廃止になる可能性があることは認識しておくべきでしょう。
このように、株式が上場廃止のような事態になれば、投資したお金がどれだけ戻ってくるのかという事態になるわけですから、株を取引することに不安を感じる人が多いのかもしれません。
ちなみに、企業名の後についている4桁の数字は、REITでも解説しましたが証券コード(銘柄コード)になります。上場している企業一つひとつに証券コードが割り当てられていて、この4桁の証券コードを指定して、自分で売買を行うことになります。
一方、インカムゲインは、株を保有することで安定的かつ継続的に得られる収入のことを指します。株式投資では企業が株主に対して行う配当金のことを指していて、株式投資での不労収入にあたります。
そもそも株式会社が資金を集めるために発行するものが株式です。株式を買うことで、投資家は企業の株主になることができ、株主は企業への出資者、オーナーになります。
企業としては、株主から集めたお金は返さなくてもいいため、できれば多くの投資家に長期的に株主になってもらいたいわけです。そこで、企業は事業活動で得た利益の一部を、配当金という形で株主へ分配、還元するのです。
企業は株主に対して、事業活動の成果として得られる利益を配当として支払うわけですから、配当金はさまざまな要因で変動することになります。
たとえば、業績が好調で利益が増えた場合には、配当金が増えることもあります。
これを増配と言います。反対に、業績が低迷すると利益が減少しますから、その場合には配当金が減ることになります。これを減配と言います。
ほかには、たとえば企業が大きく成長する過程で、上場している証券取引所を変更する、いわゆるステップアップする場合もあります。このような場合にはおめでたいということで、記念の配当金が出ることもあります。
リスクを抑えた株式投資ならインカムゲインを狙ってみましょう
株式投資でキャピタルゲインを狙うというのは、値上がり益を得るということです。値上がり益を得るには、株価が安い時に買って、高い時に売るという売買タイミングがとても重要です。
しかし、それは簡単なことではありません。プロの投資家や専門家でもタイミングがすべてわかっているものではなく、まして初心者や素人が簡単に儲かるような甘いものではないのは事実です。
リスクを抑えて、かつ初心者でも儲けられる可能性があるのは、インカムゲイン狙いのほうです。
とはいえ、REITの分配金は、賃貸収入などが安定していることもあって、安定した分配金の受け取りが期待できますが、一方、株式における配当金は、企業業績の影響により変動しやすいという面もあります。
企業はその時の業績に応じて配当金を株主に分配するわけですから、業績の好調が持続的に推移しなければ、将来にわたって現在の水準の配当金を受け取れるとは限らないことになります。
たとえば、東京電力ホールディングス(9501)は現在、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震、いわゆる東日本大震災によって原発事故が発生し、その影響によって配当を行っていません。いわゆる無配です。
しかし、事故が発生する前は、日本の株式市場が低迷していても配当利回りは2%台を推移することが多く、安定して配当を出す高配当株のひとつだったのです。
不測の事態が発生したり、景気が悪化して企業業績が低迷したりすれば、どんなに優良な高配当株でも無配に転じることがあるわけです。
幸いにも証券市場に上場している企業は約4000社にものぼります。もしインカムゲインを狙って安定した不労収入の確保をめざすなら、数多くある企業の中から、配当金をたくさん出してくれて、なおかつ好業績が持続している企業を投資先に選ばなければなりません。
そして、安定した配当を継続することができるのか、企業業績の動向を注意深く見守る必要があるでしょう。
では、どのように配当金を出している企業を探せばいいのでしょうか?
簡単な方法としては、証券会社のホームページなどにある、機械的に銘柄を探し出してくれる「スクリーニング」という機能を使うことです。「配当」などの項目で企業を探すことができます。
また、東洋経済新報社が出版している『会社四季報』という分厚い雑誌やインターネットアプリ「会社四季報株アプリ」というアプリなどで検索することも可能です。まずは配当を行っている企業を探し出しましょう。そして、気になる企業をいくつか選んだら、お目当ての会社のホームページにいき、投資家向けの情報を掲載している「投資家情報」や「IR情報」などで配当金がいくらか、配当政策を今後も維持できる経営状況かを調べてみましょう。
配当金は一般的に、1株当たりの1年間に支払われる金額が記載されています。株式は単位株制度をとっていて、売買できる単位は基本的には100株に統一されています。そのため、株を注文する時は、最低100株から100株単位で購入するのが通常です。
1年間の配当金額は、配当金の金額に購入する株数を掛けることで求めることができます。たとえば、1株の配当金=100円となっている場合には、最低100株を購入した場合には、1年間で受け取れる配当金の金額は、100円×100株で1万円(税引き前)になります。