本記事は、内藤 誼人氏の著書『仕事は心理戦が9割』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

相手のウソをいとも簡単に見抜く方法
● ウソは表情やしぐさに表れる
相手が本当のことを語っているかどうか、どうすればわかるのだろうか。ウソを見抜きたいのであれば、相手の発言ではなく、相手の行動やしぐさに注目するとよい。
口では簡単にウソをつけるが、しぐさのほうはうまくコントロールできないことが多いからだ。
英国リンカーン大学のA・マロノは、55名の本物の犯罪者の取り調べビデオについて、その発言があとでウソだとわかった部分と、本当のことを語っていることが明らかになった部分を抜き出して比較してみた。
すると、ウソをついているときには、次のような共通の特徴が見られたという。
なお、数値は、ウソをついているときに、それぞれのしぐさが見られた頻度(回数)である。
▪ 頭を振る:66
▪ 目を伏せる:58
▪ 眉をしかめる:44
▪ 眉を上げる:39
▪ 口をぎゅっと引き結ぶ:22
● 目は口ほどにものを言う
ウソをつく人は、どうも頭を左右にぐらぐら揺らすようなしぐさを見せてしまうようだ。おそらくは心の中に迷いがあって、それが頭を振るしぐさになって表れているのではないかと思われる。
また、ウソをついている人は、目の前の相手と視線を合わせなくなる。目を見つめられると、相手に自分のホンネが見抜かれてしまうことを恐れるからだろう。
「目は心の窓」という言葉もあれば、「目は口ほどにものを言う」という表現もある。
感情は「目」に表れやすいので、目を伏せることによってそれを隠そうとするのではないだろうか。
眉をしかめるのは、不機嫌なときや、怒りの感情に見られるサインでもある。人は「納得がいかない」というときに眉をしかめる。部下に残業の指示をしたとき、口では「わかりました」と返事をしてくれたとしても、同時に眉をしかめているのなら、本当は残業などしたくはないというのがホンネだろう。
目を大きく見開こうとすると、同時に眉も上がる。こういうしぐさは、「私の目を見てくださいよ、これがウソをつく人の目だと思いますか?」というサインを伝えるものであるが、ウソをついている可能性が高い。
● 口元にも注意
口をぎゅっと引き結ぶのは、「余計なことを話していると、ウソがばれてしまう」ということを怖れるしぐさだ。
話せば話すほど、話の内容に一貫性を保つのが難しくなるので、口をぎゅっと閉じることで、言葉を発しないように気をつけているのだろう。
ウソをつく人は、ウソをつく人ならではの表情やしぐさを見せる。相手にだまされないようにしたいなら、発言の内容に意識を向けるのではなく、表情やしぐさをじっくり観察したほうがよい。
人は、しれっとした顔でウソをつく動物だ
● 私たちは本当に正直に生きられるのか?
私たちは、幼稚園や保育園の頃から「ウソをついてはいけない」「正直者でいなさい」というしつけや教育を受けるものだが、ウソをつくのは人間の本性のようなものである。だれでも、しれっとした顔でウソをつくものなのだ。
フランスにあるパンテオン・ソルボンヌ大学のニコラス・ジャクメは、オンラインで実験参加者を募集し、1,366名の参加者にコイントスの実験をしてもらった。コイントスを10回してもらい、オモテが出るたびに10セントもらえるという実験である。
なおジャクメは、コイントスを始める前に、半数の人には「正直に報告する」という宣誓をしてもらった。残りの半数には、そういう宣誓を求めなかった。
実際にコイントスをしてもらうと、宣誓をさせた条件では、たしかに大きなウソ、すなわち10回ともオモテだったと報告してお金をもらおうとする人の割合は減らすことができた。
● そもそも人間はウソをつく生き物
けれども、オモテの数を少し多く報告してお金をもらおうとする人は、宣誓をしない条件と同じだった。「大きなウソ」はつかなくとも、「小さなウソ」は正直に報告するという宣誓をさせても効果はなかったのである。
人間は、自分になんらかの利益があると思えば、平気な顔でウソがつける。
善良そうに見える人でも、正直そうに見える人でも、人間ならだれでも多少のウソはつくものだと思っていたほうがいい。
そう思っていれば、かりにウソをつかれても怒ったりすることなく、「まあ、人間ならウソくらいつくよな」と気軽に受け流すことができるからである。
たとえば「これ以上の値下げは、原価割れしちゃいますので」と相手が言ってきても、たいていはウソである。本当はもっと値下げができるはずだ。
● ウソは仮定法で見破る
では、どうすれば相手のウソを見破れるのかというと、仮定法を使って質問してみるのがよい。少し古い本だが『営業の達人』(G・カラス著/片山耕一訳、ダイヤモンド社)に出ていた事例を紹介しておこう。
「あの土地を100坪で買うと、いくら?」
「坪当たり25万です」
「それじゃ500坪にすると、いくらになるの?」
「1坪22万円になります」
「今、手持ちの敷地は全部でどれくらい?」
「2,000坪はあるでしょうか」
「もし現金ですべて購入するとしたら、いくらにする?」
「もし全部購入していただけるのなら、1坪18万円でけっこうですよ」
このように質問していけば、1坪18万円でもなお不動産屋に利益が出ることがわかるというのである。
人間はウソをつくものだから、仮定法をいろいろ使って質問をぶつけて探りを入れるようにすれば、ウソも見抜けるだろう。

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