この記事は2025年12月19日にSBI証券で公開された「2026年の有望銘柄を探る(1)~来期大幅増益期待12選」を一部編集し、転載したものです。
目次
2026年の有望銘柄を探る(1)~来期大幅増益期待12選
東京株式市場はやや軟調な展開です。日経平均株価は10月末に過去最高値(終値ベース)52,411円を付けた後、株価水準を下げ、5万円前後でもみ合う展開です。米ハイテク株下落の影響を受け、日経平均株価への寄与度が大きいAI・半導体関連株が冴えない展開になっていることが響いています。しかし、それら以外の銘柄は相対的に堅調で、TOPIXは12月15日に過去最高値を更新しています。
一般的に海外投資家の多くは、12月半ばごろから「クリスマス休暇」を迎えるとみられます。市場参加者が減り、方向感が出にくい状況はもう少し続くかもしれません。この季節は、経済誌等で新年の相場予想が企画されるケースが増え、投資家の関心も新しい年に移りがちになると考えられます。
「日本株投資戦略」でも、機会を見つけて、新年の相場見通しや有望テーマについて考えていきたいと思います。
今回の「日本株投資戦略」では、株価形成のベースとなる企業業績にスポットを当て、来期大幅増益が期待できる銘柄を紹介すべくスクリーニングを行いました。来期大幅増益が期待できる銘柄の中には、今期大幅減益予想からの反発で増益率が大きくなっている銘柄も多くありますので、「今期増益予想」にもこだわってみました。
◎選定条件
(1)東証プライム市場に上場
(2)時価総額1,000億円以上
(3)3月決算銘柄
(4)業績予想を公表し、市場予想を形成しているアナリストが3名以上
(5)2025年3月期の営業損益・純損益(当期損益)が黒字
(6)2026年3月期(今期)第2四半期累計(2025年4~9月期)純利益が前年同期比増益、かつ事前の市場予想純利益を超過
(7)2026年3月期会社予想純利益が第2四半期決算発表時点で下方修正されていない
(8)2026年3月期市場予想純利益が会社予想純利益を超過、かつ10月17日時点から上方修正されている
(9)2026年3月期の市場予想営業利益・純利益が前期比10%超の増益
(10)2027年3月期(来期)の市場予想営業利益・純利益が前期比20%超の増益
(11)信用規制・注意喚起銘柄を除外
※「市場予想」は12月17日時点のBloombergコンセンサスです。
掲載銘柄は上記のすべての条件を満たしています。掲載の順番は2027年3月期(来期)の市場予想増益率(前期比)が高い順番となっています。
一部掲載銘柄を解説!
太陽誘電(6976)~AIサーバー向け市場の拡大に期待
積層セラミックコンデンサを中心とする電子部品メーカーです。
売上高の68%は、電気を一時的に蓄えノイズ除去に使用される「コンデンサ」です。製品は通信機器(販売先別構成比24%)、自動車(30%)、情報インフラ・産業機器(20%)、民生機器(8%)など幅広い分野で採用されており、情報インフラにはサーバーも含まれます。地域別売上は中国32%、香港13%、欧州8%、北米7%、日本7%で、海外比率93%に達するグローバル企業です(2025年3月期)。
主力製品は積層セラミックコンデンサ(MLCC)です。絶縁層と電極層を交互に積層する構造で、大容量かつ小型化が可能です。スマートフォン、電気自動車、AIサーバーなどに不可欠です。世界シェア(2021年度・出荷金額・経産省調べ)は村田製作所39%、韓国SEMCO19%に次ぎ、当社は第3位です。スマホ1台に約1,500個、EV1台に約10,000個、AIサーバーには最大2万個搭載とされ、AI普及が市場拡大を後押ししそうです。
11月6日に2026年3月期第2四半期(2025年4~9月期)決算を発表し、同時に2026年3月期(通期)会社予想を上方修正しました。営業利益は160億円→180億円(同72.1%増)、純利益は80億円→90億円(同286%増)への修正です。背景は販売価格の下落幅縮小や為替前提の見直し(1ドル140円→147円)などですが、為替効果(営業利益+42億円)を除くと「実質下方修正」との指摘もあり、株価は決算翌日以降下落しました。インダクタ利益の下振れ懸念も影響しています。
一方、AIサーバー市場の拡大や半導体技術革新に伴いMLCC需要は増加基調です。グローバルインフォメーション(4171)の予想では2023?2033年の年率成長率5%超が見込まれています。9月にはサーバー基盤向けの小型・大容量MLCCを発売し、技術力も維持。営業利益は2025年3月期104億円→2026年3月期187億円→2027年3月期304億円(Bloomberg集計の市場コンセンサス)と回復期待が高まります。
日本精工(6471)~フィジカルAI”時代のロボティクス基盤部品企業
ベアリング大手で精密機械部品の製造・販売を行う企業です。自動車部品や産業機械向け製品を提供し、世界中で事業展開しています。
「ベアリング(転がり軸受)」は機械の軸を支え、摩擦を低減して円滑に回転させる部品です。自動車1台あたり100?150個程度使用され、自動車、産業機械、航空・宇宙など幅広い用途があります。当社は国内トップ、世界3位のシェア(2025年3月31日時点)を誇り、国内のライバルはNTN(6472)、ジェイテクト(6473)などです。
売上構成比(2025年3月期)は「自動車事業」51%、「産業機器事業」38%で、地域別内訳は日本33%、中国22%、米州19%、その他アジア14%、欧州12%と、グローバル展開が進んでいます。
11月4日発表の2026年3月期第2四半期(2025年4?9月期)決算に合わせ、2026年3月期の業績予想を上方修正しました。予想営業利益は220億円→300億円(前期比5.4%増)となりました。自動車生産の上振れ、中国補助金政策による需要増のほか、持分法適用会社の完全子会社化による負ののれん発生益が寄与しました。
また10月30日にはAIロボティクス企業「アールティ」へ戦略的出資を実施し、ロボット事業強化を本格化させる方針です。フィジカルAI領域での技術連携が期待されます。
配当は安定還元を基本方針とし、配当性向30?50%、DOE下限2.5%を目標としています。会社計画では2026年3月期の年間配当は前期同額の34円を予定しています。12月17日終値952.9円で計算する予想配当利回りは3.5%と、好配当利回りを期待できる銘柄としての魅力もあります。
イビデン(4062)~AI半導体の技術革新を支える「ICパッケージ基板」大手
主力事業は売上構成比53.4%の「電子」事業で、営業利益構成比も56.3%と稼ぎ頭です。モバイルPCやサーバー向けのICパッケージ基板を製造しています。ICパッケージ基板は半導体チップを保護し、マザーボードやプリント配線板と接続するための電気信号回路を持つ基板です。その他には自動車向けが中心の「セラミック」(22.8%)、「その他」(23.8%)があります。
従来はインテル向け比率が高く2024年3月期は売上高の30.9%を占めていましたが、2025年3月期はインテル20.8%、エヌビディア20.3%、AMD11.0%と、AIサーバー向けが急拡大しています。特にエヌビディア向けICパッケージ基板は当社の事実上の独占供給とみられます。
10月30日の2026年3月期第2四半期決算は売上高1,954億円(前期比7.7%増)、営業利益325億円(同14.2%増)と好調。「電子」事業が大幅増収増益となり、AIサーバー向けが牽引しました。ICパッケージ基板のAIサーバー向けシェアは70?80%に達しています(会社説明資料)。
さらにASIC向け受注機会の拡大意向も示され、ネットワークASICに強い企業との取引も進展しているようです。顧客基盤の多様化が進んでいます。
好調な業績を受け、2026年3月期の売上高予想は4,150億円→4,200億円(前期比13.7%増)、営業利益は550億円→610億円(同28.1%増)へと上方修正されました。利益率向上も確認され、AI半導体関連需要の恩恵を強く受ける構造に変化しています。
2025年の株価は堅調に推移してきましたが、11月以降はAI半導体株の調整とともに弱含みです。ただし顧客基盤の拡大と利益率改善を踏まえると、調整局面は投資機会になる可能性があります。
アドバンテスト(6857)~業績予想の上方修正と自社株買いを発表
半導体テスタのトップ企業です。テスタは半導体製造工程で複数回、製品に欠陥がないか否か検査を行う装置です。これまで、米テラダイン(TER)と市場のシェアを二分してきました。半導体テスタ市場の当社世界シェアは、2017年の36%から、2024年には58%と拡大傾向で、当社の存在感が増しています。
AI(人工知能)向け半導体のテスタ市場では圧倒的なシェアを有しています。AI半導体最大手であるエヌビディア(NVDA)は、GPUに台湾TSMCのパッケージ技術を採用していますが、同技術の半導体テスタ市場ではシェア8割と推測されています。
業績は半導体市場の拡大を背景に、2021年3月期~2023年3月期までは3期連続で増収増益を確保。2024年3月期はメモリ等の半導体市場の調整を受け減収減益となりましたが、2025年3月期は売上高7,797億円(前期比60.3%増)、営業利益2,281億円(同179%増)、純利益1,611億円(同158%増)とそれぞれ過去最高水準を記録しました。年間を通じ、AI関連半導体向けテスト需要が高水準で推移しました。
7月29日(火)に発表された2026年3月期(2025年4月~6月)決算では純利益が901億円(同277%増)と好調。会社側は2026年3月通期の予想純利益を従来予想の1,790億円から2,215億円に上方修正しました。10月28日に発表された2026年3月期第2四半期(2025年4月~9月)決算でも純利益が1,698億円(同144%増)と好調持続。第2四半期の上振れを背景に、2026年3月通期の純利益は2,750億円(前期比70.6%増)に上方修正されました。
AI向け半導体は複雑かつ高価であり、歩留まりや信頼性をあげるために、多くのテストが行われるようになっているようです。複数機能を1つのチップに集約したSoC(システム・オン・チップ)向けが、半導体の複雑化を背景に旺盛な需要が見込まれます。
HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)・AI向け半導体の数量増加・複雑化を受け、半導体テスト需要は当初予想を上回って推移しています。地政学的リスクや為替リスクは残るとみられますが、会社側は不透明感は後退したとみています。2027年3月期に終わる中計期間中の事業環境は良好に推移すると会社側ではみています。
決算発表とともに、自社株買い計画を発表しました。
・取得可能株数 1,800万株(発行済株数の2.5%)
・取得価額上限 1,500億円
・取得予定期間 2025年11月から1年間
株価はAI・半導体関連株の調整を受けて調整中ですが、AI半導体市場の技術革新はテスト需要をさらに高めるとみられ、当面は高い成長率が継続しそうです。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。





