本記事は、内藤 誼人氏の著書『仕事は心理戦が9割』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

仕事は心理戦が9割
(画像=Dusan_Petkovic/stock.adobe.com.jpeg)

仕事のやり方は、変幻自在に変えていく

● 環境に合わせて「実験」してみる

自分のコミュニケーション能力や、セールス能力を磨きたいのであれば、ある特定のやり方にこだわるのでなく、いろいろなアプローチを実験してみるとよい。
普段は、ぐいぐいと積極的にプッシュするセールスをしていても、たまにはお客にたくさん話をさせるという反対のやり方を試してみるのだ。

お客によって、アプローチのやり方を変えることを、「適応型セールス」と呼ぶのだが、いろいろなやり方を「実験」するようにすると、自分のセールスに幅を持たせることができるし、お客のタイプによって違うアプローチもできるようになる。

● 「選択肢」は多いほどいい

米国インディアナ大学のロザン・スピロは、268名のセールス担当者に協力してもらい、16項目の「適応型セールス」の心理テストを作成した。
そのテスト項目を見ると、「あるやり方でうまくいかないときには、違うやり方を試してみる」「いろいろと実験してみるのは楽しい」といった項目が並んでいる。
お客にはいろいろなタイプがいる。それこそ千差万別だ。
だから、ある特定のやり方だけにこだわってはいけない。こちらもさまざまなアプローチができるよう、普段から準備しておいたほうがよい。

セールスの仕事をしている人は、ともすると自分の「得意な型」に縛られてしまうことが多いので、まずは軽い気持ちで「実験してみる」と思えばよいだろう。
最初はうまくいかないかもしれないが、そのうちに「こういうアプローチもアリだな」ということに気づくかもしれない。

食べ物の食わず嫌いもそうであるが、仕事のやり方についても同じことが言える。
セールスのアプローチもいろいろあるのであって、まずはいろいろと試してみることが大切だ。
いろいろなやり方を試すことによって、お客のタイプに合わせることができるようになる。

● カメレオン型で生きる

セールス以外の仕事をしている人も、仕事のやり方についてある特定のやり方をつづけるのではなく、新しいやり方もたまには実験してみるとよいだろう。
新しいやり方を試してみると、今までよりもはるかに生産性が高まる、ということもあるからである。

ペンシルバニア州立大学のマーティン・キルドフは、209名のMBA卒業生をその後5年間追跡調査してみたのだが、カメレオンのように、自分の言動をモニターして、それぞれの環境にうまく適応する人ほど、昇進しやすいことがわかったという。
環境に合わせて自分を変えることができなかった恐竜は滅びてしまい、環境の変化に適応した動物は生き延びることができた。同じことは、私たちにも当てはまるのではないかと思われる。

お客に迷惑をかけたときは絶好のチャンス

● 問題発生後の対応が分かれ道

お客に迷惑をかけてしまったときには、「これはチャンスだ」と思うようにするとよい。
アリゾナ州立大学のメアリー・ビットナーによると、問題が起きたときにどう対応するかが、お客の満足と不満足を分けるクリティカル・ポイント(臨界点)であるという。
たとえ迷惑をかけても、その後の対応が素晴らしいものであれば、お客の満足度は大きく高まるのである。

ビットナーは、レストラン、ホテル、航空といったサービス業について、75名のお客(平均36.5歳)にどういうときに満足し、どういうときに不満を感じるかの事例を思い出してもらった。
すると、お客の満足と不満足を分けるものは、問題が起きたときのスタッフの対応にあることがわかった。

● 迷惑をかけてしまったときはチャンス

レストランでいうと、間違えた料理をお客に出してしまったとき、すぐに正しい料理を出すだけでなく、お詫びとしてアイスクリームをサービスするとか、その場で10%を割引くとか、あとでお詫びの手紙を送るなどの対応をしてあげよう。
するとお客は不満に感じるどころか、かえって通常のサービスを受けたとき以上に感激して、そのレストランのファンになってくれるというのである。

ホテルでいうと、お客が予約してあった部屋がシステムの手違いなどで埋まっているときには、すぐにグレードの高い部屋を用意してあげると、やはりお客は不満どころか、大いに満足してくれるだろう。
このように考えると、お客に迷惑をかけてしまうことは、むしろ絶好のチャンスだと言える。もちろん、だからといって、お客にわざわざ迷惑をかける必要はないのであるが。
通常のサービスを受けても、お客の記憶には残らない。なぜなら、通常のサービスだからである。

● ネガティブ感情は忘れにくいことを利用する

ところが、迷惑をかけられたときは違う。そういう出来事は、トラウマとして記憶にしっかりと残りやすい。
私たちは不愉快なことほどよく覚えているものなのだ。だからこそ、不愉快を感じたときに、スタッフが好ましい対応をしてくれると、その思い出もずっと残るのである。

多くの人は、お客に迷惑をかけてしまったときに、後始末をすることが煩わしいというか、「うわぁ、面倒くさい」と感じてしまうのであるが、そういう考え方はよくない。
神さまがくれたチャンスだと考えて、お客に感激してもらえるような対応をしよう。

仕事は心理戦が9割
内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースにした心理学の応用に力を注いでおり、とりわけ「自分の望む人生を手に入れる」ための実践的なアドバイスに定評がある。『図解 身近にあふれる「心理学」が3時間でわかる本』『面倒くさがりの自分がおもしろいほどやる気になる本』『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(以上、明日香出版社)など、著書多数。

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