本記事は、上阪徹氏の著書『文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

オフィスでのプロジェクト
(画像=NINENII/stock.adobe.com)

必要なのは、説得・納得できる「素材」

文章の才能はいらない、と書く理由

私は書く仕事をしていますが、「文章の才能はない」とはっきり感じています。

私は思い切りそれを自覚しているのですが、では書く才能がないのに、どうして書く仕事で食べてきているのか。

30年近くフリーランスとしてたくさんの記事を書き、50冊も自分の著書を書いたりしているではないか。ましてや、他の著者の本を、本人に取材して本人に代わって書く、などという仕事までしているではないか。

そんなふうに思われる人も実はよくおられるのですが、私はこう思っています。

「書くことは、この仕事の本質ではない」

私の仕事は、小説を書くことやエッセイを書くことではありません。

もし、そうなら書く才能は必要だったと思います。

しかし、そうではないのです。

ビジネス関係を中心に、いろいろな人にベネフィットを与えられるような記事を書く。そのためには、書くこと以上に大事なことがあるのです。

それこそが、的確な「素材」をチョイスする力であり、わかりすく読者に伝えていくことができる力です。おそらく私には、ここに多少の才能があったのだと思っています。

では、仮に私に文章の才能があったとして、的確な「素材」を選べなかったとしたらどうか。

経営者向けの記事を、若手社員が知りたいような内容で書いてしまったらどうなるか。あるいは文章は立派に書けるけれど、読みにくく読者が理解しにくいものになっていたらどうか。

「書きたいこと」ではなく「書くべきこと」

私の仕事は、小説家やエッセイストなどと違い、文章を楽しんでもらうような世界ではないのです。それは「目的」が異なります。あくまで、読者に役に立つ「素材」こそが重要なのです。

それこそ、しっかり「素材」がチョイスされているのであれば、荒削りの原稿であっても充分に評価してもらえるのです。立派な文章だけれど、ピント外れの「素材」が使われているものよりも、はるかに。

私が長くこの世界で食べてくることができ、たくさんのチャンスをもらえたのは、このことに早いタイミングで気づけたからだと思っています。

問われるのは、「どう書くか」ではなく、「何を書くか」。そして先にも少し触れていますが、「書きたいこと」を書くのではなく、「書くべきこと」を書く。もっといえば「読者が知りたいこと」を書く、ということです。

この気づきは、私が書くのが嫌いで苦手だったことが大いに影響したと思っています。だからこそ、この仕事の「本質」に気づくことができたのです。

その意味で私は、あえて苦手なことを職業にしてみるというのは、実はポジティブな職業選択の方法なのではないか、と思っています。そのほうが案外、人生はうまくいくのではないか、と。苦手だからこそ本質に気づくことができるからです。

好きなこと、得意なことをするだけが人生ではないのです。

ビジネスで求められるのは、説得力であり納得力

私の場合は、案件ごとに目的や読者が存在するわけですが、では、一般的なビジネスで求められる「素材」=事実、数字、エピソード(コメント・感想)とは、どのようなものになるのか。

それは、「説得材料」であり、「納得材料」だと私は思っています。

たとえば、

  • 新しいプロジェクトをやりたいという提案書を上司に書く
  • どうしても一度、商談をさせてほしいというメールを取引先の社長に書く
  • 広く自分を社内に知ってもらうための社内報エッセイを社員に向けて書く
  • 失敗をしてしまったことのお詫び・謝罪の手紙を顧客に書く

こういうときに必要になるのは、それがなんなのかを説明するための「素材」であり、その実現の裏づけとなる「素材」、起きてしまったことを解説するための「素材」であるはずです。そうすることで、読み手は説得力や納得性が得られる。

いくら熱く、饒舌に、立派に上手に文章を書いたとしても、説得材料が弱いものであるならば、納得はしてもらえません。

根拠をどんどん挙げ、論理立てて使う

たとえば提案なら、それを実現させたいという根拠がしっかりあるはずです。プロジェクトの提案なら、このプロジェクトはなぜやるべきなのか、理由が間違いなくある。

このプロジェクトはどんなものなのか。このプロジェクトをやれば、会社にどんなベネフィットをもたらすことができるのかを語れないといけない。それもないのに、提案が受け入れられるはずがありません。

そしてプロジェクトは何かという説明、さらにはプロジェクトをやるべきだという根拠こそ、まさに「素材」です。「素材」を「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」で洗い出してみるのです。

文章の「素材」というと、難しく考えてしまいがちなのですが、ここぜひやってみてほしいのが、「もし、読者が目の前にいるとして、話して説明するとすれば、どうするか」です。

提案でもお願いでも、人は誰かに何かを伝えようとするとき、間違いなく、その理由や根拠を伝えているはずなのです。

そうでなければ、自分の思いは達せられないから。しかも、とても論理的に説明をしていたりする。

子どもに電気自動車の素晴らしさについて説明するときと、50代の部長に電気自動車の素晴らしさについて説明するときには、最初に何を話すか、から、人は変えていくものです。そして、電気自動車の素晴らしさについて理解を深められるよう、根拠を展開していく。これこそが「素材」です。

まずは説明材料や根拠となる「素材」をどんどんリストアップしていくことです。どんな根拠を伝えていけば、説得材料になるのかを洗い出すのです。

そして、並べた「素材」をどうやって使えば、最も論理立てて理解できるかを考えていけばいい。

このとき、しゃべるつもりで考えたらいいのです。なぜなら、しゃべるも書くも、コミュニケーションのツールとしては同じだからです。そして、後にくわしく解説しますが、しゃべるときには案外、論理的にしゃべっている。

ぜひ、覚えておいてください。

メモする・選ぶ・並べ替える 文章がすぐにうまく書ける技術
上阪徹(うえさか・とおる)
ブックライター。1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。雑誌や書籍、Webメディアなどで執筆やインタビューを手がける。著者に代わって本を書くブックライターとして、担当した書籍は100冊超。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『マインド・リセット』(三笠書房)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)など多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。ブックライターを育てる「上阪徹のブックライター塾」を主宰。

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