本記事は、桑原晃弥氏の著書『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

砂時計
(画像=kai / stock.adobe.com)

強烈なプレッシャーがかかるのはよくありません。
でも、あれもこれもみんな順調というのも、よくないんです

――「イーロン・マスク」下

マスクの特徴の1つは置かれている状況が困難であればあるほどファイトを燃やすところと、どれほどの困難が横たわっていても決してギブアップしないところです。

テスラの会長に就任した当初、マスクは「次世代のGMになる」と話していましたが、やがて創業メンバーのジェフリー・ストラウベルはこう嘆くようになりました。

「自分たちが挑戦していることの難度を相当、過小評価していました。サプライチェーンの複雑さ、製造工程の複雑さ、電池設計の複雑さといったことです。まるで迷路の中にいる気分でした」

開発の困難さに加え、何度も資金難にあえいでもいます。2018年には「モデル3」の量産化の難しさから「自動車ビジネスは地獄だ」とさえ呟いています。

なぜこれほどの苦労を強いられても宇宙ロケットの開発や電気自動車の開発に突き進むのでしょうか。こう話しています。

「困難が多い事業こそ、やりがいが大きくて面白い」

マスクのことをよく知る人がこう評しています。

「どんなに厳しい状況でも生き残ってきた。働き続け、集中し続けた」

すさまじいプレッシャーにさらされると、たいていの人は判断ミスをしたり、あきらめてしまうものですが、マスクはあきらめることなく努力し続けます。こう話しています。

「暗闇のような日々の中で、絶望は頑張ろうという強烈なモチベーションにつながります。もしあなたの会社が大きな借金を抱えているなら、それは強いやる気にもなります」

だからこそ、マスクはこれまで不可能と言われた事業を可能にしてきたわけですが、さすがのマスクも2022年にはこうも言い始めています。

「強烈なプレッシャーがかかるのはよくありません。でも、あれもこれもみんな順調というのも、よくないんです」

マスクは自ら認めているように、強すぎるプレッシャーが続くと、「心の健康状態が波のように上下する」といいます。そのためには強すぎるプレッシャーは避けるべきなのでしょうが、一方で「順調過ぎても良くない」というところにマスクらしさもあります。順調だからこそツイッターという厄介者に手を出してしまう。マスクにとって適度なプレッシャーはモチベーションを維持するものなのかもしれません。

ワンポイント
プレッシャーさえも力に変えていく。

今の子たちには、逆境を人工的につくるしかないね

――『イーロン・マスク 未来を創る男』

マスクの子ども時代は決して幸せに満ち満ちたものではありません。父エロルの事業が成功したことで大豪邸で暮らし、海外旅行も経験していますが、両親の別居によって母親との生活を送ったこともあります。

学校も決して平穏な場所ではありませんでした。「手荒にするのはいいことだとされていた」と弟のキンバルが話しているように、身体の大きい子は小さい子を殴り、持ち物を奪うことも日常の出来事でした。マスクも身体が小さかった頃は、人間関係を上手にこなす器用さがないために、どこに行ってもいじめられたし、顔を殴られてもいます。マスクはこう言っています。

「殴られると人生がどう変わるのかは、殴られたことがある人でないと分からないでしょう」

やがて成長し、身長180センチ余りと背も高くなり、がっちりとした体格で、柔道も習うようになると、こう考えるようになります。

「手荒にしてくる奴がいたら顔の真ん中に思い切りパンチを叩き込めばいい。そうすれば2度と手荒な真似はしてこないと分かりました」

子ども時代には深刻ないじめにあって、何度も転校をしていますし、大きなケガもしています。

母親のもとを離れて父親と暮らすようになってからは、子どもたちを座らせたまま3時間も4時間も説教を続け、一切の口答えを許さない父親の横暴にも耐えています。「父は一緒にいて楽しいタイプの人間ではありませんでした」がマスクの父親評です。

こんな辛く厳しい子ども時代を送ったマスクですが、南アフリカを離れてカナダに移ってからはまさに生きていくために何でもするという生活も経験しています。さらに成功してからもプレッシャーを楽しむかのようにあえて逆境の中に飛び込んでいくような日々を送っています。

そのせいでしょうか自分の子どもたちを意識したこんな言葉を口にしています。

「学校では少々大変なこともあるだろうが、今の学校は過保護だから。今の子たちには、逆境を人工的につくるしかないね」

苦しい時代、辛い経験があったからこそ今のマスクがあり、絶望さえもあきらめずに乗り切る力を手にしたと言えます。

その自信がこんな言葉を口にさせたのかもしれません。

ワンポイント
逆境は生き抜く力と知恵を与えてくれる。
イーロン・マスクの名言
桑原晃弥
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『イーロン・マスクとは何者か』『逆境を乗り越える渋沢栄一の言葉』(以上、リベラル社)、『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP研究所)、『トヨタ式「すぐやる人」になれる8つのすごい!仕事術』(笠倉出版社)、『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学』(KADOKAWA)、『amazonの哲学』(だいわ文庫)、『イーロン・マスクの言葉』(きずな出版)、『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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