本記事は、桑原晃弥氏の著書『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

想像力
(画像=ImageFlow / stock.adobe.com)

どんなものにもためらってはいけません。
想像力が限界を決めてしまいます

――「セレブたちの卒業式スピーチ」

「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」は、「SFの父」ジュール・ヴェルヌの言葉です。一説には本人の言葉ではなく、ラ・フュイ夫人の創作ではとも言われていますが、『海底二万里』や『月世界旅行』『八十日間世界一周』といったヴェルヌの小説を読めば、ヴェルヌが言ったとしても何の不思議もない言葉とも言えます。

IT企業の創業者の中にはSF小説好きが多いというのはよく言われることですが、マスクも子どもの頃からたくさんの本を読み、その中に登場する宇宙の旅やスーパーヒーローに憧れています。中でもお気に入りはアイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズと、『銀河ヒッチハイク・ガイド』です。こう振り返っています。

「スペースXを作った背景には、『ファウンデーション』シリーズと第0条があります」

「『銀河ヒッチハイク・ガイド』に出会ったおかげで、存在の危機から抜け出すことができました。このお話、いろいろと微妙におかしく、とてもおもしろいんですよ」

このほかにも「スーパーヒーローは、いつも、世界を救おうと戦ってるんです」と話しているように、コミックに登場するスーパーヒーローにも心躍らせています。

ある人が日本の起業家はあまりSFを読まないのに対し、アメリカの起業家にはSF好きが多く、その差が発想力の差に関係しているのかな、という話をしていましたが、たしかにSF小説や日本の漫画の数々が描いた「未来」は着実に実現へと向かっていますし、マスクなど本気でSFの世界を実現しようとしています。

想像と科学というのはいつだってお互いに刺激し合いながら発達していくものなのです。途方もないことを想像して、口にして、それを実現するために遮二無二がんばるのがマスクのやり方です。

2012年、カリフォルニア工科大学の卒業式スピーチでマスクはこう語りかけました。

「どんなものにもためらってはいけません。(皆さんの)想像力が、限界を決めてしまいます。世界へ出て行き、魔法をつくり出してください」

多くの人は何かを夢見たとしても、「でも、こんなのできるわけないな」とやる前から諦めてしまいます。そんなことが続くとやがて想像すること、夢見ることすらやめてしまいますが、マスクは「自分で自分の発想を制限してはいけない」と説いています。

すごいものを「創造」するためには、最初から制限をかけるのではなく、目いっぱい「想像の翼」を広げることが大切なのです。

ワンポイント
何かを考える時、最初から「できっこないよ」と制限をかけるのはやめよう。

成功が続くと、リスクを取る気概が失われる

――「イーロン・マスク」下

「企業というのは成長して大きくなると夢やロマンが失われる」は、スティーブ・ジョブズの言葉です。どんな大企業も最初は数人でスタートし、そこで素晴らしいアイデアを生み素晴らしい製品をつくることで成長していくわけですが、成功が続き、大企業と呼ばれるようになるとリスクを恐れて夢やロマンが失われ、イノベーションを起こせなくなりがちです。

そんな大企業の足元を脅かすのが、米国ならガレージで起業する若者たちです。アップルもグーグルもアマゾンもガレージで生まれ、やがて世界を変える企業へと成長していますが、ガレージには新しいアイデアとやる気に満ちた若者が集まるというイメージがあります。こうしたベンチャー企業から見ると、大企業には資金も技術もノウハウもあるものの、肝心の夢とワクワク感が欠けていることになります。

マスクがつくり上げた格好いい電気自動車に比べ、大手自動車会社がつくる電気自動車は初期の段階ではあまりに格好悪かったわけですが、その原因は「大企業が歴史や文化に縛られ過ぎたからでは」というのがマスクの分析です。テスラもそうですが、マスクはスペースXでもあまりの規制の多さに辟易へきえきしています。リスクを嫌い冒険をしなかった大企業同様に、規制当局もリスクを好まず、あらゆることに規制を掛けようとします。マスクは言います。

「文明はこうして衰えていくんだな。リスクを取らなくなる。そして、リスクを取らなくなると、動脈硬化が起きるんだ。審判がどんどん増え、プレイヤーはどんどん減っていく」

マスクはテスラやスペースXをそんな大企業にしないために、いつだってリスクを取る覚悟を示しています。空軍士官学校で士官候補生に講義をした際、こう言っています。

「エンジンが爆発しないということは、努力が足りないということだ」

爆発を恐れるあまり、一切のリスクのない設計にしてしまうと、成功するかもしれないものの、決して大きな成果につながることはありません。リスクをなくす設計ではなく、あえてリスクを取る設計に挑戦し続ける。たとえ爆発したとしても、それは一方では失敗でも、もう一方では成功でもあるのです。

成功してなお、あえてリスクを取ること、それがイノベーションを起こし続ける企業にとって最も大切なことなのです。

ワンポイント
成功してもなおリスクを取り続ける。
イーロン・マスクの名言
桑原晃弥
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『イーロン・マスクとは何者か』『逆境を乗り越える渋沢栄一の言葉』(以上、リベラル社)、『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP研究所)、『トヨタ式「すぐやる人」になれる8つのすごい!仕事術』(笠倉出版社)、『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学』(KADOKAWA)、『amazonの哲学』(だいわ文庫)、『イーロン・マスクの言葉』(きずな出版)、『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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