本記事は、島田 弘樹氏の著書『退職・転職前後にやっておくべき「お金」のチェックノート』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

退職届
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会社を辞めるときに必ず心得ておきたいことは何か

1つの会社に一生勤め続けることは、難しい時代になっています。

自分のキャリアと会社からの評価にズレを感じて転職を決意する、あるいは、景気の変化にともなう早期退職制度に思い切って手をあげる。定年を間近に控えた人でも、第二の「仕事人生」をめざして、別の職場に「活き場」を見つけようと考えている人も増えています。

しかしながら、「退職をする」、つまり「長年勤め続けた会社を離れる」ということは、それまで受けていた「会社員ならではのメリット」から離れることでもあります。

その後の生活設計をきちんと築いていくうえでも、自分に与えられてきた様々な「メリット」がどのように変化するのか。引き続き同様の「メリット」を受けようとする場合には、どのような手続きが必要なのか。──そうした様々なノウハウをあらかじめ押さえておくことが必要です。

もう1つ心得ておきたいことは、退職することは「会社との関係を永遠に切る」ことではないということです。その後のビジネスで、前職のネットワークが活きることも多々あります。

それらを考えた場合、退職にのぞむうえでの「作法」をきちんと心得ておくことも必要です。引継ぎも十分にしないまま会社からいなくなるとなれば、残された現場は混乱します。そうなれば、せっかくその職場で築いてきたネットワークは崩れ去ってしまうでしょう。

退職をする際に、知っておきたいことは山ほどあると考えたいものです。

退職・転職前後にやっておくべき「お金」のチェックノート
(画像=退職・転職前後にやっておくべき「お金」のチェックノート)

会社員であることのメリットを、まず確認しよう

職業人であるということは、「働くこと」にともなう様々な権利や義務とも付き合うことです。

働いて収入を得れば税金を払ったり、社会保険に加入しなければなりません。いざ働けなくなったときのことを考えた場合、どのような社会保障があるのかを知っておくことも必要です。

ところが、会社員の場合、こうした権利・義務にかかる様々な手続きは、会社側がほとんどやってくれます。退職をして、初めてそのありがたさがわかるという人も目立ちます。

そこで、退職を考える際には、普段意識していない「会社員であることのメリット」をきちんと確認することから始めましょう。例えば、自営業者と比べた場合、以下のような点が挙げられます。

会社員であることにより、①基礎年金だけでなく厚生年金などの上乗せが期待できる、②雇用保険や労災保険に加入できる、③通勤手当や住宅手当など給与以外にも様々な手当が支給される、④健康保険料や住民税が給与天引きされるため自分で納付しなくてよい、⑤公的医療保険がきかない健康診断を会社の一部または全額負担で受けられる、⑥会社の各種福利厚生制度を利用できる(健康保険の傷病手当金なども受け取れます)──ざっと挙げても、これだけのメリットがあります。

転職によって別の会社に移る場合でも、「無職」である間は、一時的に前述のメリットを受けられなくなります。雇用保険による「失業等給付」はありますが、これも自ら申請することが必要で「会社がやってくれる」ものではありません。あらかじめノウハウをつかんでおく必要があるわけです。

退職・転職前後にやっておくべき「お金」のチェックノート
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退職までのスケジュールをきちんと立てる──辞め方のルール&マナー

前項で述べたように、退職するということは、それまで受けていた様々な仕組みが切り替わることを意味します。もちろん、総務や経理の担当者から様々な伝達はありますが、身辺が慌しくなることには違いありません。その間、後任のための仕事の引継ぎなどが求められることを考えれば、退職の日から逆算して、やるべきことをあらかじめ計画立てておくことが必要です。

定年による退職以外は、会社に対して退職の意思を伝えることから始まります。

いつまでに意思表示をすればいいかという点について、民法上では一応「2週間」となっています。しかし、先に述べたように「やるべきこと」がいろいろ立て込んでくることを考えれば、最低でも1か月くらい前(管理職に就いている場合はさらに1か月前)には「退職する意思がある」ことを伝えるべきでしょう。後になればなるほど、かえって退職しにくい状況が生まれてしまいます。

ここで大切なのは、自分の都合だけで勝手に退職日を設定するのは望ましくないということです。例えば、会社の繁忙期やプロジェクトなどが進行中の時期は、仕事の後任者が引き継ぎなどに十分な時間をさけないこともあるからです。退職は「相手の都合」を考えることも重要です。

退職の意思については、まず直属の上司に伝え、しっかり話し合うことが必要です。

ちなみに、会社の就業規則において、退職についてのルールが示されていることもあります。自分の会社のルールについて、あらかじめ調べておくことも求められます。

退職・転職前後にやっておくべき「お金」のチェックノート
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退職・転職前後にやっておくべき「お金」のチェックノート
島田 弘樹(しまだ・ひろき)
1965年神奈川県出身。立教大学経済学部卒業。教育系出版社、健康保険システムITベンダー、中小企業協同組合、人材派遣会社などに社会保険労務士として20年以上勤務。その間、外国人就労者や技能実習生などの雇用管理や人事労務の問題解決、経営者の労務管理のサポートを行なう。現在は愛知県小牧市を拠点に日本の製造業を支える企業とそこで働くたくさんの人々の笑顔のために活動中。愛知県社労士会所属。趣味はフルマラソンと横浜ベイスターズの応援。
退職・転職前後にやっておくべき「お金」のチェックノート
  1. 会社を辞めるときに必ず心得ておきたい事とは
  2. 自己都合退職の場合「基本手当」はいくらもらえる?
  3. 基本手当とは別にもらえる技能習得手当とは
  4. 退職後、無保険は危険! 国民健康保険に加入すると保険料はいくら?
  5. 年金は申請しないと損! 受給開始前の必須手続き
  6. 退職したら要注意!「確定申告」で損しないための知識
  7. キャリアアップは準備が9割! 後悔しない転職計画の立て方
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