本記事は、小山 昇氏の著書『生成AIでわかった 経営者のための人材定着術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

椅子に座り退屈そうなビジネスマン
(画像=ponta1414 / stock.adobe.com)

やる気のない社員は、会社の宝である

やる気のない社員がいるから、組織は丸く収まる

私は、社員の解雇を極力避ける方針を持っています。やる気のない社員や万年ヒラの社員であっても、不正などの重大な問題がない限り、解雇しません。

過去に、ある事業部で社員の半数が不正を行っていたことがありましたが、それでも解雇しませんでした。なぜなら、解雇によって人員が減少し、会社の運営に支障をきたす可能性があったからです。

一般的に、会社は「やる気のある社員」と「いる気の社員」が存在します。「いる気の社員」とは、最低限の仕事をこなし、特別な努力をしない社員を指します。

多くの企業では、こうした社員を「お荷物」と見なしますが、私は、
「いる気の社員は会社にとって宝物である」
と考えています。「宝物」である理由は、次のとおりです。

①いる気の社員がいることで、組織が丸く収まるから

わが社の人事評価は相対評価が基本で、「いる気の社員」を解雇すると、やる気のある社員(やる気はあるけれど、成長途上でまだ結果が出せない社員)がビリの位置に下がり、モチベーションが低下します。ですが、いる気の社員がいれば自分はビリにならないため、安心できます。

「いる気の社員」の存在が、組織のバランスを保つ役割を果たしています。

②働き方は人それぞれで、自分に合った働き方をすればいいから

武蔵野は、「頑張った人にはそれ相応の評価を、頑張らなかった人にもそれ相応の評価をする」のが基本であり、社員は自分の働き方に応じた評価を受け入れています。

「これをやったら、あなたはこれだけ給与・賞与が上がります」
「これをやらないと、賞与がこれだけ低くなります」

という基準を承知の上で、「そこそこの仕事をして、そこそこの給与がもらえればいい」「頑張らない代わりに、給与は高くなくていい」の働き方を自分で決めているため、私はその働き方を尊重しています。

③ライフイベントがあると、人は変わるから

結婚や子どもの誕生、子どもの入学、住宅購入などのライフイベントを経験すると、これまでは「いる気」だった社員も、仕事への取り組み方が変わります。こうした変化を見越して、社員の成長を長期的に見守っています。

④個人の成長速度は違うから

畑に種を蒔いたとき、「すべての種が同じタイミングで一斉に芽吹く」ことも、「すべての芽が同じ早さ、同じ長さで成長する」こともありません。

早く育つ芽もあれば、そうでない芽もあります。

人の成長も、種や芽と同じです。人それぞれ成長のスピードやタイミングは異なります。すぐに成果を出す人もいれば、時間をかけて成長する人もいます。

人の成長に「差がある」から、社員の成長を長い目で見守り、結果を急がないことが重要です。

⑤社長があきらめなければ社員は必ず変わるから

私が社長になったとき、武蔵野は、「日本で一番入りやすい会社」でした。

採用基準がありえないほど低レベルで、面接で私が聞いたのは、

「運転免許証の点数が2点以上残っていますか?」
「明日から出勤できますか?」

この2つだけでした。返事が2つとも「はい」なら、その場で採用決定です。低レベルの武蔵野が業績を伸ばしたのは、私と社員が、何度も、何度も時間と場所を共有して勉強した結果です。

社長は、「あいつは駄目だから」と社員に見切りをつけたり、見逃したり、見捨ててはいけない。1回言ってダメなら2回、2回でダメなら3回、3回でダメなら4回……、5回、10回、50回、100回でも粘り強く教え続ければ、社員は必ず変わります。

生成AIでわかった 経営者のための人材定着術
小山 昇(こやま・のぼる)
株式会社武蔵野代表取締役社長。
1948年、山梨生まれ。東京経済大学卒業後、1976年に日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰し、1989年より社長に就任。赤字続きだった武蔵野を増収増益、売上75億円(社長就任時の10倍)を超える優良企業に育てる。2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、700社超の会員企業をサポートし、400社が過去最高益となっているほか、全国の経営者向けに年間240回以上の講演・セミナーを開催している。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。2000年度、2010年度には日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞。2023年「DX認定制度」認定。2025年3月、健康経営への取り組みが評価され、健康経営優良法人「ホワイト500」に認定。
本書は、「勤続10年以上社員の退職者が10年で5名」「入社3年以内新卒社員の定着率91%」を実現する武蔵野の社内ナレッジをデータ化し、AIによって分析・検証。「人が辞めないマネジメント」の要諦をまとめたものである。『1%の社長しか知らない銀行とお金の話』『成長する会社の朝礼』『人が輝く経営のすごい仕組み』(あさ出版)、『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)、『「儲かる会社」の心理的安全性』(SBクリエイティブ)、『改訂3版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など著書多数。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
人材定着術
  1. 生産性爆上げ! AI活用を成功させる3つの秘訣
  2. もう悩まない!「まずAIに聞く」で問題解決を爆速化
  3. 「やる気のない社員」は宝? 組織にもたらす恩恵とは
  4. 成果を出す社員の育て方:「手は放すが目は離さない」教育術
  5. 中国・深圳に学ぶ「しがらみ」が人を動かすメカニズムとは
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)